NEC、LLMと画像分析で被災状況を把握する新技術–初動の迅速化図る
今回は「NEC、LLMと画像分析で被災状況を把握する新技術–初動の迅速化図る」についてご紹介します。
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NECは8月25日、「防災月間」である9月に先駆け、防災・減災に向けた自社技術に関する説明会を開催した。本記事では、同日発表の大規模言語モデル(LLM)と画像分析を活用した技術を紹介する。
同技術は、膨大な現場画像から被災状況の把握に必要なものを素早く的確に絞り込み、番地レベルで地図上に表示する。これにより、災害対応を担う省庁や自治体における初動の迅速化を図る。
災害発生時には、被災者の避難誘導や救助活動などを迅速に行えるよう、被災状況の把握が求められる。しかし、災害発生時に関係省庁が公開している降水量や震度の分布、住民から寄せられる被害や安否に関する文字情報だけでは、被災状況や場所を把握するのに不十分だという。
そこで近年、個人のスマートフォンやドライブレコーダー、街頭カメラなどを通して得られた被災現場画像の活用が期待されている。一部の自治体では、市民が災害状況の画像をアップロードできる掲示板などを用意し、情報を収集する取り組みを進めているという。
しかし画像の活用には、(1)必要な現場画像を絞り込めず、被災状況が分からない、(2)被災場所を番地レベルで特定できず、どこに駆けつければよいか分からない――という課題がある。
(1)の課題に対して今回発表された技術は、LLMによる言葉の意味解釈と画像分析による画像の類似性判定により、膨大な現場画像の中から利用者の意図に沿った画像に絞り込む。従来、画像の絞り込みには画像認識技術が用いられてきたが、認識できるのはあらかじめ学習した対象物に限られていた。同技術で活用するLLMはオープンソースのものだが、自社が開発したLLMを用いることも検討しているという。
(2)の課題に対しては、現場画像から道路、建物、信号機などを自動抽出し、地図データと照合することで場所を推定する(図1)。これまでNECは、現場画像を上空画像と照合して場所を推定する技術を開発してきたが、地図データも併せて活用することで、より高精度な推定が可能となる。
同説明会では、地震発生時を想定したデモンストレーションを実施(図2)。チャット画面において利用者は、フリーワードで現場画像を絞り込める。「建物が倒壊している場所を探して」と入力すると、複数枚の画像が表示される。「より被害の大きい場所を知りたい」など言葉での指示が難しいケースも想定されるため、「1、2、4、5、6枚目は私の希望に合っています」などと画像に割り振られた番号を指定すると、利用者の意図に沿った画像を絞り込んで表示する。地図画面では当該画像の場所を表示し、被災者の避難誘導や救助活動の迅速化を図る。
市民による画像提供では、関係のない画像やフェイク画像などを故意に送るリスクも懸念される。こうしたリスクに対しNECは、地図との照合技術を活用して無関係な画像を除外したり、自社で研究開発している検知技術を用いて加工を見抜いたりすることを想定しているという。
NECは、2025年度中に同技術の実用化を目指している。対象となる関係省庁や自治体へのヒアリングも並行して実施しており、複数の自治体が関心を持っているという。今後はそれらの自治体にとって「本当に役に立つサービス」を構築するため、実証実験を計画している。