拡大続くベトナムIT産業、スタートアップ支援とAI活用に注力

今回は「拡大続くベトナムIT産業、スタートアップ支援とAI活用に注力」についてご紹介します。

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本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 ベトナムのIT産業は年率10%程度の成長を続けている。背景には、ベトナム政府が2020年に高度なデジタル国家を目指す方針を打ち出し、行政手続きなどのデジタル化だけではなく、国民の生活や企業の活動にもデジタルを駆使し、改革に取り組み始めたことなどがあるだろう。それらの推進に欠かせないスタートアップの育成にも一段と力を入れ始めている。

 それを担うのが、計画投資庁(MPI)傘下の国家イノベーションセンター(NIC)だ。2024年9月11日に、副所長に就任したKim Ngoc Thanh Nga(キム・ゴック・タン・ガ)氏が10月初旬、NICのハノイ事務所でITビジネス研究会のベトナムIT先進企業視察団に、スタートアップ支援ファンドの創設や半導体設計の技術者育成などスタートアップ支援策を語った。

 日本貿易振興機構(JETRO)がまとめた資料によると、ベトナム政府は2016年の「2025年までのスタートアップ・エコシステム支援プロジェクトに関する首相決定」以降、スタートアップ支援に力を注いでいる。その一環で2019年にNICを設立し、スタートアップの育成やイノベーション企業の育成、海外企業の研究開発拠点誘致、イノベーション関連イベント開催などに取り組み始めている。

 特に、スマート工場、デジタルメディア、サイバーセキュリティ、スマートシティー、環境技術、半導体、クリーン水素、医療技術、AIの9つを重点分野に設定し、これらの分野を手掛けるスタートアップを優遇するという。例えば、NICのコワーキングスペースなどの施設を3カ月から6カ月間無償で利用できる。

 Nga氏は「この5年間にエコシステムを作り上げ、スタートアップの数も投資額も増えた。確実にベトナムのランクは上がっている」とNICの実績と経済への貢献を力説する。確かにスタートアップは3000社を超え、ユニコーンは4社生まれている(2024年10月初旬時点)。新たに半導体設計の技術者育成にも乗り出すため、NICが人材育成などの研修プログラムを作成し、2030年までに5万人を育成するという。

 NICは国家イノベーションファンドの設立も提案している。企業や組織、個人のイノベーションと起業家精神を育むことを目的に、ベンチャーキャピタルや企業などから資金を集め、2025年早々にスタートする方向で着々と進めているという。NICはスタートアップをファンドにつなげるとともに、JETROや国際協力機構(JICA)や日本企業との協業にも期待する。NICでエコシステム開発部に従事するLe Cong Thanh(レ・コン・タン)氏は、「日本はテクノロジーが発展しており、技術移転に前向きだ。日本のいろんな経験を共有もしたい」と述べる。

 一方、イノベーションを推進する施設の拡充にも取り組む。MPIは2023年10月にハノイ郊外のホアラックに、研究施設やスマート工場、オフィスなどを備えた複合施設「NICホアラック」を開設した。

 JETROのホームページによると、ホアラック・ハイテクパークはハノイ市中心部から西に約35kmに位置する科学・産業技術集積拠点で、大学などの学術機関や企業の研究開発拠点などを集積し、最新技術の移転、開発を加速させる考えのようだ。つまり、ハイテクパークは高い技術を持っている企業が集まる研究開発拠点ということ。加えて、世界の大手ハイテク企業の誘致も視野に入れ、欧米企業が求める延べ床面積2万平方メートルのうち、1000平方メートルから5000平方メートルの施設規模を満たしているという。

 ITなどハイテク産業がベトナム経済をさらに成長させる一方、日本はベトナムをオフショア開発から研究開発の拠点、さらには新しい事業やビジネスモデルを創り出すための協業先へと関係を発展させる段階にきているように思った。

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