組織をまたいだ顧客IDの連携活用テクノロジーを展開するLiveRamp

今回は「組織をまたいだ顧客IDの連携活用テクノロジーを展開するLiveRamp」についてご紹介します。

関連ワード (マーケティング等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 マーケティングを中心に、自組織の顧客情報をより活用してきたいと考える企業は多いが、近年はセキュリティやプライバシーが重視され、顧客情報を安全な管理を求める各種の法規制が厳しく、Cookieやモバイル広告IDなどの制約も強くなる一方にある。こうした状況に対応するためのテクノロジーソリューションが登場しており、その1つが米LiveRampだ。

 同社は2011年に創業し、カリフォルニア州サンフランシスコに本拠を置く。「RampID」という、企業や組織の顧客情報(ファーストパーティーデータ)のメールアドレスを独自のアルゴリズムでハッシュ化して固有のIDに変換し、安全に連携できるようにするソリューションを展開する。多様な業種の企業がユーザーだが、特に小売大手の仏Carrefourや米Targetなどとは深い協業関係を構築しており、「リテールメディア」と呼ばれる新しいビジネスモデルを具体化させている。

 日本法人のLiveRamp Japanでヘッドオブパートナーシップスを務める今井則幸氏は、自らを「単なるID屋に過ぎない」と表現する。その意図は、「われわれがユーザー企業から顧客情報を預かるわけではない。あくまでユーザー組織の顧客ごとに固有のID(RampID)を生成(顧客の同意が前提になる)し、ユーザー組織同士が連携する際には、それぞれに生成したRampIDをつなげることで、連携を支援する仕組みを提供することに徹しているため」という。

 今井氏によると、RampIDは上述のように顧客のメールアドレス情報を独自のアルゴリズムでハッシュ化し、その値を基に生成するIDになる。RampID自体に顧客情報は含まれていない。もともとの顧客が同じであっても生成されるRampIDはユーザー組織ごとに異なるという。ユーザー組織が顧客の同意を得てRampIDを利用する場合に、その通知がLiveRampに行き、RampIDプラットフォーム上で連携が行われる仕組みだ。

 目下のニーズとして最も多いのが、自社のファーストパーティーデータの活用になる。ファーストパーティーデータを分析して顧客の理解を深め、適切な関係性を構築し、購買につなげていくというのが主なゴールになるが、仮に同一の顧客であっても、顧客情報としては部門やグループ企業などの単位で別々に管理され、まずは顧客情報基盤の統合を考える。だが、「管理項目がバラバラで整理できない」「データベースをどう設計するか?」「顧客の同意を得られるか?」など数々の障壁があり、遅々として進まないことがほとんどだ。

 こうしたケースでは、まず個々の管理単位でRampIDを生成し、それらをRampIDプラットフォーム上で連携させる。これにより例えば、マーケティング部がキャンペーンを企画した場合、年代や職種、居住地域といった条件で、営業部やサポート部などが管理する顧客も含めたキャンペーン対象の絞り込みができるようになるという。Carrefourのケースでは、関連会社で異なるID体系が18あり、これをRampIDで連携させているという。

 また、デジタル広告でもRampIDが活用されだしている。Cookieやモバイル広告IDの使用が法規制やブラウザーベンダーの方針で厳しく制限され、実質的に使用できなくなる時期が近づいている。そこで顧客の同意を基に広告主や配信事業者がRampIDを使用して、顧客に適切な広告を配信できるようになるという。「顧客の中には、従来の仕組みによるターゲティング広告の内容を煩わしいと感じる人もいる。RampIDで顧客が希望する種類の広告だけを配信すれば、それは顧客にとって有益な情報になり、顧客とより良い関係を築ける」(今井氏)

 CarrefourやTargetなどが取り組むリテールメディアでは、オンラインおよびリアル店舗におけるさまざまな顧客のデータと、メーカーなど取引先の顧客のデータをRampIDでつなぎ、多様な施策を展開する仕組みだ。Carrefourが2021年に開始した「Carrefour Links」では、同社と各種サプライヤーや広告配信事業者、放送局などが参加し、RampIDでそれぞれの顧客データを連携、活用している。

 例えば、Carrefourの店舗やECで商品を購入した顧客にメーカーが別の商品を紹介したり、以前の購入から期間の空いた「休眠顧客」を掘り起こしたりできるという。また、新規顧客の獲得キャンペーンを企画した場合、Carrefour Linksを経由して、連携先の企業にいる同意を得た顧客に対してもアプローチが可能になるという。

 今井氏によれば、日本企業の間でも2022年頃からリテールメディアの仕組みに関心を持つところが増え始めた。ただ、商流などの違いもあり、日本市場に適した仕組みづくり検討されるとの見通しで、まずは自社のファーストパーティーデータ活用に向けた環境整備が最優先課題にあり、海外の現地法人でスモールスタートさせているケースがあるという。

 直近ではデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)やマイクロアドとの協業を開始し、デジタルマーケティングや広告領域でソリューション拡大を進める。今井氏は、「多くの企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)でアプリ開発などの取り組みを進め、顧客との関係構築や体験の向上を通じて、その先にあるビジネスにつなげようとしている。LiveRampはあくまでIDのプラットフォーム。ユーザーが活用可能なさまざまな使い方がある」と話す。

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