5Gの現状と今後–次世代モバイル通信規格の利用状況と進化を追う

今回は「5Gの現状と今後–次世代モバイル通信規格の利用状況と進化を追う」についてご紹介します。

関連ワード (5G時代の到来が意味するもの、特集・解説等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 モバイル業界の企業のプレゼンテーションには、私たちを待ち受ける5Gの未来について楽観的な見方が示されており、モバイル体験の向上、新たな機能と能力、複数の垂直市場への拡大などが挙げられている。

 聞くところによると、5Gネットワークが進化するにつれて、対応エリアが人口密集地域から拡大して広い範囲をカバーするとともに、高速化、遅延の低減、信頼性の向上により、産業用IoT、Cellular-Vehicle to Everything(C-V2X)、スマート農業、モバイルExtended Reality(XR)などのユースケースが成熟していくという。それと同時に、ネットワークインフラストラクチャー自体の持続可能性が向上するとされている。

 だが、多くの人にとって、現在の5G体験はこれと大きく異なる。筆者がこの記事を書いているホームオフィスは、田舎ではあるが英国の辺境とまでは言えない場所にある(ロンドン中心部から約64km、ミルトンケインズから約19km、ベッドフォードから約24km、ルートンから約22kmの場所だ)。英国の4大モバイルネットワークの対応エリアチェックツールに筆者の郵便番号を入力すると、それぞれ次のようなメッセージが表示され、5G不在の地があることが分かる。「申し訳ございませんが、こちらの地域は5Gに対応していません」(O2)。「現時点ではサービス対象外」(Vodafone)。「こちらの地域ではまだ5Gをご利用いただけません」(EE)。「利用不可。残念ながら、当社の5Gネットワークは現在、こちらの地域ではご利用いただけません」(Three)。それでも、英国は西欧で5G展開のパイオニアとみなされている。

 今では5G対応のスマートフォンが広く提供されているものの、5Gが多くの場所で約束を果たすまでの道のりは明らかに長い。5Gの約束を果たす旅では、陰謀論や健康上の不安を退けることが望ましいが、それに加えて、空港の安全性(一部の地域)など、もっと妥当な懸念に対処することも求められる。

 本記事では、5Gがどこに向かっているのか、どのようにして目的地に到達するのかを解説する。さらに詳しい情報は、5G特集で公開される他の記事を参照してほしい。

 Global Mobile Supplier Association(GSA)によると、2021年12月末の時点で、145の国や地域の487の事業者が5Gモバイルネットワークや5G固定無線アクセス(FWA)/家庭用ブロードバンドネットワークに投資しているという。そのうち78の国と地域の200の事業者が3GPP対応5Gサービスの提供開始(モバイルまたはFWA)を発表しており、187社が商用5Gモバイルサービスを提供し、83社が5G FWAサービスを提供している。

 最近の進展としては、スタンドアロン(SA)5Gネットワークの登場がある。これは無線アクセスネットワーク(RAN)の5G New Radio(NR)とバックエンドの5Gコアインフラストラクチャーを組み合わせるもので、既存の4G LTEネットワークに依存する非スタンドアロン(NSA)の5Gネットワークとは対照的だ。クラウドネイティブのマイクロサービスベースのインフラストラクチャーに支えられた5G SAネットワークは、低遅延、大規模なデバイスサポート、ネットワークスライシングを提供して、多様なサービスレベル要件を持つユースケースや顧客に対応することができる。

 GSAは、「試験、計画、ライセンス料の支払い、展開、ネットワークの運用といった形で、パブリックネットワーク向けの5Gスタンドアロンに投資」している50カ国の99の事業者を特定した。GSAによると、少なくとも16カ国の20の事業者がパブリック5G SAネットワークをすでに立ち上げており、さらに5社が5G SAテクノロジーを展開済みだが、サービスの提供開始にはこぎ着けていないか、ソフトローンチしただけだという。これに加えて、25の事業者がパブリック5G SAの展開または試験を実施している最中で、27社が計画中であることから、「GSAがこれまでに特定したローンチは、今後多数登場するローンチの第1波」であることは明らかだ。

 特定のニーズに合わせて設計されるプライベート5Gネットワークは、多くの組織や企業にとって魅力的な選択肢であり、データをオンプレミスで安全に保持したい組織、またはその必要がある組織、スマート製造などのユースケースで信頼性の高い低遅延の接続を求めている組織にとっては、特に魅力が大きい。GSAによると、166の組織がプライベートモバイルネットワークやパイロットプロジェクトに5Gテクノロジーを使用中で、そのうち32の組織はすでに5G SAを使用しているという。

 これらの数字を以下の表にまとめた。

 データ:Global Mobile Suppliers Association(GSA)

 プライベート5Gネットワークは大きな話題になっているが、OmdiaのアナリストのPablo Tomasi氏は、2022年が飛躍の年にならない可能性があると警告している。「5Gはさらに重要な役割を果たすようになるが、皆の期待に反して、2022年は5Gの年にはならないだろう。市場では未だに、プライベートLTEで大半のユースケースに十分対応できるという声が聞かれる。プライベート5GにできてLTEにできないことについては、今でも不確かなことが多い」。Tomasi氏は先頃のインタビューでこのように語っている。

 5Gの主なユースケースとして予想されているものには、高速大容量(eMBB)、高信頼低遅延(URLLC)、多数同時接続(mMTC)、固定無線アクセス(FWA)があり、これらにはさまざまな組み合わせと量の無線周波数帯が必要だ。5Gの周波数帯には主に、低周波数帯(1GHz未満)、中周波数帯(1〜6GHz)、高周波数帯(24〜100GHz、ミリ波とも呼ばれる)の3種類がある。

 低周波数帯はカバーする範囲が広く、屋内にも届きやすいが、速度と遅延は4G LTEネットワークとほとんど差がない。中周波数帯は速度(約100Mbps)とカバー範囲のバランスが良くとれているのに対し、高周波数帯(ミリ波)は短距離で超高速通信(1Gbps以上)を可能にする。

 5Gネットワークの新たな進展は、時分割複信(TDD)が広く使用されるようになったことだ。低周波数帯に適した周波数分割複信(FDD)と異なり、TDDは中〜高周波数帯に適している。TDDでは基地局とデバイスがトラフィックの送信と受信を同じ周波数チャネルで異なる時間に実行するのに対し、FDDは送信と受信に別のチャネルを使用する複信方式だ。

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