デル、AIの最新施策と環境保護も考慮した液冷サーバーを紹介
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デル・テクノロジーズは、5月に米国ラスベガスで開催した年次イベント「Dell Technologies World 2024」のメディア向け報告会を開き、同イベントで発表したAIの最新の取り組みとなる「Dell AI Factory」と、サステナビリティー(持続可能性)の観点から推進している液冷サーバーを紹介した。
今回のイベントで同社は、「Accelerate AI adoption to unlock innovation(革新を起すべくAI導入を加速せよ)」をメインテーマに据え、基調講演では創業者 CEOのMichael Dell氏ら同社の首脳陣や、同社とパートナーシップを組むNVIDIA 共同創業者 CEOのJensen Huang氏、ServiceNow CEOのBill McDermott氏、Samsung SDS CEOのSungwoo Hwang氏といったゲストが、AIの本格的な活用に向けたメッセージを発信した。
報告会の冒頭でデル・テクノロジーズ 上席執行役員 システムズ エンジニアリング統括本部長の藤森綾子氏は、同イベントに日本から170人以上の顧客やパートナーが参加し、「まさにAI一色のイベントだった」と振り返り、Dell氏が表明した「全ての企業をインテリジェンス製造カンパニーに」というメッセージの実現に向けた多数の取り組みを発表したことを説明した。
このイベントで発表されたDell AI Factoryは、同社によるAIの導入と実装支援のアプローチのフレームワークになるという。藤森氏によれば、同社ではこれからのAIがデータの生成される場所で活用されるようになると捉え、AIの多様なユースケースを実現するためには、データとAIを処理するオンプレミスを含めたインフラストラクチャー、広範かつオープンなエコシステム、AI活用を支えるサービスの3つのレイヤーが重要になるとした。Dell AI Factoryは、これらの要素を体系的に示したものになる。
Dell AI Factoryのうちインフラストラクチャーレイヤーは、同社がPCからサーバー、クラウドまでのエンドツーエンドで製品やソリューションを展開可能な領域であるとし、イベントではクライアントで「Dell AI PC」、インフラで「Dell PowerScale」「Dell PowerSwitch」、データ保護で「Dell Data Protection」などの新たな取り組みを発表した。
広範かつオープンなエコシステムのレイヤーでは、Dellのイベントに先駆けて、3月にNVIDIAのイベント「GTC」で共同ソリューション「Dell AI Factory with NVIDIA」を発表しており、Dellのイベントではその強化と、Broadcomとは高速ネットワークファブリック、Metaとはオープンソースの大規模言語モデル「Llama 3」のオンプレミスを中心とした開発環境の整備、Hugging Faceとは「Dell Enterprise Hub」を利用したオープンなAI開発環境、MicrosoftとはAI PCでの取り組みなどを発表している。
AI活用を支えるサービスのレイヤーでは、検索拡張生成(RAG)やデジタルアシスタンスなど10種類近くを示して見せた。なお、これらの一部は日本での提供が今後になる見通しだという。
報告会では、液冷サーバーの「Dell PowerEdge C6620」の実機が紹介された。同社はサステナビリティーについても多様な取り組みを推進しているとし、液冷サーバーは、例えばAIのモデル学習処理に伴う電力消費の増大という課題に対処するための1つの方策になる。
液冷サーバーでは、CPU周辺にコールドプレートを配し、人毛ほどの太さという微細な配管を張り巡らせて、配管に液体冷媒を流すことでCPUなどの廃熱を冷却する。使用する液体冷媒は、自動車エンジンに使うものと同等の成分(比率などは異なる)になり、安価で容易に調達できるようにしているという。一見して液体を使用することによる重量の増加が心配されるが、コールドプレートなどの重量は、一般的な空冷サーバーのヒートシンクとあまり変わらないといい、重量面で既存データセンターへの設置にはあまり問題がないとのことだ。
さまざまな調査で、データセンターの電力消費量は数年で数倍ペースの増加が予想され、その多くが生成AIなどの処理に伴うものと見込まれている。従来の空冷方式のままではファンを稼働させるだけで膨大な電力を使用することになるため、冷却効率に優れる液冷方式の採用が世界で一般的になりつつあり、今後国内でも同様になっていく見込みだという。