「企業の共通課題が見えてきた」–オラクルのクラウド営業部隊が語る、現在地点
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日本オラクルは9月30日、同社の営業組織「Oracle Digital(オラクル・デジタル)」によるクラウド事業の最新動向について、記者説明会を開催した。
Oracle Digitalは2017年に発足し、ミッドマーケット(中規模法人顧客)を対象に、「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)といったクラウド製品の提案を通して企業の変革を後押ししている。現在は企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)と、デジタルネイティブな企業の競争力強化を支援。デジタルネイティブな企業について同社は、「元来デジタルの製品やサービスを提供している企業」と定義する。同組織は全国の企業をターゲットとし、数万社に自社のソリューションを提供している。
説明会に登壇した日本オラクル 理事 オラクル・デジタル統括の中村庸介氏は、Oracle Digitalの特徴として、製造、流通、金融、通信など、一人の営業社員がさまざまな業種の企業を担当していることを挙げた。その中で、同組織のメンバーは企業の規模や業種を超えて存在する「共通の課題」を認識するようになり、課題の解像度が徐々に上がってきているという。「共通の課題を解決するため、どのようなソリューションを提供するかということに、われわれは今一番関心を持っている」と中村氏は語った。
企業におけるDXの支援では、企業が行っている取り組みがたどり得る「バッドストーリー」を提示し、それを避けるためのソリューションを提案している。例えば企業は近年、DXに向けて自社のITガバナンスを強化する、そのためにクラウド化して内製化を進める、といった取り組みをしている。
だが、そこにはベンダーロックイン(特定ベンダーへの依存)でコストが高止まりしてしまう、ワークロードが不十分で本来やりたかったことができない、簡単に使える製品を採用することで、結果として社内にITスキルが蓄積されない、などの恐れがある。こうしたバッドストーリーに対してOracle Digitalは、OCIによるコスト・性能・セキュリティの最適化や、マルチクラウドによるITガバナンスの強化などを提案している(図1)。
デジタルネイティブな企業における競争力強化の支援には、トップライン(売上高)ではなく利益を重視するようになってきている企業の動きが密接に関係している。以前は、自社サービスのシェア拡大に向けて開発の生産性を追求する傾向があったが、その結果コストの高止まりや経営視点での技術選定力不足などが課題となっていた。最近の株主や投資家も利益や継続的な成長性、不確実性に対応できる力などを重視しているという(図2)。「こうした背景により、コストと性能のバランスが取れた当社の製品が再注目されている」と中村氏はアピールした。
だが、他社製品からの完全な移行は顧客にとってハードルが高い。これに対し、中村氏は「マルチクラウドへの対応力」を強調。従来のマルチクラウドでは、高額なデータ転送料やクラウド間の遅延が課題となっている。一方、OCIを核としたマルチクラウドでは安価な転送料と低遅延を実現するという。
Oracleでは「オンプレミスとクラウドが0対100になる日は来ない」という考えから、オンプレミスとクラウドの併用を想定してデータの転送料を安く抑えていたが、他社のクラウドと連携させる際にもその仕組みを適用することで低価格を可能にしている。また、2020年5月から「Oracle Cloud」の東京リージョンと「Microsoft Azure」の東日本リージョンを相互接続しているため、Microsoft Azureとの連携では遅延時間をオンラインゲームのプレーにも耐えられる2ミリセカンド(0.002秒)未満にまで抑えている(図3)。
「マルチクラウドは運用が大変」という顧客の懸念については、「一つの課題である」と中村氏。だがOracle Digitalは、パートナー企業がマルチクラウドの運用を引き受け、複雑さを解消する取り組みを進めている。
近年は3桁成長を達成しているというOracle Digitalだが、設立時はゼロベースからのスタートだった。「私がOracle Digitalに異動した2018年頃までは、お客さま先に行くと『オラクルさん、クラウドやっているんですか』と言われることも多かったが、2019年にOCIの東京リージョンができたあたりからだいぶ風向きが変わり、最近は年間1000万円レベルの契約も増えてきている」と中村氏はこれまでの道のりを振り返った。