AWSの公共部門担当者に聞く、米国の教育現場におけるIT活用の広まり

今回は「AWSの公共部門担当者に聞く、米国の教育現場におけるIT活用の広まり」についてご紹介します。

関連ワード (クラウド等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 Amazon Web Services(AWS)は、公共機関に向けたクラウドサービスを幅広く展開し、政府や教育機関、非営利団体(NPO)、医療機関のミッションクリティカルな業務を支援している。AWSで米国の州政府および地方政府、教育分野を統括するKim Majerus氏に、米国の教育現場の現状と、同氏が注力する女性のSTEAM教育(科学、技術、工学、芸術、数学に力を入れる教育方針)の推進について聞いた。

–日本では、児童・生徒一人一人にデジタル端末を配布する「GIGAスクール構想」によって、教育現場のデジタル化が進んでいます。米国の教育現場におけるデジタル化やクラウド移行はどのような状況なのでしょうか。

 現在、ほとんどの米国のコミュニティーにおいて、中学校ではデジタル端末を利用でき、高等学校においてもPCや「iPad」などを導入し、どこでも利用できる状況にあります。端末上で利用するアプリケーションの幾つかは、いまだオンプレミス上にありますが、多くはクラウド環境に移行しています。

 新型コロナウイルス感染症が流行する前にクラウドを導入していた学校では学びを続けることができていましたが、ITを導入していなかった一部の学校ではパンデミック時に大きな被害を受けました。ロサンゼルスの学校では教育だけでなく、ソーシャルサービスを英語とスペイン語で提供し、対面が難しい期間でも生徒のサポートを継続していました。パンデミックの間、非常に多くの学校がクラウドの力を実感し、生徒の教育を継続することができました。

–AWSは、教育現場のデジタル化をどのようにサポートしているのでしょうか。

 当社は、生徒に教育関連のコンテンツを配信する企業をサポートしています。私たちがEdTech企業や教育者に対してITインフラの構築や、クラウド活用の機会を提供することで、彼らが生徒たちに教育を提供できます。

 ITスキルは基礎から応用まであり、生涯学習だと考えています。だからこそ私たちは無料のクラウドトレーニングを提供し、2025年までに2900万人をトレーニングするというコミットメントを打ち出しています。また、生成AIにおいても今後2年間で200万人にトレーニングを提供する予定です。

 テクノロジーが進化する中で、私たちは、人々がテクノロジーに関する学習にアクセスできるように、初等・中等・高等教育だけでなく、生涯学習としても提供したいと考えています。

–米国におけるEdTech市場がどのような状況にあると見ていますか。また、各教育現場のアプリケーション導入は進んでいるのでしょうか。

 教育市場は伝統的なマーケットで、従来のEdTech企業は、生徒に向けてコンテンツを提供してきました。しかし、スタートアップ企業も活発になってきています。それは、学習そのものの進化が激化しているからです。これまでは全員が同じ教科書を読んでいましたが、生徒によって学習の速度や方法が異なってきています。

 EdTech市場では、スタートアップ企業が進化を後押ししています。教員側は、アプリケーションやシステムなどのテクノロジーをいろいろな方法でカリキュラムに導入しているのです。そしてテクノロジーを使って、生徒の戦略的な思考力を高めたり、教育の方法を変えたりしています。

–学習の個別最適化をする上で、データの活用は重要です。一方で、情報漏えいの危険性や情報の保護というものに目を向ける必要があると思います。データ活用を促進するためには何が必要だとお考えですか。

 セキュリティが最も重要だと考えています。生徒の情報は貴重なデータです。EdTech企業は、センシティブなデータを使う時に審査をしっかり行い、情報漏えいが起きないように対策をしています。

 当社でも、2023年に9月に2000万ドルのサイバー助成金プログラムを立ち上げました。世界における教育は、情報漏えいのリスクにさらされています。というのも、オンプレミスなどのレガシー環境が一部残っているからです。私たちはそれに対して支援する必要があると考え、助成金プログラムを立ち上げ、AWS上に構築されたセキュリティツールを導入したい学校に提供しています。

 またデータは、私たちの学習方法の最善を教えてくれます。データを活用して学習スキルを高めることで、アウトプットを向上させ、成果を上げることができるのです。それによって学習そのものの効率的や迅速化を図ることができるのではないかと考えています。

–米国の教育現場におけるウェブフィルタリングなどのセキュリティツールの導入状況を教えてください。

 多くの学校がセキュリティツールを導入しています。学校と生徒自身の端末にセキュリティ体制を構築しているようです。しかし、学校によってITの導入段階は予算などで異なる状況にあります。AWSが学校と関わる際は、ウェブコンテンツのフィルタリングのリスクについて話す機会を設けています。ウェブフィルタリングはコンテンツから生徒を守ることができますが、私たちはコンテンツからの保護だけでなく、例えば危機状況にある生徒を支援するといったサービスを提供していきたいと考えています。

–これまで、女性のSTEAM教育の推進に注力してきたとうかがいました。その背景にはどのような思いがあったのでしょうか。

 私が若い時にキャリアを積む中で、女性がほとんどいませんでした。私は「見ることができれば、なることができる」ということを全員が確認することが重要だと感じています。これは、女性が活躍しているのを目の当たりにできれば、自分自身もそうなれるということです。

 私たちはIT産業に従事する女性をサポートする活動をしています。女性がIT分野でも活躍できるというところを見せたいのです。ITにおいて重要なスキルは多種多様ですが、多くのコミュニティーの女性が活躍できる場所があることを知ってほしいですし、インパクトを与えたいと思います。

–日本でも女性のSTEAM分野への進学や就職は遅れています。この課題をどのように解消していくべきだとお考えでしょうか。

 まずは教育現場から変わる必要があると考えています。STEAM分野への進学や就職する機会があることを女性に見せることが非常に重要です。テクノロジーは目に見えないからこそ、理解することが難しいです。しかし、テクノロジーの進化においてインパクトを受けていない業界はなく、どの場面においてもテクノロジーが関わっています。例えばレストランでも予約や注文にはテクノロジーがつきものですよね。

 だからこそ私は、IT企業で働く人の業務を実際に見て、体験する機会というのを、教育現場が提供することを推奨しています。教育現場やNPOなどで、女性もIT分野でキャリアを築けるということを見せる必要があるのです。

(取材協力:アマゾン ウェブ サービス ジャパン)

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