デジタル変革の力点はフロントからバックエンドに–ワークデイ正井社長
今回は「デジタル変革の力点はフロントからバックエンドに–ワークデイ正井社長」についてご紹介します。
関連ワード (トップインタビュー、経営等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
2020年8月にWorkdayのエグゼクティブ・プレジデント兼日本担当ゼネラルマネージャー 日本法人社長に就任した正井拓己氏は、就任理由について自身のキャリアで抱いていたデジタルトランスフォーメーション(DX)の課題解決につながる可能性を感じたからだと話す。
同氏は、日本IBMやPivotalジャパン(現VMware)、日本マイクロソフトを経てWorkdayに入社。Pivotal時代はエリアバイスプレジデント兼日本法人ゼネラルマネージャーを務め、PaaSやアジャイル開発など、DXにまつわるテクノロジーのビジネスに携わった。そうした経験で感じていたDXの課題は、テクノロジーやツール、サービスを導入しても、人材や組織文化が変わらなければDXの取り組みが壁にぶつかり止まってしまうことだという。
Workdayは、人材管理(HCM)や企画(プランニング)、財務管理(フィナンシャルマネジメント)の機能をクラウドサービスで提供し、グローバルで約7900社・約4500万人が利用する。同社の日本での事業は、HCMなどのサービスと人材のデータを活用した人事戦略につながるベストプラクティスの提供が中心だが、2021年はフィナンシャルマネジメントのサービスも開始し、人材と財務の両面を企業顧客の経営戦略を支援していくとする。
企業や組織でDXの必要性が叫ばれて久しいが、同氏によれば、現在のDXの力点は営業やマーケティングなどのフロントエンド業務から人事や財務経理などのバックエンド業務に広がりつつあるという。組織の根幹を成す人や意識、文化が変わらないと、手段としてのテクノロジーを導入しても生かし切れず本当の変革に至りにくい――ということかもしれない。
ERP(統合基幹業務システム)などのバックエンド業務のアプリケーションでは、近年は「ヒト・モノ・カネ」の経営資源にまつわるデータを分析し、経営状態を可視化して業績の改善につながる知見を提供する機能がうたわれ始めた。従来はビジネスインテリジェンス(BI)などで独自にも行われていたが、アプリケーション自体にその機能を取り入れるベンダーが増えている。
そうした製品の傾向とWorkdayの違いを正井氏に聞くと、伝統的な製品はバージョンアップや買収などで追加されたさまざまな機能で構成され、優れたユーザーインターフェースを被せている――という。「特定業務や個別課題に対しては効果的なソリューションになり得るが、“Can Be”(できること)にとどまってしまう」
だが、「これだけ速い変化のスピードに対応するにはアジャイルな組織でないと難しく変化に迅速で柔軟に対応できるクラウドであることポイントになる。Workdayは単一のプラットフォームで、ベストプラクティスと従来の自社のビジネスプロセスを照らし合わせ、フィット&ギャップで改善していける。多くのお客さまの“To Be”(在りたい姿)に向けた“ジャニー”(旅路)をパートナーとともにご支援していける点が強みになる」
以前なら、業務アプリケーションを自社にカスタマイズして導入するという傾向も強かったが、Workdayのユーザーの多くは、Workdayの推奨に自社のスタイルを合わせていくという動きが特徴的であるようだ。「お客さまの組織は『変革をする』というマインドセットで取り組んでいる」といい、「特にビジネスが成長しているお客さまは、成長ペースを維持または加速させるために、3~5年後の自社のあるべき姿を設定して、そこに向けて動いている」という。
コロナ禍を通じて、それまでの業務の進め方や組織構造のままでは、変化に対応し切れないとの危機感を抱き始めた企業は少なくないようで、業務プロセスを変えたりジョブ型の雇用制度を導入したりといった試行を耳にする機会は増えている。いずれにしても、一人一人のスキルやキャリア、実績といった情報を今まで以上に丁寧にすくい上げ、その時々の状況に応じて、さまざまな特性を持った人材を最適な構成で組織化できるかが鍵になるようだ。
正井氏に、Workday自身が日本市場で変革しなければならない課題を尋ねると、HCMで培った人事部のためのツールというイメージからの脱却になるようだ。「DXがフロントからバックエンドに拡大し、人材を生かす方策にCEO(最高経営責任者)やCIO(最高情報責任者)、CFO(最高財務責任)といった経営層が関与するようになり始めている。経営戦略としての取り組みになっていく」
2021年の事業戦略で正井氏は、エンタープライズアプリケーションベンダーへの転身、中堅企業顧客の獲得、パートナーの拡大を掲げる。これらの実行を通じて同社自身が人事から経営にビジネス領域を広げられるかが顧客の変革にも作用するだろう。