富士通、NEC、日立のDX事業ブランドは世界へ羽ばたけるか

今回は「富士通、NEC、日立のDX事業ブランドは世界へ羽ばたけるか」についてご紹介します。

関連ワード (CIO/経営、松岡功の一言もの申す等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 2025年のスタートに当たり、「一言もの申す」連載として、日本のIT産業に期待したいことを述べたい。それは、日本のITが世界にもっと羽ばたいてほしいということだ。増え続けるデジタル赤字を抑える意味でも正念場だ。そこで本稿では、富士通、NEC、日立製作所のITサービスベンダー大手3社のデジタルトランスフォーメーション(DX)事業ブランドに改めて注目し、奮起を促したい。

 政府の国際収支の見通しによると、2023年に5.4兆円だったデジタル赤字が、2024年は6兆円を超えて過去最大になりそうだ。デジタル赤字の拡大については、日本のIT産業の力不足もあるが、現在の産業構造上、仕方がない面もある。ただ、それでも日本のITとして反転攻勢する姿勢を見せていきたいものだ。

 2025年のスタートに当たり、デジタル赤字拡大の動きにそんなことを考えていたところ、今後まさしく世界にもっと羽ばたいてほしいITサービス大手3社のDX事業ブランドが頭に思い浮かんだ。3つのDX事業ブランドとは、富士通の「Fujitsu Uvance」(以下、Uvance:ユーバンス)、NECの「BluStellar」(ブルーステラ)、日立製作所の「Lumada」(ルマーダ)だ。本稿では、改めてこれらの特徴を紹介し、さらなる海外事業展開に向けて奮起を促したい。

 まず、富士通のUvanceは、同社が2021年に立ち上げたグローバルソリューションのDX事業ブランドで、2030年の社会の在るべき姿を起点に、その実現に向けて起こり得る社会課題をクロスインダストリーで解決するための取り組みを指す。具体的には、サステナブルな社会へ移行する「サステナビリティートランスフォーメーション」(SX)をミッションに掲げ、社会課題を解決する4分野のインダストリー、それを支える3分野のテクノロジー基盤、合わせて7つの分野を重点領域として注力していくといった内容だ(図1)。

 Uvanceの事業責任者を務める執行役員副社長 最高執行責任者(COO)の高橋美波氏は、Uvanceのターゲット市場について、「UvanceはDXにとどまらず、SXの市場を積極的に創造していくことも目的としており、社会課題の解決と企業課題の解決を両立させていくことが重要だと考えている。この2つの命題を同時に達成するカギとなるのは、企業間や業種間のデータの流通と活用にあると見ており、この領域に大きな市場が形成されていくと考えている」と、同社が2024年9月に開催した「IR Day 2024」で説明している。

 高橋氏によると、そうしたターゲット市場の規模や成長率、売上収益やシェアについて、同社では2025年度のグローバルおよび国内の市場での目標として図2に示した数字を掲げている。そして、グローバル市場では「グローバルプレイヤーとしての地位を固めて2030年までにトップ3」、国内市場では「圧倒的なポジションを確立してトップシェア」を目指す構えだ。

 こうした目標に向けた勝算について高橋氏は、「Uvanceのターゲット市場は業種や業務に特化した領域へのきめ細かい対応が求められるので、外資系のハイパースケーラーなどには入り込みづらいだろう。当社は市場領域を創造していくフロントランナーとして、お客さまのニーズに応じたソリューションを積極的に展開していきたい」と述べている。

 NECは2024年5月、これまでDXの事業基盤としてきた「NEC Digital Platform」を進化させ、価値創造モデルとして新たにブランド化したBluStellarを発表した。同社 取締役 代表執行役社長 兼 最高経営責任者(CEO)の森田隆之氏は、その発表会見でBluStellarについて次のように説明した。

 「NECが持つテクノロジーや人材、視点の全てを結集し、お客さまのビジネス変革を進め、未来へと導く価値創造モデルをブランド化した。お客さまの経営アジェンダを起点として、価値創造に向けた構想から実装までエンドツーエンドのビジネスモデルによって、お客さまと社会のDX人材を成功に導いていく。このビジネスモデルを支えるのは、テクノロジーおよび組織と人材だ」(図3)

 「テクノロジーにおいては、当社が強みとするAIやセキュリティをはじめ、これまで蓄積してきた知見やノウハウを集結し、お客さまのDXに最適なオファリングを提供する。そして、DXを強力に推進する原動力は組織と人材だ。当社の1万人のDX人材がナレッジをフルに活用し、課題解決に向けてお客さまに伴走する。また、お客さまおよびパートナー企業との共創プログラムを通じてテクノロジーを活用した顧客接点や業務の改革といった具体的な企業活動を強力に推進する」

 また、同社 執行役 Corporate SEVP 兼 最高デジタル責任者(CDO)の吉崎敏文氏は、「新ブランドを機に、当社はシステムインテグレーター(以下、SIer)から『Value Driver』へ転身する」と明言した。同氏によると、「システムを受託開発するSIerからBluStellarによってAIを活用した自動化、自律化、標準化を進め、社会価値創造をリードするValue Driverに進化する」と語った。

 その変化を表した図4では「System Value Driver」と表記されているが、これはSIerと対比させた形で見せているからだ。システムのほかにサービスも対象となることから、同社としてはValue Driverという言葉を前面に出していく構えだ。

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