富士フイルムHD、IT・AI関連の売上高7000億円目指す–生成AIで「DXビジョン」を加速
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富士フイルムホールディングス(富士フイルムHD)は10月17日、2021年に策定した「DXビジョン」の進捗(しんちょく)を明らかにした。グループ企業の富士フイルムビジネスイノベーション(富士フイルムBI)はIT&AI資産を活用して、2030年度の売上高目標1兆3000億円超のうち、ソリューションおよびサービス関連のみで売上高7000億円を目指す。
富士フイルムHDのDXビジョンは、基盤となるインフラの上に「製品・サービスDX」「業務DX」「人材DX」の3領域で構成されている。ロードマップは既存サービスのステージ1、DXを通じた価値の最適化を目指すステージ2、新たなエコシステムを形成して社会課題解決を実現するステージ3の3段階。
2023年の説明会ではステージ2は2026年までとの記載があったが、今回は取り除かれた。ただし、ステージ3の2030年度は変わらない。今回の発表会で目新しいのは生成AIの取り組みだ。各分野のDX化に生成AIを取り組み、DXビジョンの進捗を進めてきた。機械学習(ML)および深層学習の結果を大規模言語モデル(LLM)と協調させ、状況に合わせて使い分けた、日本政府のAI基本方針に基づく人間中心のアシスタントAIが一つの成果である。
また、新たに「STPD(See-Think-Plan-Do)」の加速化も表明。富士フイルムHD 執行役員 最高デジタル責任者(CDO) ICT戦略部長の杉本征剛氏は「DTPFサイクルは事実をしっかり見るSee。本質を見極めるまで考えるThink。課題を明確にした上で計画実行するPlanと実行のGo」と説明しつつ、ある材料事業で将来開発する問いに対して、Seeは複合的データを生成AIで可視化し、有望と思われる材料・物質を判断するThinkへ進むと説明した。
がん診断を中心とした検診センター「NURA」の進捗だが、2024年8月時点でインド4、モンゴル2、ベトナム1の計7拠点という数字を見ると昨年から拡大したとはいえない。しかし、2024年9月時点の利用者数は6万人に達し、今後は中東やアフリカにも展開して検診サービス事業の拡大を図っている。
例えば、インドは政府レベルでデジタルヘルスケア基盤のABDM(Ayushman Bharat Digital Mission)を推進しているが、杉本氏は「(自社のデジタル基盤である)DTPFと連携させると、NURAの受診履歴や健診データ、医療データの連携が容易になり、健康増進に寄与できる」と述べた。
NURAとABDMの連携例
富士フイルムBIもAIを活用した成長戦略を掲げている。同社の2023年度売上高は2兆9609億円だが、うちビジネスイノベーションと呼ばれる分野は1兆1577億円。十分な稼ぎ頭だが、富士フイルムBI 取締役 常務執行役員 最高技術責任者(CTO) 戦略室の鍋田敏之氏は「ビジネスイノベーション事業のさらなる成長を成し遂げることで、2030年度売り上げ目標の約半分以上をIT・AI技術の連携加速によるソリューションサービス事業で打ち立てたい」と意気込みを述べている。
ビジネスイノベーションはビジネスソリューション、オフィスソリューション、グラフィックコミュニケーションの3事業で成り立つが、各分野のデジタル化もしくはアナログとの連携を実現することで、事業拡大を目指すという。また、クラウドを活用したタッチポイントで顧客企業の支援を行うため、同社独自の生成AIを通じて、特定業種・業務のデータ利用や複合機および連携ソリューションを強化しながら、ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)サービスを目指す。