全社DX推進後のゴールイメージを視覚化・言語化する
今回は「全社DX推進後のゴールイメージを視覚化・言語化する」についてご紹介します。
関連ワード (DXマネジメントオフィス入門、経営等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
本連載も最終回です。前回は、全社のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進に向けた「HX(Human Transformation:ヒューマントランスフォーメーション)」について解説しました。全社DX推進を阻害する5つの障壁の突破と不文律分析は大変有益な考え方であり、効果的な方法論です。ただ、HXを進めていくには、「DX推進後のゴールイメージを視覚化・言語化する」ことが重要です。社員の全社DX活動への啓蒙を推進する際、「その結果、自身たちの業務はどのように変わるのか、どういった状態になっているのか」といったゴールイメージを提示し、共感されなければ、本当の意味で腹落ちした啓蒙は難しいでしょう。本連載の最後に、全社DX推進後のゴールイメージ(事例)を紹介します(図1参照)。
「全社DX推進後のゴールイメージ」を策定する際は、幾つかの軸やフレームを用いて、可能な限り全社的・網羅的であることを意識し、業務・デジタルが融合した姿の全体感を示せるようします。図1で示す事例では、まず左側のピラミッドにおいて上から「戦略」「人・組織」「DX実行環境」「連携システムとデータ群(データレイク※)」の4層の軸で全体像を整理しています。
※データレイク:構造化されたデータ(基幹システムのテーブル化されているデータベースなど)、非構造化データ(メールやテキストといったテーブル化されていない文章など)やバイナリ(画像や動画、音声データなど)などのファイルを含むあらゆるデータを一元的に格納するデータリポジトリー(データのバケツ)。
第1階層(戦略):「最上位概念として、経営戦略・事業戦略、そしてDX戦略が存在していること」、また、「それより下位の全ての階層の屋根のように位置づけ、下位の概念群との整合がとれた戦略であること」を表しています。これにより、「全てのDX活動はDX戦略に基づくべきである」というメッセージを明確に示しています。
第2階層(人・組織):「業務実行主体とマネジメントの2つの役職階層で分け、それぞれが第3階層からどんなデータを授受し、利用するか(タテのデータ連携)」「経営者・部課長・一般社員の間でもどんなデータを授受し、活用するか(ヨコのデータ連携)」「ロボティックプロセスオートメーション(RPA)や人工知能/認知(AI/Cognitive)もデジタルレイバー(人間の業務を代替するデジタルの機能)として含ませていること」を表しています。これにより、企業内の「ヒトとデジタル」がデータによって横断的につながり、サイロが解消され、全ての情報の透明性・連携性が高度化された状態になるというメッセージが明確になります。また、この人・組織にDX専門組織が関わる領域も明確に示しています。
第3階層(DX実行環境):「これまで分断化・分散化していた業務プロセスがデジタルによりプラットフォーム化され、業務プロセスがシームレスに自動化されていること」「第2階層と第4階層との情報授受・連携を前提とし、データが集約・一元化されていること」を表しています。これにより、「全ての企業活動・業務がテクノロジーによりアルゴリズム化された状態」で自律化・自動化されていく(データドリブン経営)というメッセージを明確に示しています。
第4階層(連携システムとデータレイク):「第3階層と、クラウドを含む企業内の全てのIT環境が接点を持ちデータの授受ができること」「データ連携のみならず、第3階層からプッシュ型の処理実行までが実現されること」を表しています。これにより、現状で分散化しているさまざまなシステム群を統合することなく、第3階層のデータプラットフォームと連動し、データ基盤群として継続活用が可能であるというメッセージを明確に示しています。
以上のように、「全社DX推進後のゴールイメージ」を視覚化・言語化する際は、「DX専門組織、ステークホルダーに対してどのようなメッセージを伝えるべきか」「DX専門組織はどの点に貢献し、あるべき姿として盛り込んでいくべきか」を十分に検討し、網羅性と体系を考慮してデザインしていくことが重要です。このようなゴールイメージを目にすることで、DX活動に参加する社員は、「自社・自身が将来的にたどり着く姿と、それに向かうための貢献」に対してしっかりしたイメージと動機・モチベーションを持てるようになるでしょう。