DX専門組織の推進事例と成功のポイント

今回は「DX専門組織の推進事例と成功のポイント」についてご紹介します。

関連ワード (DXマネジメントオフィス入門、経営等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 これまで、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進における戦略・組織/人材・テクノロジーに係る大きな方向性やフレームワークについて解説してきました。ただ、実際に全社DXを進める上で最も重要なポイントの一つとなるのは、「DXガバナンス」です。今回は、さらに一歩踏み込み、DXで全社推進を実行する際にDXガバナンスを確立する重要な5つの要素(図1参照)と、各要素を進める際のポイントについて、事例を交えて解説していきます。

 全社DXにおける戦略・組織/人材・テクノロジーに係る大きな方向性やフレームワークがいくら合理的で優れたものであっても、組織階層や部門間の関係性が複雑化すればするほど、実際の推進に当たっては、さまざまな障壁が立ちはだかります。このことを肌で感じられている読者も多いのではないでしょうか。役員、管理者層、一般社員層の全てのステークホルダーが、「DXそのものの概念」や「DXの必要性」に納得感を持った上で、協業的かつ継続的に全社DXを推進するためには、ポリシーやルールを明確に定義し、定常的に状況をモニタリングしていく、「DXガバナンス」を確立することが肝要です。DXガバナンスの確立に向けて、「情報」「プロセス」「モノ(施策)」「カネ(予算/原資)」「ヒト(組織)」の5つの要素において、ポリシーやルールを定義します。

1.DXガバナンスを実現する「情報」の一元化・モニタリング・発信

 ある総合商社は、「全社でDXを推進しているが、各事業部門で推進されているデジタルプロジェクトの進展や効果、投下されているコストなどあらゆる情報が見えておらず、DXがうまくいっているのかも分からない」という課題を抱えていました。その不透明性により、DX推進チームからは、「全社的に“DX疲れ”が発生しているのではないか」という発言さえもありました。このような状況下での課題の解決には、各事業部門が推進予定のデジタルプロジェクトをまず起案し、DX推進チームがその内容を精査し、情報を一元管理しつつ、モニタリング(プログラムマネジメント)を行い、場合によっては社内への情報発信をしていくルールを制定することも推奨されます(図2参照)。

 当該ルールの運用化については、各事業部門とDX専門組織とのパワーバランスにより成否が分かれます。各事業部門の発言力・決定権がより強い企業においては、あくまでデジタルプロジェクトの収集・モニタリングのみ行う「ソフトガバナンスの施行」にとどめることが重要です。各事業部門の方向性を軌道修正するところまでは踏み込まず、助言やアドバイスのみを行います。

 その反対に、DX専門組織の発言力・決定権がより強く、DX推進をトップダウンで行える企業においては、起案されたデジタルプロジェクトに対し、Go/NoGoを決定する「ハードガバナンスの施行」が可能となります。また、モニタリングを行う上で、非効率・低効果な推進の状況が検知・評価された場合は、プロジェクトの方向性の軌道修正を勧告、指示していきます。

 いずれにせよ、情報一元化をし、「どこで、どのようなデジタルプロジェクトが推進されており、効果や投下コストはいかほどか」について可視化し、透明性の向上を図ることが、DXガバナンス確立の第一歩となります。なお、DX専門組織がDX推進においてモニタリングすべきデータ項目は、デジタルプロジェクトの推進フェーズにより、4種に分類されます。「A.共通(常に管理すべき項目)」「B.案件起案(Qualify)」「C.案件実施/導入中(Management)」「D.導入完了/モニタリング(Evaluation)」の4種で構成されます(図3参照)。

 これらの情報を、フェーズ別に収集・分析し、自社にとってDXが効果的で実効性があるのか、迅速かつ継続的に評価し、全社DXの成功へと軌道修正しつつ、旗振り役としてサポートすることもDX専門組織の重要な責務なのです。

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