AI活用で重要となる「データの粒状化」とは–オートデスク・AEC幹部が説く
今回は「AI活用で重要となる「データの粒状化」とは–オートデスク・AEC幹部が説く」についてご紹介します。
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Autodeskは米国時間10月14~17日、年次イベント「Autodesk University 2024」(AU2024)をサンディエゴで開催。同イベントには毎年、建築、土木、エンジニアリング、建設、製造、メディア&エンターテインメントの専門家が集結し、2024年は1万2000人以上が参加した。
最終日の17日には、イベントの概要を総括する日本の参加者向けセッション「Japan Summary Session」を実施。その中で、ビジネスストラテジー&マーケティング部門で建築・エンジニアリング・建設(AEC)業界を担当するバイスプレジデントのNicolas Mangon氏が登壇し、AEC業界の現状とAutodeskの戦略を語った。
Mangon氏は、業界の傾向として(1)増加する要求、(2)労働力不足、(3)活用されていないデータ――を挙げ、(3)について「3年前と比べて約4倍のデータが生まれているが、そのうち活用されているのはわずか5%である」と指摘した。
AECの将来に関するテーマの一つとして、Mangon氏は2023年に続き「アウトカムベースBIM(Outcome-Based BIM)」を挙げ、同社の取り組み状況を解説した。アウトカムベースBIMとは、デザインにおける成果に軸足を置いたアプローチ。最初にプロジェクトのゴールを設定し、各段階でその目標に向けたテストを行うとともに、その過程でチームメンバーと協力者間のサイロをなくす。
AEC業界の業務の中核を成すドキュメント管理ソフトウェア「Autodesk Docs」は、共通のデータ環境のもと、あらゆる関係者がコラボレーションを行うことを可能にする。Autodeskは、DocsをCADソフトウェア「AutoCAD」やBIMソフトウェア「Revit」をはじめとした全ての同社製品と連携させている。「Autodesk AI」を搭載したAEC業界向けのクラウド「Autodesk Forma」とも連携予定だという(図1)。
Mangon氏は「Docsはファイル管理のイメージが強いが、将来的には粒状化データを扱うようになる。データはファイルに存在し、ファイルはDocsに存在する。われわれが取り組んでいるのは、データをファイルから開放することだ。つまり、データがDocsの中で自由に動き回り、誰でもアクセスできるようにする」と語った。Autodeskは、ファイルを粒状化データに分解することで、データをDocs内の一箇所に集約することを構想している(図2)。
「つまり、ある日突然ファイルがなくなり、全てのデータが集結した状態になる。これにより、データはある段階から別の段階、あるプロジェクトチームから別のプロジェクトチームへ用に循環するようになる。これをわれわれは『デジタルスレッド』と呼んでいる」(Mangon氏)。Autodeskは、自社のツールを活用して企画/設計/建設/運営プロセスのデータを収集し、AIを活用して将来のプロジェクトに活用できるようにする(図3)。
データを粒状化することで、AIはパターンやトレンドを理解し、データを活用して新しいことがしやすくなるという。Mangon氏は「われわれは、ますます多くのAIの活用方法を提供できるようになるはずだ」と展望を述べた。
Mangon氏は、アウトカムベースBIMにおける生成AI活用についても言及した。「例えば、『ネットゼロの200戸の集合住宅を2億ドルで1月22日までに設計・建設する』という原理である。AIは考え得る全ての図面の作成など、膨大な選択肢を提示する」(同氏)。
AIはまず、木造建築のデータを学習し、グラフや素材同士の関係性を抽出する。全てのグラフを学習し、この種類の建造物の作り方を理解する。そして、工期が最適化されたものやサステナビリティー(持続可能性)の高いものを自動で設計する。
Mangon氏は「ここで重要なのは、人間が関与しないということだ。自社のデータセットでAIを訓練し、自然言語でAIに建造物の設計を頼むことができる。このやり方は人間がRevitなどを活用して行う業務を代替するものではない。プロジェクトの一部に適用できる新しいアプローチである」と自社のAIの有用性をアピールした。
(取材協力:オートデスク)