インテル復権への道–CEO退任後の難局を乗り切る8つの手段
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Pat Gelsinger氏が2021年に最高経営責任者(CEO)としてIntelに復帰すると、巻き返しへの道の始まりとして歓迎された。30年以上同社に在籍し、その黄金期には最高技術責任者(CTO)を務めていたGelsinger氏は、Intelの山積する課題に取り組む人物として、これ以上ない適任者であるように思えた。同氏の使命は、チップの開発と製造をリードする企業として、かつての栄光を取り戻すことだった。
だが、それから4年も経たないうちに、巻き返しの物語は終わりを迎える。Bloombergが伝えた情報筋の話によると、Gelsinger氏は解任されたという。業界で大きな尊敬を集める技術者が、驚くべき転機を迎えることになった。この突然の退任劇から、難しい疑問が生じる。Gelsinger氏はなぜ、生まれ持った使命とも言えるような役割を果たせなかったのか。Intelの最も有能な指導者が事態を好転させられなかったのなら、NVIDIAやQualcomm、TSMCが優位を占める市場でIntelに希望はあるのだろうか。
Gelsinger氏の解任は、1人のリーダーだけの問題ではなく、迷走する企業の兆候だ。同氏の退任はIntelに対する警鐘であり、同社は企業文化の停滞に立ち向かって、レガシーへの依存に対処し、本質的な変化を受け入れて、急速に進化する業界で存在感を保つことが求められている。断固たる措置を取らなければ、Intelはかつて名をはせた企業として過去の遺物になりかねない。
Gelsinger氏はIntelに信頼と大胆なビジョンをもたらしたが、同社を長年苦しめてきた文化的慣性を克服することはできなかった。Intelの社内力学が重大な障害となっている。官僚的なボトルネック、リスク回避の意思決定、レガシーシステムへの過度の依存がイノベーションを著しく遅らせてきた。
筆者が話を聞いたエンジニアによると、Intelではリスクをとることが奨励されず、新しいアイデアに懐疑的な目が向けられることが多いという。対照的に、NVIDIA、Qualcomm、Appleといった企業は、実験と迅速な反復によって成功を収めている。Gelsinger氏の技術的な専門知識だけでは、こうした体系的な問題を解決することはできなかった。
次のCEOは企業文化の変革を優先しなければならない。これには、エンジニアへの権限移譲、官僚的形式主義の削減、切迫感の醸成などがある。Satya Nadella氏がMicrosoftで成し遂げたことを考えてみよう。同氏は動きの鈍い巨大企業を世界で最も俊敏で革新的な企業の1社に変えた。Intelが潜在能力を最大限に発揮するには、同様の企業文化の変革が必要だ。
x86はIntelの中核製品であり、何十年にもわたってPCやサーバー、エンタープライズシステムを支えてきた。しかし、業界が人工知能(AI)、クラウドネイティブコンピューティング、高電力効率の設計へと向かう中で、x86は時代遅れに感じられるようになった。Armベースのプロセッサーは、スマートフォンからクラウドサーバーまで、さまざまなデバイスで主流となり、Appleの「M」シリーズチップは、Armが効率と性能の両面でx86を超えられることを実証した。
とはいえ、x86はまだ廃れていない。エンタープライズ環境のレガシーアプリケーションはまだx86への依存度が高く、ゲーマーの間では、高フレームレートを出せる能力が評価されて根強い人気だ。しかし、これらの市場は徐々に縮小している。同時に、Ampereなどの競合企業は、Armサーバーがデータセンターのワークロードを低消費電力で管理できることを証明しており、NVIDIAなどの企業は高性能コンピューティング(HPC)への新たなアプローチを開拓している。
Intelの課題は明白だ。x86という基盤を保護しつつ、新しいアーキテクチャーへ積極的に移行しなければならない。適応がうまくいかなければ、x86はニッチな製品になり、スケーラビリティー、効率、柔軟性の重視が強まる業界でIntelが取り残される可能性がある。
Intel Foundry Services(IFS)によるチップ製造受託事業への参入は、近年で最も野心的な動きの1つだ。半導体業界はTSMCとサムスンに代わる製造企業を切実に必要としている。これは特に、地政学的緊張によって、アジアへの過度な依存の危険性が浮き彫りになっているからだ。理論的には、Intelはこの隙間を埋める企業として有利な立場にある。
しかし、有力なファウンドリーになるための道のりは険しい。「Intel 18A」ノードなどのIntelの高度な製造プロセスでは遅延が発生しており、顧客の信頼獲得が依然として大きなハードルとなっている。TSMCは技術で先行しているだけでなく、Apple、Advanced Micro Devices(AMD)、NVIDIAなどの企業にとって信頼できるパートナーでもある。
IFSの成功のためには、TSMCと同等かそれ以上の成果を出せることを実証しなければならない。それには、納期の順守や、競争力のある価格の提示、著名な顧客との強固な関係の構築が必要だ。米CHIPS法による資金提供はIntelに有利だが、これに伴うリスクは大きい。IFSが成功しなければ、Intelは再び後退してしまうかもしれない。
コンピューティングの未来の中心にはAIがあり、その先頭に立っているのがNVIDIAだ。同社のGPUはAIの訓練と推論のワークロードを処理する主要製品となっており、「Grace Hopper」プラットフォームは、AIに必要な複雑な並列タスクを管理するために特別に設計されている。Appleもカスタムシリコンを通じてAIに多額の投資を行っている。
対照的に、Intelはこの分野での地位確立がうまくいかなかった。2019年に20億ドルでHabana Labsを買収したことは進展だったが、その結果は期待外れだった。Qualcommは「Snapdragon X」シリーズでAI搭載PCを進化させており、AMDはMicrosoftと共同でカスタムAIチップの開発に取り組んでいる。
Intelが存在感を維持するには、明確で積極果敢なAI戦略が必要だ。例えば、「CHERI」のようなメモリーセーフなアーキテクチャーの開発や、エッジコンピューティングへの注力が必要になるだろう。この急速に変化する状況に適応するために、迅速に行動しなければならない。