NTT研究開発部門が商用化した「連鎖型AIサービス」は奏功するか

今回は「NTT研究開発部門が商用化した「連鎖型AIサービス」は奏功するか」についてご紹介します。

関連ワード (CIO/経営、松岡功の「今週の明言」等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、NTT AI-CIX 代表取締役社長の社家一平氏と、AWS ESG & エクスターナルエンゲージメント部門責任者のJenna Leiner氏の「明言」を紹介する。

 NTTは先頃、研究開発部門が開発を進めてきた「連鎖型AI」をサービスとして提供する100%出資子会社「NTT AI-CIX」を設立し、同社の代表取締役社長に就任した社家(しゃけ)一平氏が記者会見を開いて事業概要を説明した。同氏の冒頭の発言はその会見で、社長としての意気込みを語ったものである。

 NTT AI-CIXが発足したのは8月26日。AI-CIXは「AI-Cross Industry transformation」を意味する。研究開発部門で連鎖型AIの開発を手掛けてきた社家氏をはじめ、当初30人程度の社員でスタートした。

 社家氏によると、NTTグループでは図1に示すように、AI事業としてインフラからソリューション/アプリケーションまで提供しており、今回は最上位レイヤーに位置付けられる連鎖型AIサービスを新会社で展開する形だ。

 連鎖型AIとは、「個社別AIから業界特化型AI、さらに各業界の特化型AIを掛け合わせる技術」と言う社家氏は、「これによって全体の自動化を図り、AIドリブン社会を実現できる」と説明した。その上で、「こうしたAI活用はこれまでもさまざまな取り組みが行われてきたが、個社別や業界内と比べて業界横断まではまだまだ進展していない。それを新会社でぜひ進めていきたい」と意欲を示した(図2)。

 新会社の特徴は、図3に示すように大きく2つある。

 1つは図3の左側に記されているように、連鎖型AIサービスとしてコンサルティングからAIモデル開発、プラットフォームサービスまでを一気通貫で提供できることだ。これについて社家氏は、「これまで研究開発の段階ではAIモデル開発が中心だった。しかし、実際に効果を生み出していくためには、お客さまの課題に対し、解決するために必要なお客さまのデータを使わせていただく必要がある。そうしたサービスを広めていくには、コンサルティングによってお客さまの課題を抽出し、お客さまのデータによってAIモデルを開発し、それをプラットフォーム化して横展開していけるようにすることが重要だ」と説明した。

 もう1つは図3の右側に記されているように、業務および業界の横断データを活用したサプライチェーン全体最適化を図れることだ。例えば、「小売×メーカー×物流」ではAI需要予測による商品発注の最適化を図り、「農業×物流」では卸における需給マッチングの最適化を図るといった具合だ。

 事業概要についても次の2つを挙げた。1つは、AIおよびデジタルトランスフォーメーション(DX)推進、新規事業のプロデュースだ。課題抽出、実証実験(PoC)、サービス化の開発までを提供する事業である。もう1つは、プラットフォームの展開だ。アルゴリズムをプラットフォームに集約し、プラットフォームサービスとして提供する事業である。

 社家氏は説明の最後にNTT AI-CIXの目指す姿として、「それぞれの業務や業界で使われるAI同士を連携させて情報交換できるようにすれば、全体の動きを効率化することができ、省エネや省人化をはじめ、さまざまな社会課題を解決できるようになる。そうした役目を果たしていきたい」と述べた。

 筆者の印象としては、連鎖型AIの必要性は感じるものの、その連鎖に関わるユーザーやベンダーが、全てメリットを得られるビジネスモデルを描けるかどうかが奏功のカギになるのではないか。ただ、それも社家氏の明快なスピーチを聞いていると、実現できるのではないかという気にもなった。期待して注目していきたい。

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