KDDIら、光海底ケーブルをマルチコアで大容量化–2020年代半ばの実用化へ

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 KDDI総合研究所、東北大学、住友電工、古河電工、NEC、オプトクエストは3月28日、マルチコアファイバーによる光海底ケーブルの大容量化を実現する基盤技術を開発・実証したと発表した。既存システムの7倍の毎秒1.7ペタビット程度まで容量を拡大できる可能性があることを確認した。

 第5世代移動体通信システム(5G)の普及に伴うモバイルデータ通信の増加やデータセンター間の通信需要の増大などを背景に、世界中のデータ流通量は増加の一途をたどっている。TeleGeographyの調査では、国際通信の回線需要は2020~2026年で年率30~40%のペースで伸長すると予想されている。

 さらに、オンラインによる社会活動が一般化したニューノーマル時代では、その傾向に一層の拍車がかかることも予想される。このような需要に応えるため、大容量通信を実現する光海底ケーブルシステムの国際データ通信インフラとしての重要性はますます高まっている。

 光海底ケーブルシステムの大容量化に向けては、ケーブルに収容する光ファイバー数を増加させる多心化が有効とされる。しかし、従来の光ファイバーでは、ケーブル外径を変えずに収容できる光ファイバー数に限界があり、さらなる大容量化が困難となっていた。

 今回の研究開発は総務省の委託研究になる。従来の光ファイバーの限界を超える技術として、光が伝搬するコアを光ファイバー中に複数設けるマルチコアファイバーに着目。世界最小級に伝送損失を低減したマルチコアファイバーを開発し、太平洋横断距離を上回る距離で超高速な光信号のマルチコアファイバー伝送を成功させた。開発したマルチコアファイバーは4つのコア(4コアファイバー)を設けており、光ファイバーの伝送容量は4倍になる。

 開発した光ファイバーを適用することにより、毎秒109テラビットの超大容量光信号を3120km以上の距離で伝送可能であることに加え、毎秒56テラビットの光信号を1万2000km以上に伝送可能であることを実証した。開発したマルチコアファイバーケーブルには4コアファイバーを収容し、従来の光ファイバーサイズとケーブル外径を維持したまま伝送容量を大幅に拡大可能となっている。光海底ケーブルには4コアファイバーを32心収容でき、最大で128コアによる大容量伝送が可能。

 開発したマルチコアファイバーケーブルを用いて、実際の利用を想定し水中・長距離の伝送試験を行い、光ファイバーそのものの試験結果と比較して、光信号パワーの減衰量、コア間クロストークなどの光学特性に大きな変化はなく、良好な伝送性能を得ることに成功しているという。

 コア数4以上のマルチコアファイバーと、それを収容した海底ケーブルの光学特性を評価する2つの技術も開発した。第1の波長掃引法では、マルチコアファイバーのモード依存損失、クロストークを評価でき、第2のOTDR(Optical Time-Domain Reflectometer、光時間領域反射率計)法では、マルチコアファイバーの損失、クロストークの長手分布を評価する。

 両方式で60kmの4コアファイバーケーブルを評価し、ファイバー特性から予測されるクロストーク性能がケーブルで得られているとともに、両方式の測定値が誤差1dB以内で一致することを実証した。

 加えて、3種類のマルチコアファイバー光アンプ用複合機能デバイスを開発。開発した複合期機能デバイスは、4コアファイバー用アイソレーター内蔵Fan-in/Fan-out(ファンイン/ファンアウト)デバイス、4コアファイバー用Fan-out付きTAPモニターデバイス、4コアファイバー用O/E(光/電気)変換器付きTAPモニターデバイスの3種類で、複数機能を1デバイスに集約するとともに、世界最高水準の低損失と小型化を同時に実現したとしている。

 現在のシングルコアベースのマルチコア用光増幅器ではコア数分のゲインブロック(伝送によって弱くなった光信号を増幅する装置の一部)が必要となり、コア数が増加すると比例してゲインブロックも増加する。そのため、トラフィック需要増に応じて光海底ケーブルシステムを大容量化し続けると、将来的に現行サイズの海底ケーブル中継器内には収容しきれなくなるという課題があった。

 開発したマルチコア光増幅器では、1つのゲインブロックで複数コアを一括して増幅するクラッド励起方式を採用するとともにそのゲインブロックを構成する部品やその配置を工夫することで、体積を従来の半分程度にすることに成功した。

 これらの開発結果を組み合わせ、アジア域などをカバーする3000km級の光海底ケーブルシステムを、4コアファイバーを16対・32心収容した光海底ケーブル・複合機能デバイス・光増幅中継器で構成。既存のシステムと比較して、7倍となる毎秒1.7ペタビット程度までの容量を拡大できる可能性を確認している。

 今後は、研究開発で確立した基盤技術を基に、マルチコアファイバーの量産化技術の開発、長期信頼性の検証、運用保守技術の開発などを推進し、2020年代半ばの実用化を目指す。

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