非正規社員のアイデンティティー管理–組織コラボレーションを加速する・前編

今回は「非正規社員のアイデンティティー管理–組織コラボレーションを加速する・前編」についてご紹介します。

関連ワード (セキュリティ等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 高齢化が急速に進む日本は、既に総人口の約3割を65歳以上が占めています 。これに伴い人手不足が加速しており、帝国データバンクの調査によると、52.1%の企業が正社員不足に直面しています。特にインバウンド需要が好調な旅行業では75.6%、エンジニア人材の不足が目立つ情報サービス業では72.9%が不足し、人手不足の傾向が顕著です。

 こうした背景から政府は、企業の生産性向上を目指して人材の流動化を後押ししており、2023年には貴重な労働者の賃金改善に向けた指針がまとめられました。大手企業の中途採用率も過去最高水準に達しており、雇用の流動性は確実に高まっています。また、大企業やプロフェッショナルサービス企業では、外部のコンサルタントやパートナーを活用することで、自社の労働力の補完や業務規模の拡大、柔軟性や競争力の向上を実現しています。

 ここでは2回にわたり、社内外の協力者とのコラボレーションが加速する中で、企業はいかにして自社の大切な情報を漏えいのリスクから守りながら、多様性に富んだ組織へと変革していくことができるのかについて、「アイデンティティーガバナンス」の視点から解説します。

 まずはアイデンティティー管理について解説しましょう。ここで言うアイデンティティーとは、人またはマシン、ボット、サービスなどのエンティティーと、それらに付随する該当情報としてのセキュリティ情報(アクティブか停止中かのステータスやアクセス権限など)、組織内の現在の職位などのステータスを含む要素の集合のことです。

 業務システムの数が限られていた時代には、アクセス権限の管理が個々のシステム単位に任されていました。そのため、システムにログインするためのアカウント情報のみを集約し、社員番号のようなIDでひも付けをして管理するマスター管理のような仕組みを「ID管理」として構築するケースが多くありました。当時は、システムの数自体が少なく、システムの追加や変更がそれほど頻繁に発生しなかったため、この方法でも大きな問題はありませんでした。

 しかし、クラウド化が進んだことで、企業が利用する業務システムの数は大幅に増加し、システムの入れ替えの頻度も高まりました。さらに、システム間連携の技術も変化し続ける中で、変化への対応を前提としていないID管理には限界が来ています。つまり、変化を前提としたシステムとしてID管理を構築し直す必要が生じてきたのです。

 ここでID管理と聞き、シングルサインオン(SSO)、多要素認証(MFA)などのIdentity as a Service(IDaaS)製品を思い浮かべた方もいるでしょう。これらは、クラウド化した複数の業務システムへの安全で便利なログインをサポートするものです。業務システム側へのプッシュ型の片方向のみの連携では、変更がアイデンティティー管理システムに反映されないため、全てのアイデンティティーを漏れなく可視化できず、セキュリティとして万全ではありません。

 コンプライアンス順守の要請やサイバーセキュリティ対策のためには、それぞれが異なる多数の定義で管理されているアクセス権限を、企業全体として整合性のとれた形で一元的に管理し、企業のセキュリティ基盤を強化する必要もあります。これらの背景から必要となってきたのが、アイデンティティーガバナンスです。

 アイデンティティーガバナンスは、全てのシステムから多様なアイデンティティー、多数のアカウント、膨大なアクセス権限を集約し、企業内システムやクラウドシステムと双方向で情報更新をしながら、企業全体で整合性のとれたアイデンティティーおよびシステム利用権限の統制を行う概念です。現代の企業には、アイデンティティーガバナンスの考え方を取り入れたアイデンティティー管理が必要なのです。

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