CO2回収へ一歩、アイスランド独自の火山地質は空気をろ過し二酸化炭素を貯留する技術に理想的な環境だ

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本記事は、TechCrunch様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


私たちが吸っている空気は二酸化炭素問題を抱えている。だが、アイスランドのレイキャビク郊外にある、地熱活動の活発な台地のように広がるHellisheidi(ヘトリスヘイジ)では、新しい技術がそれを修復するための小さくも力強い一歩を踏み出している。

Climeworks(クライムワークス)が建設したOrca(オルカ)というプラントは、CO2を空気中から直接ろ過し、地中に永久に貯留する世界初の施設である。

Orcaの二酸化炭素回収デバイスは巨大なトランジスタラジオのようだ。氷に覆われた山頂から日の光が差し込む珍しい日でさえ激しい風が吹くアイスランドの風景に、これらのデバイスはぴったりとフィットしている。

同プラントは2021年9月に稼動を開始したばかりだが、同社の空気ストレーナー技術は直接空気回収として知られているもので、かなり前から環境保護活動家の間で論点になっていた。二酸化炭素を吸い上げることは、かつては最後の手段と考えられていたのだが、私たちは最後の手段がなくてはならない未来に向かって進んでいるようだ。

「直接空気回収と貯留の組み合わせは、パリ気候目標に準拠することを目指す上で、世界が膨大な規模で必要とするものになる可能性が非常に高いです」とClimeworksのCEOで共同創業者のJan Wurzbacher(ヤン・ヴュルツバッハー)氏は語る。

ヴュルツバッハー氏が言及していた「パリ」目標とは、2015年のパリ協定で定められた、気温上昇を摂氏2度(理想は摂氏1.5度)まで抑えるために温室効果ガスの排出量を制限する世界目標のことだ。この目標を達成するためには、2050年までに年間100億トンの二酸化炭素を大気中から除去する必要があると国連は推定している。この数字は、他の手段によって積極的な排出削減が達成されると仮定した場合の最良のシナリオである。十分な削減がなければ、二酸化炭素除去の必要性はさらに高まるだろう。

「それはかなりシンプルな気候計算です」と、ヴュルツバッハー氏はClimeworksが拠点を置くスイスのチューリッヒからのビデオ通話で説明した。「今世紀半ばまでに、他の対策がすべてうまくいくという想定の下で、100億トンのCO2を除去する必要があります。石炭火力発電所などを十分な速さで縮小することは困難であることから、最終的には200億トン削減する必要に迫られるかもしれません」。

直接空気回収技術は、過剰なCO2を除去するための多くの選択肢の1つである。植林などの自然な方法や、煙突などの排出源から直接CO2を回収する技術もある。CO2を発生源で回収するよりも、文字通り薄い空気からCO2を回収する方が困難でコストがかかるが、直接空気回収の利点は、個々の汚染源を見つけ出したり停止したりする必要がないことである。世界中で機能するソリューションだ。

「直接空気回収を行う場合、CO2のある場所に行く必要はありません。空気はどこにでもあるからです」とヴュルツバッハー氏は述べている。

Orcaプラントはコンテナサイズの8つのボックスで構成されており、Climeworksはこれをコレクターと呼んでいる。それぞれの箱の正面には大きなベネチアンブラインドのようなスラットが取り付けられている。背面には12個のファンがあり、ボックスを通して空気を引き込む役割を果たす。コレクター内では、CO2分子は特別に開発されたフィルター材料の表面に衝突し、そこでアミンと呼ばれる分子によって選択的に吸着される。

その接点は魔法のような瞬間だ。残りの空気はコレクターの反対側から出ていくが、二酸化炭素はアミンにしっかりと付着する。その瞬間、CO2は混沌とした大気の乱れから秩序だった人類の支配へと移行し、数千年にわたって制御され続ける可能性を秘めたものとなる。熱を加えると、アミンからCO2が放出され、近くの火山岩に送り込まれて、永続的な炭酸塩鉱物を形成する。

現在、Orcaで大量のCO2を除去するにはトン当たり600〜800ドル(約6万8000〜9万1000円)の費用がかかるが、これはほとんどの潜在的な支払者にとって法外な金額だ。初期の顧客は、Microsoft(マイクロソフト)やStripe(ストライプ)、Swiss Re(スイス・リー)、さらにはバンドColdplay(コールドプレイ、近く行われるワールドツアーからの排出量の一部を相殺するためにClimeworksを採用)など、高い料金を支払うことに前向きな企業や個人となっている。

Climeworksはこのコストを100〜200ドル(約1万1000〜2万3000円)に引き下げることを目指している。US Department of Energy recently(米国エネルギー省)は最近、技術的な二酸化炭素除去のコストをトン当たり100ドル以下にするという同様の目標を設定した。このような低価格帯であれば、直接空気回収は他の野心的な排出削減策と同等になる。

 

この魔法の瞬間は、今のところ安くはないかもしれないが、少なくともうまく機能する。

「Orcaはゼロから1に進みました」とコロンビア大学のシニアリサーチフェローであるJulio Friedmann(フリオ・フリードマン)博士は述べている。「現時点で私たちは、必要に応じてOrcaをさらに製造できることを承知しています。コストが削減され、パフォーマンスが向上することなどが予想できますが、現在は1台の装置で年間4000トンのCO2を大気から回収しています」。

コストが高いことに加えて、OrcaはCO2の回収量が非常に少ないことが指摘されている。4000トンという量は、数十年以内に除去しなければならない100億トンに比べれば微々たるものである。現在の排出レベルでは、人類はOrcaの毎年の取り組みを3秒ごとに相殺していることになる。

しかし、大気中から二酸化炭素を除去する他の方法と比較して、この量を考慮することは有用かもしれない。1エーカー(約4000平方m)のセコイア林を育てることも約4000トンのCO2削減につながるが、1年をはるかに超える時間を要する上、限られた場所でしか実現できない。

フリードマン氏は、直接空気回収のエレベーターピッチを同じような言葉で表現している。「それは20万本の木の仕事を、1000倍のスペースにわたって行います」。

Greta Thunberg(グレタ・トゥーンベリ)氏のような活動家は、直接空気回収のような工学的解決策を「ほとんど実在しない技術」として退け、代わりに自然に基づく解決策を推奨しているが、両方の戦略を追求することは可能である。国連の推定が正しければ、余分な二酸化炭素を吸収するための複数の解決策の余地があるだろう。

「私たちがこれを必要とすることになれば、数十億トンものオーダーになるでしょう。私はそうなることを確信しています」とヴュルツバッハー氏は語っている。

Orcaの小さい規模に対する指摘も別の重要なポイントを見落としている。小さい規模で始めることは、独特の学習機会である。

他の技術と同様に、直接空気回収は反復によって改善され、時間の経過とともにより効率的かつ安価になる。ClimeworksのCO2コレクターはモジュール化されている。つまり、より多くのCO2を回収する方法は、コレクター自体を大きくするのではなく、その数を増やすことにある。モジュールプロダクトを使うことで、より大型の特注品に比べて安価かつ容易に繰り返し利用できる。

「当社が現在所有するプラントの何倍にもなる大型プラントや複合設備を建設する頃には、プラントが機能していること、そして私たちがいかに効果的に運用を続けているかを確信しているでしょう」と、Climeworksの技術責任者であるNathalie Casas(ナタリー・カサス)氏は語る。「これがモジュラー型アプローチの優れた点です」。

ヴュルツバッハー氏によると、より大きなプラントをすでに建設中だという。Orcaプラントの10倍の大きさになるため、コンテナサイズのコレクターは8台から80台に増え、年間4万トンのCO2回収することになる。

Orcaほどの規模のプラントを建設する利点は、コレクターの設計を8回繰り返すだけで済むことだ。

「80のコンテナを作ればまったく別のストーリーになります」とヴュルツバッハー氏。

Climeworksの中小規模のアプローチは、直接空気回収技術を商用化している別の大手企業Carbon Engineering(カーボン・エンジニアリング)とは対照的である。同社は50万トンのCO2を回収するプラントをテキサス州に建設中だが、同プラントは今世紀半ばに稼働する予定となっている。

「Climeworksは、一度に砲弾のように急速に進むのではなく、段階を踏みながらスイミングプールに入っていきます」と、二酸化炭素除去に特化した投資コンサルティング会社Carbon Direct(カーボン・ダイレクト)のチーフイノベーションオフィサーColin McCormick(コリン・マコーミック)氏は述べている。

これらのアプローチの一方または双方が、規模とコストの両面で二酸化炭素除去を達成できるかどうかはまだわからない。直接空気回収はまだ初期段階にあるが、持続可能な技術の重要な担い手の一部と類似性がある。太陽光発電(PV)パネルと風力タービンはどちらも数十年前に始まったばかりだが、今では巨大かつ成長中の産業となり、エネルギー移行の先陣を切っている。

ソーラーパネルは、理論的には可能だが商業的には証明されていないものを実現するために、新しい素材を使って作られていることから、ソーラーパネルとの比較は特に適切であろう。

マコーミック氏の説明によると、大気中の二酸化炭素を回収するのに必要なエネルギー量には最低限度があり、それはかなりのものであるが、ClimeworksとCarbon Engineeringはともにその最低値の約10倍のエネルギーを使用しているため、改善の余地は大きいという。

「効率は100%を大幅に下回っていますが、問題ありません」と同氏は続けた。「初期のソーラーパネルは効率が数パーセントでした」。

Climeworksが効率性の向上とコスト削減に向けて模索している方法は数多くある。中でも大きいのは、フィルター材を改良して、より多量のCO2回収と長寿命化を図ることである。同社はまた、モジュールユニットの建設コストを下げるために生産を合理化する方法も検討している。そして、CO2のパイプラインのような比較的固定されたコストがあり、それはプラントが大きくなるにつれて自然に減少していくことになる。

今後の技術的な課題は気が遠くなるほどのものかもしれないが、Climeworksのチームは動じない。実際、ヴュルツバッハー氏は、直接空気回収の現状は1970年代と1980年代の風力や太陽光よりもずっと有利であると考えている。

「太陽光発電や風力発電が始まった頃と比較してみると、それらはコスト削減に関連するより多くの要因に取り組む必要性を抱えていました」とヴュルツバッハー氏。「私たちが対処すべき要因がその10分の1程度であることは、実際のところ朗報と言えます」。

これらのコスト削減を実現するには、研究室やオフィスではなく、実際の環境でのみ可能な学習が必要となる。

「これはソフトウェアのスタートアップではありません」とヴュルツバッハー氏は続ける。「私たちは過酷な環境に鋼鉄とコンクリートを置いています。おそらく90%までしか予測できないような奇妙なことが起こりますが、予測できない残りの10%については学習していきますので、現場で何かを取り出すことは非常に重要です」。

Hellisheidi地熱発電所はレイキャビクの大部分と同様にOrcaにも熱とエネルギーを供給している

Orcaほど雄大なフィールドサイトを見つけるのは難しいだろう。このプラントは、草の茂った平原の端に位置し、くっきりとした白い雪で彩られた岩だらけの黒い山頂のすぐ下にある。しかしClimeworksのチームは、その風景のためにその場所にOrcaを建設することを選んだわけではない。Hellisheidiのサイトには、直接空気回収に不可欠な2つの要素がある。安価な再生可能エネルギーと、CO2を貯留する場所だ。これらの要素はいずれもアイスランド独自の火山地質の産物である。

Orcaはアイスランド最大の地熱エネルギー源の1つであるHellisheidi地熱発電所のすぐ隣に位置している。同発電所は地下1マイル(約1.6km)の深さから熱水を引いており、そこは火山性ホットスポットによって自然に暖められている。地熱プロセスは熱と電気を発生させ、どちらも直接空気回収のための重要なインプットとなる。

この電力を使って空気をコレクターに送り、その熱を利用して、フィルター材から回収されたCO2を放出する。この放出は、沸騰水の温度である摂氏100度前後で発生するものだ。

「まず第一に、地熱はとても優れています。24時間年中無休で熱と電気を供給しますので、私たちの活動に非常に適しています」とヴュルツバッハー氏は語っている。

それからCO2だ。Hellisheidiの下にある岩は多孔質の玄武岩で、100万年も経っておらず、地質学的にはかなり新しい。Carbfix(カーブフィックス)という企業が、この若い岩にCOを注入し、反応させて炭酸塩鉱物を生成する方法を考案した。

Carbfixは、地熱発電所を運営する自治体所有の電力会社Reykjavik Energy(レイキャビク・エナジー)の子会社である。同社は5年以上にわたり、地熱プロセスから排出される少量のCO2を貯留する技術を使用しており、OrcaからのCO2を貯留するインフラはすでに整っていた。

「これがOrcaがアイスランドに存在する大きな理由です」とマコーミック氏は語る。「地熱地帯からの廃熱とゼロカーボン電力を利用しています。すでに掘削済みの注入孔と、CO2を注入するための優れた地質構造を備えているため、この場所には必要なものがすべて揃っています」。

二酸化炭素の貯留は二酸化炭素除去の方程式の重要な構成要素である。多くの方法が存在するが、二酸化炭素はすぐに岩に変わるため、Carbfixの方法は特に有望だ。2年以内、あるいは数カ月以内に鉱化する可能性が高く、数千年にわたって固体状態を保つ。

「CO2はどこにも移動することはありません。基本的に、いったん地下に沈んだ後は、地下に留まり続けることがわかっています」と、Carbfixの研究・イノベーション責任者であるKari Helgason(カリ・ヘルガソン)氏は述べている。

このタイムフレームは、CO2が漏出しないことを確認するための不確定なモニタリングを必要とする、放棄された油井での貯留のような他の方法とは対照的である。

Carbfix方式のもう1つの利点は、コストをほとんど無視できることであり、特に二酸化炭素を回収するための高いコストと比較する場合に顕著である。

「純粋なCO2を受け入れる場合は、かなりコスト効率が高くなります」とヘルガソン氏。「Climeworksで行っていることは、途方もなく低コストです」。

幸いなことに、アイスランドは大部分が玄武岩で構成されているため、貯留のオポチュニティはほぼ無限に存在する。ヘルガソン氏は、玄武岩1立方キロメートルあたり1億トンのCO2を貯留できると見積もっている。

「ストレージ容量は膨大です」と同氏はいう。

この大容量ストレージが存在するのはアイスランドだけではない。Carbfixは、地質学的な二酸化炭素貯留のポテンシャルを持つ世界の地域をマッピングしたオンラインの地図帳を編集した。

HellisheidiとCarbfixはOrcaプラントで完璧な適合を果たしたが、Climeworksは今後のプロジェクトのために他の場所にもオープンである、とヴュルツバッハー氏は言及している。

「アイスランドの天候と風はそれほど完璧とは言えません」と同氏。「同じ気象条件で次の発電所を建設したいかどうか、私たちのコミッショニングチームに尋ねれば、彼らはむしろハワイやその他の火山岩が多い場所へ行くことを望むかもしれません」。

ClimeworksとCarbfixのパートナーシップは、二酸化炭素除去を成功させるために必要な共同イノベーションの一例である。同様の関係を活性化する試みとして、米国は複数の企業が協働してCO2を回収・貯留する4つの直接空気回収「ハブ」の建設に35億ドル(約3980億円)を割り当てた。この対策は、最近議会で可決されたインフラ法案の一部である。

「直接空気回収は、多くの異なるグループ間の連携として考えることが非常に重要です」と二酸化炭素除去に焦点を当てたシンクタンクCarbon180(カーボン180)の政策担当副局長Rory Jacobson(ローリー・ジェイコブソン)氏は述べている。

多くの場合、石油・ガス会社は直接空気回収プロジェクトの一部であり、通常は資金援助者の役割を担っている。Carbon Engineeringは、テキサス州でのプロジェクトでOccidental Petroleum(オクシデンタル・ペトロリアム)と提携しており、もう1つの直接空気回収会社Global Thermostat(グローバル・サーモスタット)は、米国での複数の小規模プロジェクトでExxon Mobil(エクソンモービル)と提携している。

二酸化炭素回収のスタートアップにとって、これらの大企業と協力するのは理に適っている。彼らは大きな小切手を振り出すことができ、地質学を深く理解しているからだ。しかし、このようなパートナーシップは二酸化炭素回収が継続的な汚染の煙幕であるという主張にも火をつけた。

「Orcaで真に期待できることは、プロジェクトに化石燃料が関与していない点です」とジェイコブソン氏は話す。

化石燃料産業の支援があろうとなかろうと、政府の気候政策の支援なしには、直接空気回収の規模拡大は限界に直面する可能性が高い。問題は、風力や太陽光で発電された電力のように、大気から二酸化炭素を除去する固有の市場がないことにある。直接空中回収には(これまでClimeworksを支えてきたような)自主的な購入、あるいは政府の奨励策や指針による資金提供が必要である。

「二酸化炭素除去の自主的市場は、私たちに数百万トン、おそらく1千万トン、あるいはそれ以上をもたらすでしょう」とヴュルツバッハー氏。「公共の機関は、数千万トンから数十億トンまで私たちを運んでいく必要があります」。

いくつかのインセンティブはすでに実施されている。米国には現在、二酸化炭素の回収と貯留にトン当たり50ドル(約5700円)を支払う45Qと呼ばれる政策があり、この支払いはBuild Back Better(よりよき再建)法案の下でトン当たり180ドル(約2万円)に拡大される。同法案は最近下院を通過したが、上院では保留されたままになっている。

しかし、政府が高い炭素税を課したり、あるいは産業界に急激な排出量の削減や除去を直ちに強制するような措置を講じるならば、直接空気回収の市場はかなり拡大するだろう。最近グラスゴーで開催された国連気候変動会議では、世界のリーダーたちはそのような大胆な行動を発表しなかった。それは国民の圧力と気候変動の影響の両方が強まるにつれて変わるかもしれない。いずれにしても、すぐには解消されそうにない兆候を示している。

今後、より強力な政策が実現すれば、今日よりもはるかに安価な直接空気回収技術を携えて、Climeworksの準備が整うことになるだろう。価格は依然として高めかもしれないが、何もしない場合の価格はさらに高くなる可能性がある。

Orcaプラントはレイキャビクからクルマで20分ほどのところにある

画像クレジット:Ben Soltoff


【原文】

The air we breathe has a carbon problem. But in Hellisheidi, Iceland, a geothermally active plateau just outside of Reykjavik, a new technology is taking a small but mighty step toward fixing it.

A plant called Orca, built by Climeworks, is the first-ever facility where CO2 is being filtered directly from the air and stored permanently underground.

Orca’s carbon-capturing devices resemble giant transistor radios. They fit right into an already larger-than-life Icelandic landscape, where the wind blows fierce even on a rare day when sunlight gleams off the icy mountaintops.

Though the plant has only been operational since September, its air-straining technology, known as direct air capture, has been a point of contention among environmentalists for much longer. Vacuuming up carbon dioxide was once considered a last resort, but it’s looking like we’re headed toward a future where last resorts are a must-have.

“The combination of direct air capture and storage is very likely what the world will need at a massive scale if we want to be compliant with Paris climate targets,” said Jan Wurzbacher, the CEO and co-founder of Climeworks.

Carbon removal, by math and magic

By “Paris” targets, Wurzbacher was referring to the global goal of limiting emissions to two degrees Celsius (or ideally 1.5 degrees), established under the 2015 Paris Agreement. To meet that goal, the United Nations has estimated that 10 billion tons of carbon dioxide will need to be removed from the atmosphere annually by 2050. That number is a best-case scenario, assuming that aggressive cuts in emissions are achieved through other means. Without enough cuts, the need for carbon removal could be even higher.

“It’s relatively simple climate math,” Wurzbacher explained on a video call from Zurich, Switzerland, where Climeworks is based. “By mid-century, we need to remove 10 billion tons of CO2, if everything else goes well. We might end up needing to remove 20 billion tons, because we can’t ramp down fast enough coal power plants and other stuff.”

Direct air capture technology is one among many options for removing excess CO2. There are natural methods, like planting trees, and there are technologies that capture CO2 directly from smokestacks and other emission sources. Compared to capturing CO2 at the source, it’s more challenging and costly to pull CO2 literally out of thin air, but a benefit of direct air capture is that it doesn’t require finding and stopping every single polluter. It’s a solution that works across the globe.

“When you do direct air capture, you don’t need to go where the CO2 is, because air is everywhere,” said Wurzbacher.

The Orca plant consists of eight shipping container-sized boxes, which Climeworks calls collectors. On the front of each box, there are slats, kind of like large venetian blinds. On the back, there are 12 fans that pull air through the box. Within the collectors, the CO2 molecules hit the surface of a specially developed filter material, where molecules, called amines, selectively grab onto them.

That point of contact is a magical moment. The rest of the air continues out the other side of the collectors, but the carbon sticks tight to the amines. In that moment, the CO2 goes from the chaotic fray of the atmosphere to the ordered grip of humanity, potentially remaining under control for thousands of years to come. With the application of heat, the CO2 is released from the amines, and then it gets pumped into nearby volcanic rocks, where it forms long-lasting carbonate minerals.

Currently, removing a ton of CO2 at Orca costs between $600 and $800, which is prohibitive for most potential payers. Early customers have been companies and individuals willing to pay a premium, such as Microsoft, Stripe, Swiss Re and even the band Coldplay (which hired Climeworks to cancel out some of the emissions from its upcoming world tour).

Climeworks is aiming to get that cost down to between $100 and 200. The US Department of Energy recently set a similar goal of bringing the cost of technological carbon removal to under $100 per ton. At those lower price points, direct air capture would be on par with other ambitious measures to reduce emissions.

For now, the magic moment of capture may not be cheap, but at least it works.

“Orca has gone from zero to one,” said Dr. Julio Friedmann, a senior research fellow at Columbia University “At this point we know, if we had to, we could make more Orcas. We imagine the cost will reduce, we imagine the performance will improve, et cetera, but we now have a single-unit device that pulls four thousand tons of CO2 from the air every year.”

In addition to the high cost, Orca has been criticized for the miniscule quantity of CO2 that it captures. Four thousand tons is paltry compared to the 10 billion tons that need to be removed within several decades. At our current level of emissions, humanity is canceling out Orca’s yearly efforts every three seconds.

However, it may be helpful to reframe this amount by considering it relative to other means of removing carbon from the atmosphere. Growing an acre of redwood forest also removes about 4,000 tons of CO2, but it takes much longer than a year, and it can only be done in a limited number of places.

Friedmann framed the elevator pitch for direct air capture in similar terms: “It does the work of two hundred thousand trees, in one thousand times less space.”

Activists like Greta Thunberg have dismissed engineered solutions like direct air capture as “technologies that barely exist” and have instead promoted nature-based solutions, but it’s possible to pursue both strategies. If the United Nations estimates are correct, there will be room for multiple solutions to suck up the extra carbon.

“It’s at the order of billions of tons that we will need this. I’m quite sure of that,” said Wurzbacher.

Sometimes, smaller is better

Criticisms of Orca’s small size also miss another key point: starting small is a unique learning opportunity.

Like with any technology, direct air capture can improve with iteration, becoming more efficient and less expensive over time. The Climeworks CO2 collectors are modular, meaning that the way to collect more CO2 is to add more collectors, rather than making the collectors themselves any bigger. With a modular product, it’s cheaper and easier to iterate than with one that’s larger and more bespoke.

“By the time we build big plants or multiples of what we have now, we are quite certain that it works and how we keep operating,” said Nathalie Casas, the head of technology at Climeworks. “That’s the beauty of the modular approach.”

A bigger plant is already in the works, according to Wurzbacher, though the location has not yet been determined. It will be ten times larger than the Orca plant, so there will be 80 shipping container-sized collectors, instead of just eight, capturing 40,000 tons of CO2 per year.

An advantage of building a plant the size of Orca is that any tweaks to the collector design only need to be repeated eight times.

“If you build eighty containers, it’s a whole different story,” Wurzbacher said.

Climeworks’ small- to medium-scale approach stands in contrast to that of another major company commercializing direct air capture technology, Carbon Engineering, which is currently building a plant in Texas that will capture half a million tons of CO2. That plant is scheduled to go online towards the middle of this decade.

“Climeworks is going into the swimming pool step by step as opposed to cannonballing in all at once,” said Colin McCormick, chief innovation officer at Carbon Direct, an investment and advisory firm focused on carbon removal.

It remains to be seen if one, both, or neither of these approaches will be able to achieve carbon removal at scale and at cost. Direct air capture is still in its infancy, but it has parallels to some of the heavy hitters of sustainable technology. Both solar photovoltaic (PV) panels and wind turbines started off as long shots several decades ago, but now they’re huge and growing industries at the vanguard of the energy transition.

The solar comparison is particularly apt, because the panels were working with novel materials to achieve something theoretically possible but commercially unproven.

According to McCormick, there’s a minimum amount of energy needed to capture carbon dioxide from ambient air, and it’s substantial, but Climeworks and Carbon Engineering are both using about ten times more energy than that minimum, so there’s a lot of room for improvement.

“We’re wildly off from 100% efficiency, and that’s okay,” he said. “Early solar panels were a few percent efficient.”

There are many ways that Climeworks is seeking to boost efficiency and reduce costs. A big one is to improve the filter material, so that it captures more CO2 and lasts longer. The company is also sorting out how to streamline production, so that the modular units are cheaper to build. Then there are the relatively fixed costs, like pipelines for CO2, that will naturally decrease as the plants get bigger.

The technical challenges ahead may seem daunting, but the team at Climeworks is unfazed. In fact, Wurzbacher considers the current state of direct air capture to be much more favorable than that of wind and solar in the 1970s and 1980s.

“If you compare it to where solar PV or wind started, they had to do larger factors of cost reduction,” said Wurzbacher. “It’s actually good news that it’s only on the order of a factor of ten that we have to do.”

Achieving these cost reductions requires learning that can only take place in real-world conditions, not a laboratory or an office.

“It’s not a software startup,” said Wurzbacher. “We’re putting steel and concrete in harsh environments. Weird things happen that you can only predict maybe to ninety percent, but the last ten percent you can never predict, and then you learn it, so it’s so important to get stuff out in the field.”

The Hellisheidi Geothermal Power Plant, which supplies heat and energy to Orca, as well as much of Reykjavik.

Why Iceland?

You’d be hard-pressed to find a field site more majestic than Orca. The plant sits on the edge of a grassy plain, just beneath craggy black peaks accentuated with crisp white snow. But the Climeworks team didn’t choose to build Orca in that spot for the scenery. The site in Hellisheidi offers two elements that are essential for direct air capture: cheap renewable energy and a place to put CO2. Both of those elements are products of Iceland’s unique volcanic geology.

Orca is located directly next to the Hellisheidi Geothermal Power Plant, which is one of Iceland’s biggest sources of geothermal energy. The plant draws hot water from over a mile below the ground, where it’s naturally warmed by a volcanic hotspot. The geothermal process produces heat and electricity, both of which are key inputs to direct air capture.

The electricity is used to move air through the collector, and the heat is used to release captured CO2 from the filter material, which happens at around 100 degrees Celsius, the temperature of boiling water.

“Geothermal is particularly good to start with, because it’s 24/7; it’s heat and electricity, so it’s really well suited to what we are doing,” said Wurzbacher.

Then there’s the CO2. The rock under Hellisheidi is porous basalt, less than 1 million years old, which means it’s pretty much brand new, geologically speaking. A company called Carbfix has figured out how to inject CO2 into this young rock so that it reacts to form carbonate minerals.

Carbfix is a subsidiary of Reykjavik Energy, the municipal-owned utility that operates the geothermal plant. For over five years, it had been using its technique to store the small amounts of CO2 released from the geothermal process, so the infrastructure to store the CO2 from Orca was already in place.

“This is a big part of why Orca is in Iceland,” said McCormick. “They have waste heat and zero-carbon power from the geothermal field. They have already-drilled injection holes and excellent geology for injecting CO2, so that location has everything you want.”

Carbon storage is an essential piece of the equation for carbon removal. There are many ways to do it, but the Carbfix method is particularly promising because the carbon dioxide turns quickly into rock. It mineralizes within two years—or more likely a few months—and it will remain in that solid state for thousands of years.

“The CO2 is not going anywhere, so basically once it’s underground, we know it’s going to stay underground,” said Kari Helgason, the head of research and innovation at Carbfix.

This time frame contrasts with other methods, like storage in abandoned oil wells, which requires indefinite monitoring to make sure that the CO2 does not escape.

Another benefit of the Carbfix method is that the cost is almost negligible, especially relative to the high cost of capturing carbon.

“If we receive pure CO2, it’s pretty cost efficient,” said Helgason. “What we’re doing with Climeworks, it’s ridiculously cheap.”

Fortunately, Iceland is comprised mostly of basalt, so the storage opportunities are almost limitless. Helgason estimates that each cubic kilometer of basalt can store one hundred million tons of CO2.

“The storage capacity is enormous,” he said.

And it’s not just Iceland where this massive storage capacity exists. Carbfix put together an online atlas that maps out regions round the world with potential for geologic carbon storage.

Wurzbacher noted that Hellisheidi and Carbfix were a perfect match for the Orca plant, but Climeworks is open to other locations for subsequent projects.

“What is not so perfect is the weather and wind in Iceland,” he said. “If you ask our commissioning team if they want to build the next plant in the same weather conditions, they might rather ask for going to Hawaii or someplace else with a lot of volcanic rocks.”

It takes a village to capture carbon

The partnership between Climeworks and Carbfix is an example of the collaborative innovation that’s needed for carbon removal to succeed. In an attempt to incentivize similar relationships, the US has allocated $3.5 billion for building four direct air capture “hubs,” where multiple companies will work together to capture and store CO2. The provision is part of the infrastructure bill recently passed in Congress.

“It’s really important to think of direct air capture as a partnership among a number of different groups,” said Rory Jacobson, deputy director of policy at Carbon180, a think tank focused on carbon removal.

Often, oil and gas companies have been part of direct air capture projects, usually in the role of financial backers. Carbon Engineering is partnering with Occidental Petroleum on its project in Texas, and another direct air capture company, Global Thermostat, is is partnering with Exxon Mobil on several smaller projects in the US.

For carbon capture startups, it makes sense to work with these larger companies, because they can write big checks and have a deep understanding of geology, but such partnerships have also fueled claims that carbon capture is a smokescreen for continued pollution.

“The thing that’s really promising about Orca is that there is no clear fossil fuel involvement at all in the project,” said Jacobson.

With or without help from the fossil fuel industry, direct air capture is likely to face limits in its ability to scale without support from government climate policy. The problem is that there’s no inherent market for removing carbon from the atmosphere, like there is for the electric power generated from wind and solar. Direct air capture needs to be funded by voluntary purchases (such as those that have so far supported Climeworks) or government incentives and directives.

“The voluntary market for carbon removal will bring us to millions of tons, maybe ten million tons, maybe more,” said Wurzbacher. “Public instruments will have to bring us from tens of millions of tons to billions of tons.”

Some incentives are already in place. The US currently has a policy called 45Q that pays $50 per ton for carbon capture and storage, and that payment would be expanded to $180 per ton under the Build Back Better bill, which was recently passed by the House of Representatives but remains in limbo in the Senate.

However, direct air capture will have a much bigger market if governments charge high carbon taxes or enact other measures that force industries to steeply reduce or remove their emissions right away. At the recent United Nations climate conference in Glasgow, world leaders weren’t announcing those kinds of bold moves. That may change as both public pressure and the effects of climate change continue to intensify. Neither shows signs of letting up any time soon.

If stronger policies materialize in the coming years, Climeworks will be ready, with direct air capture technology that’s likely to be much cheaper than it is today. The price will still be high, but the price of doing nothing could be far higher.

The Orca plant is a 20-minute drive from Reykjavik.

(文:Ben Soltoff、翻訳:Dragonfly)

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