“行動のためのデータ”で実現する気候変動対策
今回は「“行動のためのデータ”で実現する気候変動対策」についてご紹介します。
関連ワード (ビッグデータ、企業のサステナビリティー戦略を支えるデータ活用等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
2021年、国際連合(国連)の第26回気候変動枠組条約締約国会議(COP26)では、ブルーエコノミーが大きく取り上げられました。地球の4分の3を覆う海洋は、気候変動で生じる余剰熱の90%を吸収し、人間が排出する二酸化炭素(CO2)の3分の1を吸収する役割があります。ブルーエコノミー、つまり海洋環境の保全と持続可能な海洋資源の利用を通じた経済をめぐる議論が近年、さまざまな国際機関や組織で注目されています。
しかし海洋と、海洋に依存して生活する沿岸地域は、気候変動により高まるリスクに直面しています。特に、小島嶼(しょ)開発途上国(SIDS)と南半球の沿岸諸国は、気候危機へ直接的な害をほとんど与えていないにもかかわらず、その被害を最も受けており、効果的な対策ができていないのが現状です。国際会議の場において、SIDSのリーダーたちによるこのテーマについての議論は一層活発化し、数世紀にわたって蓄積されたCO2の責任を取るべき国々からの経済的支援の拡大を求めています。
対策資金を増やすことは重要ですが、この投資が、気候変動による壊滅的な影響を最も受けている脆弱な地域や人々を守るためのプロジェクトに向けられることも同様に重要です。しかし現実には、専門的知識の欠如や不十分なデータ、地域のニーズと合致しない国家計画などさまざまな理由から、地域レベルで投資されている気候変動資金は全体のわずか10%に過ぎません。
これらの重要なギャップを埋め、気候変動対策における迅速なアクションを促すためにはどうしたらよいのでしょうか。ここでは、データポータルを活用した事例を紹介します。米国で最も影響力のある研究機関の一つであるスティムソンセンターは、気候変動で発生する海洋に関連したさまざまなリスクを評価する意思決定支援ツール「CORVI」を開発しました。このツールは効果的な地域気候投資を促進し、沿岸諸国やSIDSがより具体的な国家適応計画を策定できるようにサポートします。また財政的、政治的、環境的リスクを分析し、沿岸都市のリスクプロファイルを作成します。
100種類を超えるリスクファクターを網羅するCORVIデータの収集、分析、共有には、幾つかの固有な課題があります。そこで、スティムソンセンターはCORVIデータポータルを開発しました。完成したCORVIリスクプロファイルはデータポータルに追加され、これによりユーザーはCORVIリスクデータを可視化して、相互のアクションを実現できます。より多くのCORVI評価が完了し、ポータルに追加されると、ユーザーは異なる都市のリスクプロファイルを比較し、地域の傾向とニーズを評価することもできるようになります。さらに、CORVI評価を実施するローカルパートナーがツールを利用して、データの収集や処理、手動では時間のかかるプロセスの自動化、エラーの可能性の低減、さらに意思決定者に結果をより効率的かつ効果的に提供できるようになります。
ケニアのモンバサとタンザニアのダルエスサラームで最近終了した2件のCORVI評価の調査結果と、セントクリストファー・ネイビスのバセテールにおける評価の中間結果を含む3つのCORVI評価がCOPの中で話題として取り上げられました。英国のブループラネット基金は、海洋リスクとレジリエンス行動同盟(ORRAA)と協力して、スティムソンと英連邦本部との新しいプロジェクトを発表しました。これは、3つのSIDSと沿岸後発開発途上国(LDC)のレジリエンスを構築するために設計されたCORVI迅速評価を試験的に行うものです。
リアルタイムデータを活用し、タイムリーな行動を促すインサイトを得る“Data to action”(行動のためのデータ)を実現するこのツールにより、沿岸地域は、直面する気候変動による特定のリスクについて、より詳細かつ総体的に理解できるようになります。この情報により、各国政府は、国家適応計画の強化、気候変動対策、レジリエンスの構築、国際開発機関や金融機関からの資金調達が可能になります。