富士通、ローカル5Gの取り組みの現状を説明–本番運用も徐々に
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富士通は8月9日、「ローカル5G」(自営型の第5世代移動体通信システム)の取り組みに関するメディア向け説明会を開催した。用途やそれに対応するソリューション開発やパートナーとの連携が進み、企業顧客での本番運用も徐々に広がっているという。
5Gには、主にNTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルが全国的にサービスを提供する「キャリア5G」とローカル5Gがあり、ローカル5Gでは情報通信機器メーカーやITシステムインテグレーター(SIer)、行政機関、インフラ企業などがエリアを限定して自前の5G設備で通信を行う。例えば、工場の敷地内を通信エリアとして生産設備に関するデータなどを送受信する。5Gは、大容量、高密度、超低遅延の通信が特徴で、Wi-Fiに比べて混信などのトラブルも極めて少ないことから事業用途を中心にさまざまな活用方法が検討されている。
富士通は、2020年3月に全国で初めてローカル5Gの商用サービスを開始したほか、神奈川県川崎市にある同社施設「新川崎テクノロジースクエア」に「FUJITSU コラボレーションラボ」を設置。パートナーとの取り組みとして「ローカル5G パートナーシッププログラム」を展開している。
説明会では、まずグローバルソリューション ネットワーク&セキュリティサービス事業本部 5G Vertical Service事業部長の森大樹氏が、同社におけるローカル5Gの位置付けを紹介した。
森氏は、同社の事業目標としてデジタルトランスフォーメーション(DX)による「サステナビリティートランスフォーメーション」(持続可能性への変革、SX)の推進を掲げており、それにはデータとデジタル技術が重要になると説明。デジタル技術として現実世界とサイバー空間が融合する技術、人間中心のネットワーク技術の2つを挙げ、現場業務のデジタル化による新しい働き方の実現、障害を持つ人々への遠隔支援、メタバースなどを活用したリアル/デジタル融合のコミュニケーションなどを目指しているとした。
ローカル5Gは、こうした目標を実現するための重要な技術の1つとしている。ローカル5G活用の取り組みでは、同社の横浜データセンターにおける安定運用と省人化に向けた実証や、FUJITSU コラボレーションラボと栃木県の同社那須工場における実証環境の拡充などがあるとした。また、人工知能(AI)による映像解析と仮想現実(VR)などの空間技術、ロボットの組み合わせによるデジタル/リアル空間の融合、ローカル5Gを含めた高度なネットワーク、同社とビジョンを共有するパートナー企業のTISとの研究開発の協働やマーケティング活動があるとしている。
また、グローバルソリューション ネットワーク&セキュリティサービス事業本部 5G Vertical Service事業部 シニアディレクターの上野知行氏が、FUJITSU コラボレーションラボにおけるパートナー連携などの取り組みも説明した。
FUJITSU コラボレーションラボは、業界などの垣根を越えた5G活用サービスの創出を目的に、2020年に開設された。先述のローカル5G パートナーシッププログラムでは、「接続検証プログラム」と「ソリューション共創プログラム」を実施し、現在は30社がパートナーとして参画。上野氏によれば、通信だけでなく映像AIやエッジコンピューティング、クラウドのエンジニアも常駐して、さまざまなソリューション開発を日々行っており、これまでに164件の概念実証(PoC)を検証したという。
パートナーとの活動例では、画像解析技術などを手掛けるアキュイティーと映像AIやローカル5Gを組み合わせた高精細映像データからの人物、物体、エリア検出技術の開発に取り組み、さらにはAIによるセンシングや位置検出の技術も組み合わせて、工場内などにおける無人搬送車(AGV)の高精度な制御技術の開発を進めている。ここでは日本マイクロソフトとも連携し、「Azure IoT Edge」も組み合わせて映像解析などをエッジ環境とクラウドで効率的に処理する仕組みを実現している。
この他に、トレンドマイクロとは高セキュリティのSIMやネットワークセキュリティ技術など組み合わせたローカル5Gのセキュリティ対策ソリューションを開発し、既にサービスとして提供している。KDDIとはリアルとサイバー空間を融合されたサービス開発を進めており、実店舗とオンライン店舗の顧客が商品購入などの体験を共有し合えることができるようになっている。
上野氏は、今後こうしたパートナーとの取り組みを広げていくとともに、オープンにもして行くことで、SXの実現を推進していくと語った。
なお、説明会後の質疑応答では、報道陣から「ローカル5Gの話題が乏しく事業性は厳しいではないか」「キャリアが提供する5Gの閉域網サービスも十分ではないか」といったローカル5Gの将来性に疑問を呈する質問が続出。これらに対して森氏は、「2021年後半から顧客と本番利用に向けた検討が本格化しており、一部で商用提供が始まっている。確かに登場時は期待で非常に盛り上がり、現在は静かな印象なのかもしれないが、顧客は現場でデータやテクノロジーを活用したいというニーズが強まっており、ローカル5Gを含めた最適なソリューションを提供していくことが大切」と応じた。