DX推進の“自分事化”を目指す–三井不動産、全社員対象のDX研修「DxU」

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 三井不動産は4月4日、約1700人の従業員全員を対象としたデジタル変革(DX)研修「DxU(ディー・バイ・ユー)」の実施を発表した。同社は2018年に策定したグループ長期経営方針「VISION 2025」の3つのビジョンの1つとして、「テクノロジーを活用し、不動産業そのものをイノベーション」を掲げており、不動産を「モノ」としてではなく、ハードとソフトの合わせ技で「サービス」として提供する「Real Estate as a Service」を標ぼうしている。同社はDxUの取り組みを通じて、DXの基礎から応用の知識を持つ約300人のスペシャリストを2022年度末までに、DXの実践能力を持つ約100人のマスターを2025年度末までにそれぞれ育成する。

 DXの波があらゆる業種に訪れている。総合デベロッパーである三井不動産も例外ではなく、自社のDX推進の注力テーマや成果、推進事例をまとめた「DX白書2022」の中で、代表取締役社長の菰田正信氏は、不動産業を取り巻く環境は、今まで以上にライフスタイルやワークスタイルの多様化が進み、デジタルとリアルの融合と選別がより一層求められる時代になる。顧客視点の価値を明確にすること、価値提供のために必要なデータとデジタルを明確にすること、リアルとの最適な組み合わせを考えることが必要だと言葉を寄せている。

 DX本部DX二部長の塩谷義氏によると、同社のDX戦略が本格化したのは「ワークスタイリング」「&mall」などのDXプロジェクトの開始、IT技術職掌の設立があった2017年以降という。2020年に設立されたDX本部の所属員は現在110人を数え、約7割をIT系人材が占める。その活動としては、同社の事業変革と働き方改革を実現するためのDX推進支援に加え、提案者自らが事業責任者となる事業提案制度「MAG!C」でも提案者と一体となってプロジェクトを推進してきた。新規事業領域において、直近ではシェアリング商業プラットフォーム「MIKKE!」などを展開している。

 DxUについて、DX本部DX二部 企画グループ 主事の新谷大喜氏は、「われわれは(DXにまつわる事象を自身の課題だと捉える)“自分事化”の必要性を感じてきた。全従業員に(DX推進の自覚を)持ってもらうことを意識している」と説明する。人事部人材開発グループ長の南谷誠氏も「ITやDXは専門人材が取り組む領域だと思われがちだが、もうそういう時代ではない。単なる業務の効率化・省力化・精度向上だけでなく、潜在的な需要を技術で具現化するアートシンキング(ビジネス課題を芸術家視点で解決する手法)も必要だ」と語った。

 DxUは現在、従業員の習熟度に合わせて「ビギナー」「トレーニー」「スペシャリスト」「マスター」の4段階に分かれている。研修プログラムでは「DX概論」「顧客志向」「デジタル技術理解」「データ活用」「プロセス効率化」「プロジェクト管理・運用」の6つを重点的に学ぶ。

 研修は2022年1月に始まっており、ステップ1のビギナーはDXに関する意識や知識を育成するため、動画視聴や自社の「DX白書」を教材として学習する。動画は1本当たり2時間程度だが、「時間を確保できないと嘆く従業員も多い。3月末が受講締め切りだったが、駆け込みがとても多かった」と南谷氏は振り返る。それでも期末時点の進行状況は90%超に達した。

 DXに取り組む中で起きた変化の一つとして、南谷氏は「(2017年に開始した)『&mall』以前は電子商取引(EC)サイトを『三井ショッピングパーク』などリアル商業施設の競合相手と捉えていたが、それ以降は『共存共栄していく存在』という発想に変わったのは大きい」と語る。

 2022年度末までの受講完了を目指すステップ2のトレーニーは、インターネットを利用したeラーニングや独自研修を用意。南谷氏によると、「(現時点での)アンケート結果は概ね好評。外部講師やDX本部長の講演を通じて、DXに対する意識の向上を図れた」という。

 他方で学習コンテンツの作成は試行錯誤が続いているようだ。「現場研修をはじめ人材育成はOJT(On-the-Job Training)を重要視している。なぜならデベロッパーが創り出すものは、一つとして同じものがないため。時代が変われば求められる街のあり方も変わるため、マニュアルというものがない」(南谷氏)。そのため、ステップ3のスペシャリスト以降については、事業部+DX本部混成のチームでデータ活用による成果創出を目指す「データブートキャンプ」などの既存プログラムに加えて、外部研修への派遣などの新たなプログラム作りに今後段階的に取り組むという。

 同社はDX人材の採用も強化している。南谷氏は「これまでデベロッパーは、保有するアセット内容が重要視されてきたが、今後はモノの価値ではなく、総合的なサービス提供力が企業価値になる。従業員の多様なアイデアを具現化するためにも、人的資本への投資を今後さらに注力したい」と強調した。

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