「Linux 6.13」が正式公開–メジャーリリースではないが重要なアップデートを多数搭載
今回は「「Linux 6.13」が正式公開–メジャーリリースではないが重要なアップデートを多数搭載」についてご紹介します。
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Linus Torvalds氏は米国時間1月19日、「Linux 6.13」カーネルを正式にリリースした。6.13カーネルはメジャーリリースと呼べるものではないが、パフォーマンスとセキュリティ、ハードウェアサポートの面で進歩している。これは重要なことである。
Linux 6.13の印象的な特徴の1つは、「lazy preemption」(遅延プリエンプション)のサポートが導入されたことだ。この新しいモデルにより、カーネルのプリエンプションロジックと設定オプションが簡素化されるため、システム全体の応答性が向上する可能性がある。
Linuxカーネル開発者、特にPeter Zijlstra氏は数年前からこの分野に取り組んでいる。遅延プリエンプションの狙いは、カーネルのスケジューリングを簡素化して、全体的なパフォーマンスを高速化することにある。ただし、それを実現するのは、言うほど簡単ではない。
問題は、システムがマウスボタンのクリックなどのイベントに素早く応答した方がよいのか、それとも長時間実行されているCPUジョブに必要な時間を与えた方がよいのかを判断する万能の方法がないことだ。デフォルトでは、Linuxカーネルにはこの問題に対処する方法が4つある。今回、遅延プリエンプションがサポートされたことで、それが5つに増えた。
この新しいモデルは本質的にシンプルである。ある時点で再スケジューリングが必要になるが、今すぐ実行する必要はない、ということが新しいフラグ「TIF_NEED_RESCHED_LAZY」によってカーネルに伝えられる。これにより、カーネルのコードがよりクリーンになり、長時間のジョブのスループットが向上するはずだ。
Linuxカーネル開発者のJonathan Corbet氏は最終的な目標について、次のように述べている。「この取り組みの最終目標は、『PREEMPT_LAZY』と『PREEMPT_FULL』という2つの非リアルタイムモードのみを備えたスケジューラーを実現することだ。遅延プリエンプションモードは『PREEMPT_NONE』と『PREEMPT_VOLUNTARY』の間に位置し、両方のモードを置き換える。ただし、それら2つのモードで追加されていた自発的なプリエンプションポイントは、遅延プリエンプションモードでは不要である。プリエンプションをほぼどこでも実行できるようになったため、特定の場所で有効にする必要はなくなった」
さらに、Linux 6.13カーネルでは、ますます人気が高まっている「LLVM Clang」コンパイラーでLinuxをコンパイルするときに、「AutoFDO」と「Propeller」最適化がサポートされるようになった。このコンパイラーを使用する本格的なLinux開発者は、コードビルドの高速化を実感できるはずだ。
いつものように、新しいLinux 6.13では、ハードウェア互換性が向上している。最も重要なのは、マルチCCD構成の「Ryzen X3D」プロセッサー向けの新しい「AMD 3D V-Cache Optimizer」ドライバーだ。Ryzen X3Dは、ゲーマーの新たなお気に入りとなっているCPUである。デスクトップよりもサーバーを重視するユーザーのために、「AMD EPYC 9005」(「Turin」)サーバープロセッサーもサポートされている。Intelのプロセッサーに目を向けると、6.13は「Intel Xe3」グラフィックスと「Panther Lake」プロセッサーをサポートする。
新たにサポートされるのは、新しいハードウェアだけではない。6.13カーネルでは、多数の「iPad」や「iPhone」など、古いAppleデバイスのサポートも改善されている。さらに、「M1」以前のAppleのシステムオンチップ(SoC)もサポートされている。このアップデートは、Appleの「A7」「A8」「A8X」「A9」「A9X」「A10」「A10X」「A11」といったSoCを搭載したデバイスでLinuxを実行する基盤となるため、Appleの古いハードウェアのユーザーにとって重要である。今回のアップデートでは、「iPhone 5s」「iPhone 8」シリーズ、「iPhone X」シリーズ、「iPad Air」「iPad mini 2」「iPad mini 3」のサポートも追加された。
ただし、こうしてAppleのデバイスが新たにサポートされたことに興奮しすぎてはいけない。これは最低限のサポートであることに留意する必要がある。アップデートにより、メインラインのLinuxカーネルを起動することが可能になったが、それ以上のことを求めてはいけない。つまり、このオプションが対象としているのは、一般ユーザーではなく、これらの古いプラットフォームへのLinux導入を検討している、年季の入った筋金入りのAppleデバイス愛好家だ。
もっと多くのユーザーが歓迎しそうな改善点もある。「ARM Confidential Compute Architecture」(CAA)上の保護された仮想マシンでLinuxを実行できるようになったことだ。この機能がサポートされたことは、ARMプロセッサー搭載システムで機密コンピューティングのセキュリティを求める人々にとって大きな意味を持つ。