KDDI、5Gスタンドアロン構成による法人向けサービスを開始
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KDDIは2月21日、第5世代移動体通信のスタンドアロン構成(5G SA)による法人向けの商用サービスを開始した。今後は仮想的に特定用途に通信帯域を割り当てるネットワークスライシングによるデジタルトランスフォーメーション(DX)向け技術の開発を加速させ、2024年度以降に5G SAの本格展開を開始する計画も明らかにした。
5G SAは、5G専用の基幹ネットワーク設備と5Gの基地局を組み合わせ、5G技術のみで通信を可能とするシステム。現在は設備を4Gと5Gで供用する5G ノンスタンドアロン(5G NSA)の構成に比べて5Gの特徴となる高速、大容量通信を実現できる。また、5G専用の基幹ネットワーク設備が機能を完全に仮想化したソフトウェアで実現していることから、柔軟で高度なクラウドネイティブな通信サービスを提供できる。ネットワークスライシングなどの新機能の実装で安定的な5Gネットワーク環境を実現できるのが特徴。従来のように有線回線が利用されていた産業分野においても5G SAを導入することで、無線化による業務効率化や低コスト化が期待できる。
KDDIでは、無人搬送機(AGV)の制御や品質管理、仮想現実(VR)といった空間仮想化技術(xR)による作業支援などが見込まれる製造分野のほか、自動運転などのモビリティー、中継や映像編集などのメディア、安全管理などのセキュリティ、遠隔診療絵などの医療、業務用通信などの公共交通といった領域での5G SAの利用を想定する。同日記者会見したソリューション事業本部 サービス企画開発本部 5G・IoTサービス企画部長の野口一宙氏は、「さまざまな業界から5G SAへの期待があり、共創や適用に向けた対話を重視。業務利用実績から共通のものをサービスメニュー化したい」などと述べた。
ネットワークスライシングは、5G SAの中核機能の1つで、ネットワークの各種リソースを仮想的に分割し、さまざまな用途に応じた独立ネットワークを仮想的に構築できる。技術統括本部 モバイル技術本部 次世代ネットワーク開発部長の渡里雅史氏は、「全顧客に1つのネットワークを平等に提供するモデルから、サービス契約に基づく特徴付けたネットワークを提供するモデルに移行する。今回の法人向け5G SAサービスは、ネットワークスライシングの提供にこだわった。ネットワークスライシングの機能で、各種産業のDXを加速させる」と話した。
ネットワークスライシングの進化は、契約で合意しているサービスの水準(SLA)に準じた性能を維持する「SLA Assurance」、ネットワークスライスの安全性や可用性を確保する「Security」、ネットワークスライス間の相互不干渉を確立する「Isolation」の3点が重要になるという。同社は、ネットワークスライスごとのSLAを担保する無線アクセスの監視・制御の仕組み「RANインテリジェントコントローラ(RIC)」を開発。O-RAN AllianceのRIC開発ワーキンググループでは議長を務めているという。
KDDIは、2021年9月に商用環境で5G SAの通信試験を開始。2月18日にはオープンソース化した5G SAの仮想化基地局の商用化を世界で初めて発表。汎用サーバーで仮想化ソフトウェアを動作させ、5Gの用途の柔軟性を実現したという。4月以降に5G SAの導入などを本格化させる。「SLAの保証はもう少し先になる。2024年度にネットワークスライシングの本格展開を開始し、5G SAで顧客のビジネス発展に貢献したい」と渡里氏。なお、個人契約者向けの5G SAの提供は2022年夏以降を予定している。
同社は、2月21日午後8時30分から、インターネットテレビ放送の「AbemaTV」で5G SAによる映像の生中継を行う。東京都渋谷区の「Abema Towers 1F」の公開スタジオから5G SA経由で映像を送信する環境を構築し、5G SA対応スマートフォンでライブ配信する。5G SAのネットワークスライシングで、映像中継用ネットワークとスマートフォンなどの視聴用ネットワークに仮想分離し、映像中継に必要な品質のための通信リソースを確保する様をライブ中継するという。
AbemaTVを運営するサイバーエージェント スタジオ設備担当の増田雄亮氏は、「ネットワークスライシングで通信回線の負荷が高い状態でも安定的に映像配信できることを実証できた。想定以上の効果があり、視聴者にも高品質な映像を届けられる。今後イベント会場でも5G SAの特徴を生かした配信をしたい」などと期待を語った。今後はスマートフォンを利用して、低遅延の映像中継や複数台のカメラの簡単な操作などができるようになり、さらに分散コンピューティング技術や低遅延性を活用すれば、全国にリアルタイム配信できる環境も簡単に構築できるという。
この日会見でKDDIは、これまでの5Gへの取り組みについても説明。同社は、2020年3月に5Gの商用サービスを開始し、現在は契約者の生活動線に則したエリア展開を進めている。また、マルチアクセスエッジコンピューティング(MEC)では、Amazon Web Services(AWS)と連携した「AWS Wavelength」サービスを2020年12月に開始した。5G環境を生かした新規ビジネスの創造に向けて「KDDI 5Gビジネス共創アライアンス」を設立し、顧客やパートナーとのコラボレーションにも取り組んでいる。
当初は屋内での定点的な利用が多かった一方、現在で業務現場の画像をクラウドに保存して別の場所に送信、活用するといった組み合わせ利用が増えているという。2021年12月までの引き合い状況では、当初に製造業が案件の40%を占め、大容量画像データ処理を用いた画像解析の人工知能(AI)ソリューション、低遅延性を生かしたAGVやロボットの自動制御などスマートファクトリー用途が目立ったという。また、最近は放送/メディア業界、サービス提供を行うサービス事業者での活用が増加しているという。
また、映像伝送技術では、2018年に国内で初めて50台の5G対応タブレットを利用したスタジアムでの4K高精細映像の同時配信に成功した。2019年には、5Gを活用して「J SPORTS」を4Kで生中継した。その他にも高画質圧縮技術によるリアルタイムコーデック技術、世界最高水準の50ミリ秒の低遅延映像伝送も実現。これらに5Gネットワークを組み合わせることで、4K映像での機体整備作業の遠隔支援を行ったり、AI分析を用いた遠隔自動警備を行ったり、低遅延映像伝送による自動運転車両の監視と緊急制御を実現したりといった成果がある。「5Gによる映像伝送をさまざまな産業で活用し、新たな価値を創出していきたい」(野口氏)という。