「オラクルのクラウド基盤は“コスパ”で勝負」と語る日本オラクル幹部の思いとは
今回は「「オラクルのクラウド基盤は“コスパ”で勝負」と語る日本オラクル幹部の思いとは」についてご紹介します。
関連ワード (CIO/経営、松岡功の「今週の明言」等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
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本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、日本オラクル 専務執行役員 クラウド事業統括の竹爪慎治氏と、Datadog Japan シニアテクニカルエバンジェリストの荻野たいじ氏の「明言」を紹介する。
日本オラクルの竹爪氏は先頃、筆者の取材に応じ、同社のクラウド基盤である「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」について、「今後、強みをどうアピールして多くのユーザーに使ってもらえるようにしていくか」との質問に答えた。上記の発言はその答えから抜粋したものである。同社でクラウド事業を統括する同氏の意気込みを感じたので、明言として取り上げた。
OCIの強みを聞いたものだが、実はこの質問には筆者なりの意図があった。
そのきっかけは、同社の最大の強みである「Oracle Database」がOCIだけでなく、同じハイパースケーラーであるMicrosoft、Amazon Web Services(AWS)、Googleのクラウド基盤上でも利用できるようになったことだ。すなわち、マルチクラウドの展開だ。先行して出ていた「Oracle Database@Azure」に加え、今年9月に「Oracle Database@AWS」および「Oracle Database@Google」も発表され、順次サービスとして提供される運びだ(図1)。
このマルチクラウド戦略は、クラウド事業が最後発のOracleにとって先行する3社にすり寄ったようにも見えるが、さにあらず。Oracle Databaseの大きな特徴である「ポータブルな利用環境」をクラウドでも継続して実現した形だ。ただ、一時期は戦略が揺れたようにも感じられた。そのあたりの動きは、本サイトでの筆者のもう1つの連載「一言もの申す」の2019年5月16日掲載記事「Oracle Databaseは『ポータブルな利用環境』を捨てたのか」を参照していただきたい。ちなみに同記事では当時、執行役員だった竹爪氏が「今後、ポータブルな利用環境に対しては、マルチクラウドが有効な手段になるかもしれない」と述べていた。それが5年余りの時を経て実現したことになる。
筆者なりの意図というのは、マルチクラウドの展開によって、Oracle Databaseを使うのに必ずしもOCIでなくともよくなったことから、IaaSを主体としたOCIの強みを多くのユーザーに分かるようにどうアピールしていくかが、OCIの今後の行方を左右するのではないかという疑問だ。この点を踏まえてOCIの強みについて聞いたところ、竹爪氏は次のように答えた。
「OCIの基本的な強みは、Oracle Database、GPU、AIインフラ、多様なアプリケーションのワークロードを稼働できるように設計されたIaaS(コンピュート、ネットワーク、ストレージ)の性能、セキュリティ、コスト、シンプルな使いやすさだ。このOCIのIaaSのメリットをはじめ、『Oracle Cloud VMware Solution』を活用したVMware環境の移行、『Oracle Cloud Lift Services』などの無償移行支援サービスによって、企業のデータベース以外のアプリケーション基盤やISV(独立系ソフトウェアンベンダー)のSaaSのインフラとしても数多く利用していただいている。特に、少人数のIT要員で導入や運用管理を行う中堅中小企業に対しては、コストパフォーマンス(コスパ)に加えて、セキュリティ侵害の増加や経済安全保障対応の必要性から、よりセキュリティファーストで設計されている点、シンプルな使い勝手、さまざまな無償の支援サービスがある点を、今後さらにアピールしていきたいと考えている」
冒頭の発言はこのコメントから抜粋したものである。コスパについては、「一言もの申す」連載の2024年4月25日掲載記事「オラクルは競合クラウドに“コスパ”で挑め」でも取り上げたので参照していただきたい。ちなみに、同記事では「競合クラウドと比べてOCIのコスパは2倍」、つまり同じパフォーマンスならばコストは2分の1と記している。
さらに、「OCIをはじめとしたOracle CloudではAIの開発および実行環境としても豊富な機能を備えているので、ぜひご相談いただきたい」と、AI活用の場としてもアピールしていた(図2)。
OCIはOracle Databaseの存在もあって、大手企業の基幹システムをはじめとしたミッションクリティカルなシステム向けの印象が強いが、コスパをもっとアピールすれば対象ユーザーが広がっていくのではないか。イメージを逆手に取って、「ミッションクリティカルは企業規模を問わない」と銘打ってはどうか。取材に応じてくれた竹爪氏に、この場を借りて提案しておきたい。