マイクロソフトのAI研究者、独自開発の軽量型言語モデルや医療のAI活用を語る

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 Microsoft Research Asiaと東京大学は、東京大学安田講堂で「AI Forum 2023」を開催した。「AIシナジー:科学と社会」をテーマに、両者の専門家がAI研究の取り組みや成果を共有するとともに、AIと社会、科学とのシナジーを探ることを目的にしている。

 両者は、2023年8月にグリーントランスフォーメーションやダイバーシティ&インクルージョン、AIの研究の推進に向けた連携で基本合意書を締結、。研究を通じて、社会への貢献を果たすとともに、学生の育成にも取り組む方針を示している。今回のイベントは、この連携に基づいて開催した。また、Microsoft Research Asiaは中国・北京および上海を拠点として1998年に設立され、25周年の節目を記念したイベントでもあった。

 東京大学 総長の藤井輝夫氏は、「10年ほど前にAIが新たな船出を迎えた。大きな改善が繰り返されてきたが、それに終わりはない。AIという船は、世界中の海を航行できるようになり、一部のAIは未知の大陸に到着して探索し始めた。どれほど広大な世界か。何が生息し、隠された宝があるのか、どんな危険が潜んでいるのかも分からない。このAIフォーラムは、そこに挑む探検家たちに無限の可能性を示してもらう場」と語った。

 また、東京大学は、画像解析や音声認識、自然言語処理、ロボットといった観点からAIの研究を行うだけでなく、AIを物理学や医学、生物学、社会科学と統合することなどにも取り組んでいるという。藤井学長は、「対話とは、話したり情報交換したりするだけでなく、未知のことを知る行為でもある。未知を既知に変えるには質問が不可欠。対話を通じて他者と共に考え、信頼関係を構築できる。東京大学は、Microsoft Researchと対話を重ね、長期にわたりAI研究を進歩させ、さまざまな分野と統合するきっかけをつくりたい」と述べた。

 まずMicrosoft Researchを率いる米Microsoft コーポレートバイスプレジデント Microsoft Research & Incubations 担当のPeter Lee氏は、「医療用AIの出現」と題して講演した。「私たちは、生成AIについて多くを学んできたが、それでもまだ分からないところが多い。医療分野を変革する可能性がある一方、リスクもあり限界もある。生成AIを正しく理解することが、医療分野では大切だ」と切り出した。

 Lee氏の講演でユニークなのは、生成AIを理解してもらうための方法として、日本の人気アニメ「アンパンマン」を題材にして見せた点だ。

 「GPT-4」などの生成AIは、アンパンマンのキャラクターの特徴やストーリーに関する質問については、公開情報から答えを引き出すことができ、得意とする分野であるとした。「このアニメが人生について何を教えてくれるのか?」という質問に対しても、生成AIは、「キャラクターの多様性、社会における協調性などの大切さを教えてくれる」といった回答ができることを、GPT-4によるデモストレーションを通じて示した。

 しかしLee氏は、「論理的な答えをするのは生成AIの得意な部分であり、人を超えることができるが、生成AIがオリジナルの考え方を述べたものではないことに注意しなくてはならない」と指摘した。さまざまなアイデアをまとめた結果として出てきたもので、オリジナリティーがない部分は、人間とは異なる部分だとする。「私たちは、どこにオリジナリティーがあるのか、どんなプロセスでそのAIの回答が導き出されるのか理解するための努力をしている」と語った。

 またLee氏は、「AIにも限界があることを認識しなくてはならない。完全な能力や知識があると思い込んでしまいがちだが、生成AIは、正しい計算結果を出すコンピューターとは異なり、新たなタイプのマシンであると認識した方がいい」などとした。その上で、医師や看護師が生成AIを医療で使用する際には、生成AIが得意とする部分と限界を正しく理解する必要があり、生成AIが高度なコミュニケーション機能を持つことから、治療プランを詳細に説明したり、患者にどう話していいか迷う時などに活用したり、患者がセカンドオピニオンを聞くために生成AIを利用したりできる例などを示した。

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