【コラム】暗号資産の処理量に応じた課金モデルは再考の時期にきている

今回は「【コラム】暗号資産の処理量に応じた課金モデルは再考の時期にきている」についてご紹介します。

関連ワード (一定量、低料金、移動等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、TechCrunch様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


処理量に応じた課金モデルは、常に、暗号資産の世界においてほとんど疑う余地のない主要技術であった。デジタル資産が登場して以来、投資家、開発者、マニアたちは、実際に購入したトークンの価格に加えて処理料(採掘手数料)を支払ってきた。

2021年4月、Bitcoin(ビットコイン)の平均送金手数料がこれまでで最高の59ドル(約6800円)に達した。平均取引料は2017年12月に52ドル(約6000円)にまで跳ね上がり最高値に達したが、今回はそれを超えた形だ。そして、Eithereum(イーサリアム)とそのガス手数料も跳ね上がった。2021年、イーサリアムのブロックチェーンでは、多くの暗号資産ネットワークがイーサリアムを離れ、競合ブロックチェーンSolana(ソラーナ)など、よりサステナブルな選択肢に移行した。

いうまでもなく、暗号資産への投資はますます高価になっている。現在、暗号資産エコシステムに参加している大半の人たちが暗号資産の法外なコストと使用ケースに腹を立ている。とりわけ、ビットコインとイーサリアムのネットワークの手数料は高過ぎる。

にもかかわらず、マニアと投機家たちは、この現状をお金に革命を起こすはずの技術に関わることにともなう厄介なトレードオフとして受け入れ、歯を食いしばって耐えている。

しかし、大多数の人が熱意を失い、お金の取引と移動を行う別の方法を追求したらどうなるだろう。実際すでに、Binance Smart Chain(バイナンススマートチェーン)などの「集中化」サービスが、低い料金設定を引っ提げて、イーサリアムなどの分散システムに取って代わり始めている。

真の分散化暗号資産エコシステムを実現するという夢はどうなってしまうのだろう。取引料金という観点から考えると、分散化ネットワークが集中化ネットワークと競争するのは本当に不可能なのだろうか。

現時点では、現在上場しているすべての暗号資産とブロックチェーンのネットワーク経済では、利用価値ベースの価格設定ニーズを無視している。つまり、ブロックチェーン上での取引料金が、顧客の考えるその取引の実用価値と一致していない。

言い換えると、取引料金の範囲は利用者が考えているニーズによっても、市場勢力図によっても決まらない。実際「処理量に応じた課金」モデルは取引に課される料金に上限がないため、利用者にとってほとんど利点がない。料金が取引しようとしている価値の大部分を占めるようになったら、そのようなネットワークを使って取引するのは非効率的かつ非現実的だ。

多くの人たちは、こうしたネットワークはユーザーに与えられる実用価値から利益を得ていると思っている(あるいはそうあって欲しいと思っている)が、実際には「処理量に応じた課金」モデルは暗号資産のマイナー(採掘者)または通貨保有者など、ネットワークの利害関係者にのみ利益をもたらし、ユーザーには何の利益ももたらさない。

例えばビットコインでは、承認済み暗号資産取引のブロックを完成させた報酬はマイナーに支払われ、すべての料金はマイナーに分配される。こうした取引が処理される際の「ブロックサイズ」は人為的に小さい状態に維持されており、マイナーはこれまでこのブロックサイズを増やすことを拒否してきた。

その代わり、取引をブロックに含めるためにより高い料金を要求し続けている。YChart(ワイチャート)によると、ビットコインのマイナーの1日あたりの平均収入は約4700万ドル(約54億2000万円)で、2021年初めの2900万ドル(約33億4000万円)から62%も上昇している。

暗号資産取引を長期的に持続可能にするには、そろそろ実用価値ベースの料金設定を導入して暗号資産取引をユーザーに利益をもたらすものにするべきだ。デジタル資産の世界はもはや通常の市場経済型アプローチ、つまり利用者が王様となる方式を採用すべき時が来ている。

最終的にはマニアとアーリーアダプターたちの気持ちは覚めてしまうだろう。そうなったら「処理量に応じた課金」モデルで運営されるこれらのネットワークの使用ケースは、利用者が高額な料金を支払うことをいとわない取引(頻度の低い高額決済)のみに縮小してしまう可能性が非常に高い。

これが現実になってしまうと、高価値の使用ケースが安く値切られてネットワーク利害関係者にとっての価値が失われ、同時に、低価値だが大量にある使用ケースによって得られるネットワークの収益も失われることになるだろう。

筆者はこの差し迫ったシナリオを実用性の不適正価格設定と呼んでいる。このシナリオは、ネットワーク利害関係者(すなわちマイナー、マスターノード所有者、通貨保有者)に報酬を与えるために「処理量に応じた課金」のみに依存している暗号資産ネットワークにとって避けられない運命だ。実用性の不適正価格設定が行われると、新規利用者数が増大しているときでもネットワークの収益と採用が低下する。

最終的には、利用者からの信頼が薄れ、結果としてブランド資産価値が失われることになる。これはメディアの否定的な報道によってあおられることになるだろう(実際今、法外な手数料に関連して、暗号資産最大手2社が否定的に報道されている)。

ネットワーク収益モデルの根本的な見直しを行い同意を得ることを強制でもされない限り、大手暗号資産ネットワークがこの問題をエレガントかつ効率的な方法で解決できるかどうかはまだわからない。

最善のシナリオは、細事にこだわり大事を逸するのを避けることだが、まったく新しいネットワーク収益モデルを採用することが解決策となる可能性はある。暗号資産における実用価値ベースの価格設定モデルがユーザーに最も利益をもたらす代替モデルであることは間違いない。このモデルなら低料金または手数料ゼロの取引を実現することも可能だ。

これを実現するには、すべての利害関係者を取り込んだ運営を介して価格設定を行うことで、ブロックチェーン内外の双方の利害関係者が価格設定パラメーターに発言権を持てるようにする必要がある。

例として、オープンな代表投票を使用した手数料ゼロの暗号資産ネットワークNano(ナノ)がある。ナノでは票がノード間で共有および中継され、集計されて、オンラインの投票加重と比較される。ブロックが十分な数の票を受け取って定足数に達したことをノードが確認すると、そのブロックは1分以内に確認される。

ナノネットワークでは、ノードに直接的な金銭的動機がないため、急速に集中化に向かう動きが排除され、長期的な分散化トレンドに向かうことになるが、参加者の利他主義が失われたときこのモデルがどのようなスケールのかという問題は未解決のままだ。

「処理量に応じた課金」モデルを回避する方法を探しているもう1つの例としてKoinos(コイノス)がある。コイノスの目的は「mana(マナ)」と呼ばれるシステムを介して、ブロックチェーン上で消費者市場向けのユーザー体験を実現することだ。ビデオゲームに登場するマナを操作するようなイメージだ。

ネットワーク上の個々のトークンには一定量のマナに割り当てられる。データが事前ロードされているモバイルデバイスを購入するのと同じだ。この「燃料」はユーザーがネットワークリソースを使うと消費される。このようにして、手数料ゼロの取引によって流動性のあるトークン所有者が増えていく。

このアプローチはhold-to-play(使用料に応じて保有する)方式と呼ぶこともできるだろう。つまり、ユーザーがトークンを流動性のある状態に維持することで、利益を生むアクティビティにトークンを参加させないようにするというものだ。トークンに割り当てられたマナが少しでも消費されると、そのトークンは一定期間ロックされる。これはリアルタイムの金銭的費用の代わりに機会費用を発生させて無価値の取引を実行する動機を失わせる役目を果たす。このように、マナの手数料メカニズムは、明示的な取引手数料を請求するよりもダイナミックで拡張性の高いものになっている。

ユーザーの満足度に基づくモデルに従うネットワークは他にもいくつか出現しているが、大手の暗号資産がこのモデルを採用するかどうかはまだ分からない。

現在のところ大手暗号資産は、ユーザーの利他主義と強い関心によって実際的な価値を維持しており「取引料に応じて支払う」という既存の枠組みを取り払って考える必要には迫られていない。しかし、時が経過し、パフォーマンスおよび代替手段との競争力の低下が指摘されるようになるにつれて、ネットワークは処理量に応じた課金モデルを考え直し、ユーザーだけでなくネットワーク自体にも有益な解決策を見つける必要がある。

どのような企業でも、製品の価値と重要性を判断するのは顧客である。現在、暗号資産各社は、この考え方を自分たちは固守する必要はないという錯覚に陥っている。しかし、やがてこのような姿勢を改める必要が出てくる。

暗号資産プロジェクトが長期的に存続するには、集中型サービスに匹敵する分散型ネットワーク上でユーザーに真の価値を提供するしかない。

既存の暗号資産エコシステムはユーザーも利害関係者であるという事実を認識し適応する必要がある。ネットワークのビジネスモデルによって、対象となるすべての使用ケースに適切な価格設定が行われるようにし、ネットワークの収益を十分に獲得および分配して、プロジェクトを投資家たちにとって魅力的なものにすることが必要不可欠だ。

編集部注:本稿の執筆者Andreiko Kerdemelidis(アンドレイコ・ケルデメリディス)氏はKuvaのCTO兼共同設立者。

画像クレジット:gremlin / Getty Images


【原文】

The pay-for-processing business model has always been a largely unquestioned mainstay within the cryptocurrency landscape. Since the inception of digital assets, investors, developers and enthusiasts have been subjected to paying a processing or “miner” fee on top of the cost of the actual token purchased.

In April 2021, the average cost of sending bitcoin reached an all-time high of $59, surpassing its peak in December 2017, when the average transaction fees skyrocketed to $52. Then there’s Ethereum and its notoriously high gas fees. In 2021, the blockchain saw a number of crypto networks leaving Ethereum in search of more sustainable options such as rival blockchain Solana.

Needless to say, investing in crypto is becoming increasingly more expensive. Right now, the majority of the ecosystem is becoming disgruntled by the exorbitant cost of crypto and its use cases, especially in relation to fees on Bitcoin and Ethereum networks.

Nevertheless, enthusiasts and speculators are gritting their teeth and bearing it, accepting it as an annoying trade-off that comes with their involvement in something that should revolutionize money.

However, what happens when that majority loses their enthusiasm to pursue other ways to transact and move value? We already see transactions on “centralized” services like Binance Smart Chain overtaking distributed systems like Ethereum because of a more competitive fee structure.

What will become of the dream of having a truly decentralized crypto ecosystem? Is it really impossible for decentralized networks to compete with centralized ones, from a transaction fee standpoint?

It’s time for a free-market approach

At present, the network economics of all current major public cryptocurrencies and blockchains ignore the need for utility-value-based pricing, which means that the price of transacting on a blockchain is not congruent with the customer’s perception of the utility value of making that transaction.

In other words, the fee range for transactions is not determined with the consumer’s needs in mind, nor the competitive landscape. In fact, there is little benefit for consumers when it comes to the pay-for-processing model since there is no cap on what fee can be charged for a transaction. Once fees amount to a large proportion of the value you are trying to transact, it can become inefficient and impractical to use such a network for those transactions.

While many would assume or hope that the network benefits from the real value of the utility provided to the user, the reality is that the pay-for-processing model only benefits crypto miners and other network stakeholders such as stakers, and not the users themselves.

For example, in Bitcoin, rewards are paid to miners for completing blocks of verified crypto transactions, and all fees are paid out to them. There remains an artificially scarce “block size” within which these transactions are processed, and miners have historically refused to let this block size increase.

Instead, they continue to demand higher fees to include transactions into a block. According to YChart, Bitcoin miners’ average daily revenue stands around $47 million, up from around $29 million at the beginning of 2021, an increase of 62%.

In order for things to be sustainable in the long run, perhaps it’s time that transacting in crypto becomes beneficial to users by using utility-value-based pricing. It is high time that the world of digital assets adopts a conventional free-market economic approach, where the customer is always king.

High transaction fees are a barrier to crypto network expansion

Enthusiasts and early adopters will eventually become apathetic to a network, and when that time comes, pay-for-processing use cases for all these networks will most likely be reduced to only the transactions that users are willing to pay higher prices for – infrequent and higher-value settlements.

If this becomes a reality, value will be lost for a network’s stakeholders through under-pricing higher-value use-cases, while at the same time losing network revenue potentially derived from lower-value, high-volume use cases.

I refer to this impending scenario as utility mispricing — an inevitable fate for all cryptocurrency networks that rely on pay-for-processing to reward network stakeholders: that is, miners, masternode owners and stakers. The effects of utility mispricing include a decline in revenue and adoption of these networks, specifically at the point that there is an uptick in new user growth.

Ultimately, consumer confidence will wane, subsequently leading to a loss of brand equity, and this is likely to be fueled by negative media sentiment (as it is now, with relation to the exorbitant fees on the largest two crypto networks).

It remains to be seen if any of the major cryptocurrency networks will ever solve this problem in an elegant and efficient manner, short of having to implement and get consensus for a complete refactoring of their network revenue model.

Alternative business models are key for network revenue

While the best-case scenario would be to not throw the proverbial baby out with the bathwater, adopting completely new network revenue models may be the answer. Arguably, the utility-value-based pricing model for cryptocurrency is the most user-beneficial alternative model in which low to feeless transactions can take place.

To achieve this, networks must set pricing through governance that involves all stakeholders, allowing for both on-chain and off-chain stakeholders to have a say on pricing parameters.

An example of this is Nano, a feeless cryptocurrency network that utilizes open representative voting. Votes are shared and rebroadcasted between nodes, tallied up and compared against the online voting weight available. Once a node sees a block that has received a sufficient number of votes to reach quorum, that block is confirmed in less than a minute.

The network offers no direct monetary incentive for nodes, thus removing emergent centralization forces and positioning it for longer-term trending toward decentralization, although the question of how this model will scale when it loses the altruism of its participants remains unanswered.

Another example of a network finding its way around a pay-for-processing model is Koinos. Its aim is to provide a mass-market user experience on a blockchain through what they refer to as “mana” – operating much like the mana one would come across in a video game.

Every token on the network is assigned a set amount of mana – similar to purchasing a mobile device that comes with preloaded data, this form of “fuel” is expended when a user consumes network resources. In this way, feeless transactions are able to accrue to liquid token holders.

One could also refer to this approach as hold-to-play, where the users choose to keep their tokens liquid, preventing them from participating in any yield-generating activities. Once any of the mana in any given token is consumed, that token is locked for a period of time, with the purpose of creating an opportunity cost in lieu of a real-time monetary cost that serves to disincentivize the submission of value-less transactions. Therefore, making the mana fee mechanism more dynamic and scalable than charging explicit transaction fees.

While there are a handful of other emerging networks that are following a model that is driven by user satisfaction, only time will tell whether major cryptocurrencies will follow suit.

Major cryptos’ viability to scale remains at risk

Right now, major cryptocurrencies are managing to remain relevant because of user altruism and enthusiasm; networks do not yet need to think outside of the “pay-to-play” box. However, as time passes and the hype becomes measured against the network’s performance and competitiveness in light of alternatives, networks will need to rethink the pay-for-processing model and find new solutions that are beneficial to the user as well as the network itself.

In any other business, customers inform the value and relevance of a product. Currently, there is an illusion that crypto enterprises don’t have to adhere to the same system, but there will have to be a shift in due time.

Only by providing real value to users on decentralized networks that is comparable to centralized services can the longevity of any cryptocurrency project be ensured in the long run.

The existing crypto ecosystems must adapt and recognize the fact that users are stakeholders, too. It is critical to ensure a network’s business model allows pricing services appropriately across all its target use cases while earning and distributing enough network revenue to make the project attractive to its investors.

(文:Andreiko Kerdemelidis、翻訳:Dragonfly)

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