NVIDIAのArm買収断念、残る疑問と失われた可能性
今回は「NVIDIAのArm買収断念、残る疑問と失われた可能性」についてご紹介します。
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IT業界史上最大規模の半導体企業買収提案だったNVIDIAのArm買収は、独占禁止法の問題をはじめとする規制上の課題が大きすぎるとして、米国時間2月8日に白紙となった。
この400億ドル(約4兆2500億円)規模の買収取引が発表されたのは、2020年9月のことだ。しかし、以前からこの取引は頓挫するという憶測が流れており、その理由として、いくつかの(筆者が真実ではない、あるいは大げさすぎると考えていた)要因が挙げられていた。
しかしその話題に入る前に、まずこの取引がなぜ重要だったのかを説明しよう。NVIDIAの主力製品であるGPUはもともと、ゲーム用のコンピューターなどを中心に、グラフィックスの処理能力を強化するために使われていた。GPUのアーキテクチャーが、グラフィックスのリアルタイムレンダリングや、仮想現実(AR)、人工知能(AI)などのアクセラレーテッドコンピューティングが必要なほかのタスクにも適していたのは、たまたまのことだ。
2つ目の重要なポイントは、GPUだけではシステムを動かすことはできず、CPUが必要だということだ。CPUはシステムを起動し、OSの大部分の処理を担い、その他のタスクを実行する。歴史的に言えば、ゲーム用のシステムとスーパーコンピューターを除けば、GPUとCPUの両方を必要とするシステムは多くなかった。しかし今では、AIを使用するシステムが増えたことで、GPUが大量に利用されるようになっており、自動運転車やビデオエンドポイント、デジタルホワイトボード、工場設備などでも一般的に使われるようになった。
3つ目の重要なポイントは、CPUとGPUを組み合わせて、その性能を最適化するのは容易ではないということだ。ここに、NVIDIAとArmの組み合わせが大きな成果を挙げられる可能性があった。
多くの半導体メーカーとは異なり、NVIDIAはチップだけでなく、システムにまで手を広げている。例えば同社の「DRIVE」シリーズは、自動運転車向けに作られた一連のシステムで、NVIDIAのGPUと、CPU、ソフトウェア、OS、SDKなどを組み合わせて構成されている。自動車メーカーは、自らシステムを設計しなくても、これを車両に組み込めばAIの機能を構築することができる。ヘルスケア業界向けの「CLARA」も同様の製品だ。
NVIDIAがCPUとGPUの両方を持てれば、同社が設計するシステムをさらに最適化することができたはずだ。これは誰にとってもよいことであり、イノベーションを加速させることができただろう。