デジタル人材を一から育成–デロイトに聞く、“包括的な”障害者雇用の舞台裏
今回は「デジタル人材を一から育成–デロイトに聞く、“包括的な”障害者雇用の舞台裏」についてご紹介します。
関連ワード (CIO/経営、D&Iで切り開く、企業の可能性等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
ESG(環境・社会・ガバナンス)投資やイノベーション加速の観点から、大手企業を中心にDEI(多様性、公平性、包括性)推進の取り組みは年々広がりを見せている。しかし「女性の活躍」や「多様な性的指向・性自認への理解」に向けた施策や活動に比べ、知的/精神障がいのある人々に関するものは目立たない印象だ。特例子会社を設立して障害者雇用を促進する動きはあるものの、DEIの“I”に当たる「包括性」を満たしているかというと疑問が残る。
そんな中、デロイト トーマツ グループは障がいのある人々を対象に、デジタル人材を育成するインターンシッププログラム「Diverse Abilitiesインターンシッププログラム」を2023年4~9月の約5カ月間開催した。計30人が参加し、1st~3rdステージと面接を経て、2024年2月1日付で21人が有期雇用職員として本格採用された。現在は包括的な環境のもと、配属部署の従業員と共に自身のスキルを生かして勤務している。2023年11月からは第2期を開催しており、計100人以上の応募が寄せられたという。
同インターンシップには、障害者雇用に関するコンサルティングサービスを展開する企業のKindAgentが協力している。障害者雇用の業務はデータ入力や書類作成などの事務作業が多くを占めるが、同社はテクノロジーの進化に伴い従来業務の自動化が進むと予測し、「デジタル技術を駆使する側」の人材育成に取り組んでいる。
デロイト トーマツ グループは、いかにして共に働く組織を実現したのか。インターンシップの担当者に聞いた。
デロイト トーマツ グループは、KindAgentが用意した枠組みを基に独自のインターンシッププログラムを構築。1stステージにおいて応募者は約2カ月間、オンライン講座で「ITパスポート試験」レベルの知識やプログラミング言語「Excel Visual Basic for Applications(VBA)」「Python」を習得。2ndステージでは約1カ月半、1stステージで学んだ基礎知識を生かし、社内カフェの座席予約システムを構築する「仮想プロジェクト」にチームで取り組んだ。
3rdステージでは約1カ月半、デロイト トーマツ グループに配属され、On the Job Training(OJT)を体験。サーバー運用レポートの作成やアカウントの申請対応といった7種類の業務の中から、本人の希望や適性、受け入れ体制などを考慮して配属し、参加者は受入部門の従業員による指導のもと実務を通して知識やスキルを身に付けた。
3rdステージ後の面接は、OJTで参加者と関わってきた受入部門の従業員が担当した。「ITの仕事が合わなかった」「一般就労での採用が決まった」などの理由からインターンシップの途中で辞退した参加者はいたものの、3rdステージまでやり遂げたメンバーは全員が合格した。OJTを通して参加者は受入部門の業務内容、受入部門は参加者のスキルセットやパーソナリティーについて相互理解が進んだことが功を奏したという。
「通常の採用活動では事業の運営上必要となる業務を遂行できる即戦力を求めるが、今回は参加者の方々の得手不得手や意向をあらかじめ把握した上で、現状の業務のうち親和性が高いものを探すというアプローチを採った」とOJTを担当したIT部門でシニアマネジャーを務める青山博氏は説明する。
採用された人材は現在、大規模ウェビナーの申請受理・権限付与や目標設定の回収・承認フローの自動化など自身のスキルセットに合った業務を担っており、今後はPCや仮想デスクトップ基盤(VDI)、モバイル端末の検証業務、「Windows」「Linux」などのサーバーを構築し、Deloitte標準の各種ツールをインストールする業務を行うことを予定している。
現在日本における障害者雇用では「障害者手帳」が必要となるため、今回は「身体障害者手帳」「療育手帳」「精神障害者保健福祉手帳」のいずれかを持っている人々を対象とした。インターンシップの形態はフルリモートで10~16時の週4日、2ndステージ以降はアルバイト雇用契約を締結した。入社後は9時半~17時半の週5日、フルリモートで勤務している。デロイト トーマツ グループは、3年間の勤続を目安に正職員に登用することを見込んでいる。