住友電装、AIによる動画解析でカイゼンの立案と実施を加速化

今回は「住友電装、AIによる動画解析でカイゼンの立案と実施を加速化」についてご紹介します。

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本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 AIスタートアップ企業のOllo(オロ)は6月19日、同社が開発した画像認識ソフトウェア「Ollo Factory」が住友電装に正式採用されたと発表した。今後住友電装の全世界の生産拠点に導入を進めることになる。

 Olloは、AIの第一人者である東京大学大学院 工学系研究科 人工物工学研究センター/技術経営戦略学専攻 教授の松尾豊氏の研究室メンバーが中心となって、2019年2月に設立したAIのスタートアップ企業。2024年1月には、会計ソフトウェアの弥生で15年にわたり代表取締役 社長を務めた岡本浩一郎氏が取締役会長に就任して話題を集めた。

 Ollo Factoryは、生産現場の作業者の動きを高精度に解析するソフトウェア。カメラで撮影した動画をアップロードするだけで、AIが作業を自動的に検出し、全ての作業を計測する。作業のばらつきや抜け、ムダを発見することで、現場の生産性向上を実現するのが特徴だ。

 組み立て作業のような人の作業をAIによって自動で解析する。手本となる1つのサイクルの開始点と終了点を指定するだけで、AIが動画に含まれる全てのサイクルを自動で詳細に分析する。AIによる分析精度を上げるためには、一般的に大量の学習サンプルが必要になるが、Ollo Factoryでは大量のデータが不要であり、高い分析精度を実現しながら、作業の課題を迅速に発見し、作業効率の向上などを通じて、現場の生産性向上を図ることができる。

 Olloでは、「Ollo Factoryによって、従来に一部の担当者に依存しがちなカイゼン業務を短期間かつ大量に実行できるようになる」とする。これまでに30社以上にOllo Factoryが導入されており、そのうちの半数以上が海外の生産拠点だという。

 今回Ollo Factoryを導入した住友電装は、自動車用ワイヤーハーネスをコアに、総合自動車部品サプライヤーを目指しており、グループ106社を通じて、世界32の国と地域で事業を展開。約25万人のオペレーターが従事しているという。

 住友電装 専務執行役員 生産技術本部長の丸山哲二氏は、「カイゼンは住友電装グループの根幹であり、日々継続させることが会社の発展につながる。カイゼンに必要な分析、課題着眼が誰でも簡単にできるようになるツールがOllo Factoryであり、グローバルでのカイゼン活動の活性化につながる」と述べている。

 海外生産拠点は日本の生産拠点に比べてカイゼンが進みにくい傾向があるが、住友電装では、2023年11月からOllo Factoryをカンボジアの生産拠点に導入。先行活用した結果、カイゼン活動の促進につながる成果を確認できたという。

 具体的には、工場のカイゼン活動に動画解析を導入し、そこにOllo Factoryを採用した。従来のストップウォッチを利用した活動の分析と比較すると、約4倍の改善スピードを実現したほか、誰でも簡単にゲーム感覚で分析から改善に至るまでの着眼ができるようになったり、AIによって分析を自動実行するためスタッフごとにばらつきがあった着眼までのスキルの差がなくなったりするといったメリットが生まれたという。

 Ollo Factoryでは、生産性が悪かったり品質が低下していたりする現場を一定時間撮影するだけで、AIが自動で現場の問題点をピンポイントで洗い出すため、忙しい作業スタッフが簡単に利用できたり、高次化した着眼が可能になったりするため、現場スタッフが挙げるカイゼン提案の数や質を高めることができる。

 住友電装のカンボジアの生産拠点での先行導入においても、現地スタッフが数日でOllo Factoryの操作と分析までの手法を修得。14人の現地スタッフが、2023年11月からの半年間で、生産ラインにおいて30を超えるカイゼンを実施できたという。

 住友電装では、カンボジアにおけるOllo Factory導入によって得られた成果を踏まえて、Olloと正式契約を結び、Ollo Factoryを住友電装のグローバル拠点に展開することに合意した。カンボジアの生産拠点に続き、ほかの地域の生産拠点でも、Ollo Factoryの導入を開始している。今後はさらに導入を本格化することになる。

 Ollo 代表取締役 CEO(最高経営責任者)の川合健斗氏は、「長年にわたり世界中でカイゼン活動を行ってきた住友電装に正式採用されたことは、Olloにとって大きなマイルストーンになる。住友電装のカイゼン活動にOlloが貢献し、さらなる生産性向上を世界各地で支援する。今後は、利便性や自動分析の正確性を磨き続け、製造現場の方々に最も愛されるプロダクトを目指す」と述べる。

 また、Ollo 取締役会長の岡本浩一郎氏は、「日本の製造業の競争力の源泉は、絶え間ないカイゼンの積み重ねにある。しかし、生産拠点がグローバルに広がる中、グローバルで日本と同レベルのカイゼンを実現することは困難とされてきた。Ollo Factoryによって、AIが人の力を最大化し、日本と同レベルのカイゼンを実現することが可能になる。Ollo Factoryにより、住友電装の世界中の生産ラインで、人の力を最大化することに貢献したい」と語っている。

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