開発者の技術選択が企業戦略に与える影響–導入ツールが招く意図せぬ結果

今回は「開発者の技術選択が企業戦略に与える影響–導入ツールが招く意図せぬ結果」についてご紹介します。

関連ワード (ソフトウェア開発の新たなトレンド、特集・解説等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 Twilioの有名な「Ask Your Developer」(自社の開発者に尋ねよ)という看板広告と、同社最高経営責任者(CEO)のJeff Lawson氏による同名の書籍は、開発者と勤め先の企業の新しい関係について、多くのことを示している。クラウドとAPIエコノミーによって、企業は新たなイノベーションを「サービスとして」利用できるようになった。だが、決済プロバイダーの変更から、クラウドやデータベースのプラットフォームの選定、さらにはクラウドに移行するレガシーアプリケーションの決定まで、開発者によるテクノロジーの選択は、企業に長期的な影響を与える可能性がある。

 企業側が、どのデータベースやプログラミングフレームワークを使うか厳密に指定しているつもりでも、開発者の選択が技術的負債の一部となり、企業が長年にわたり対処しなければならなくなっている。顧客データベース、ウェブサイト、Eコマースシステムに使用するテクノロジーに関して、下された決定が個別に見れば妥当だったとしても、顧客向けの主要サイトをサポートされていないスタックで運用することになる可能性がある。

 「PHP」コードは広く使用されているが、一方で多くの人に嫌われている(2021年のStack Overflow開発者調査では嫌いな言語ランキングの9位)。一部の代替言語よりメンテナンス性が低いにもかかわらず、開発者が習得と展開の容易さを理由にPHPを選んだせいで、それから何年も経っても同言語をサポートしているという場合もあるだろう。

 近年では、開発者が以前よりもさらに簡単にそのような選択をするようになり、それが意図せぬ結果を招き、開発者が構築する特定のアプリケーションから波及する形で、ビジネスに影響が及ぶことがある。物理的な製品と一緒に販売するサービスを追加する場合であれ、デバイスにスマート機能を組み込んで洗練させ、顧客への価値を高める場合であれ、あらゆる組織が効率性と生産性の向上のために進めているデジタルビジネストランスフォーメーションに取り組む場合であれ、開発者が構築するものは企業が実際に行うことの重要な一部だ。

 クラウドサービス、API、エンタープライズグレードのオープンソースプラットフォームの登場により、どんな開発者でも、「PlanetScale」のアカウントを作成すれば、GoogleがYouTubeを運用しているプラットフォームと同じものを使えるようになった。また、「Azure Cognitive Search」を使用すれば、「Bing」を支えるAI検索エンジンテクノロジーを利用できる。しかし、その一方で、開発者が選択をする際の基準が、利便性、親しみやすさ、個人の生産性、面白そうなものになる可能性があり、事実上、その決定によって企業のテクノロジー戦略が設定されてしまう。

 クラウドサービスは、個々の従業員の間で話題になって取り入れられ、採用が拡大していき、企業がすべての経費請求を個別に処理するのではなく、シートを購入するようになることに依存している。それは顧客データをSalesforceに移行したいマーケティングチームかもしれないし、テストVMのAWSへの配置、アプリでのマッピングサービスの呼び出し、または単純にクラウドでのIDEの使用を求める開発者かもしれない。

 Amazonが自社のAWSの顧客と競合するという懸念は少々誇張されているかもしれないが、規制対象の業界の企業は、それらのクラウドサービスの場所について考える必要がありそうだ。また、最近のクラウドの障害を考慮すれば、利用中のクラウドサービスが適切なジオレプリケーション戦略を採用してレジリエンスを確保しているかを、すべての組織が把握しておく必要がある。

 APIの機能は多岐にわたり、通話の発信、電子メールやFacebookメッセージの送信から、画像認識、文字起こし、車両識別番号(VIN)による車の仕様の確認、サプライヤーへの支払いまで、ほぼどんなことでもできる。

 多くの組織は、決済処理業者、モバイル通信事業者、その他のサービスプロバイダーと、中央請求や予算などに関する取り決めをしている。開発者がStripeの決済APIをアプリケーションに追加する場合や、IoTデバイス用のTwilioのSIMカードを注文する場合、アプリサインイン用の認証APIを選択する場合、あるいはドキュメントワークフローでの承認のために電子署名APIを呼び出す場合、こうした企業向けサービスの詳細を把握していないだろう。

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