第57回:経理システムに触れないひとり情シス
今回は「第57回:経理システムに触れないひとり情シス」についてご紹介します。
関連ワード (「ひとり情シス」の本当のところ、運用管理等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
中堅中小企業のIT担当の方々によると、半数以上が社内の経理/会計システムや、統合基幹業務システム(ERP)などの基幹システムには関与していないそうです。それらのシステムを稼働させているサーバーやクラウドなどのインフラ環境はもちろん、依頼するベンダー選定にも関与していないことが多いようです。
情シスとは情報システム部門の略称ですから、社内のIT機器や業務システムに関するもの全てを管理するのが組織のミッション(使命)です。しかし、中堅中小企業の情シスの場合は少し異なります。情報システム部門の広範な業務を1人で担当するひとり情シスが多く、PCのサポート業務をメインにITベンダーへの取次なども対応する「ひとりヘルプデスク」状態も少なくありません。
昨今、経営者がIT活用を率先することがとても重要だと誰もが認識していますが、リーダーシップがあまりに強すぎると弊害も出てきます。昔からIT業界では、社長を招待して高原のロッジなどでセミナーを行い、激動の世の中におけるITの重要性を缶詰状態で説きます。これは1970年代頃のオフコン(オフィスコンピューター)を販売していた時から取られた手法であり、会社の意思決定者である社長に直接購買を促すものです。
今でもこの流れが続いている部分があります。良い方向に進むのであれば問題ありませんが、システム選定にIT担当者が関与していない状態では、後でいろいろなトラブルにつながる恐れがあります。どう見ても古いアーキテクチャーのシステム設計を提案されたり、既存システムとの親和性が著しく低かったり、仕様検討の準備や期間が甘かったりなど、今後のトラブルが予見されるような事柄が多くあります。
情シスはそれまで蚊帳の外だったこともあり、経営層にいきなり意見するのも気が引けるため、見て見ぬふりすることも多いかもしれません。しかし、プロジェクトの進行が予定より遅れたり、希望する機能が実装されなかったりすると、突然IT担当者が尻拭いさせられることがあります。
中堅中小企業であっても参謀格に位置付けられているひとり情シスの方々は、経理/会計システムや基幹システムにも関与しています。極端なことを言えば、彼らは社員の給与をいつでも確認できる立場になっています。しかし、その立場にたどり着くまでは、PC関連のサポートを中心にしたひとりヘルプデスクとして奔走してきたそうです。そして、経営層を相手に、基幹システムの問題点を何度も指摘したり、ビジネスに役立つデータを提供したりして、徐々に信頼関係を積み上げていきました。
中堅中小企業においても社員の定着は長年の課題です。情シス担当者が辞めてしまうことも問題となっています。そのため、企業も採用活動を慎重に行い、細心の注意を払って社員の定着を期待しています。経営層は、新しいIT担当者にERPをはじめとする企業の重要な業務を担うシステムにも早く関わってほしいと思いつつも、会社の風土になじむまで社内の重要なデータにアクセスさせるのは気が引けると言います。経営層とIT担当者が対話などを通じで良好な関係を築いていってもらいたいと思います。
「石の上にも三年」の意味を「冷たく固い石の上で我慢せよ」と文字通り受け取ると、全く時代にそぐわないものです。単なる我慢に徹するのではなく、ユーザー部門のITリテラシーを高めたり、社内のIT環境を整えたり、自身に足りないスキルを身に付けたりといった意味合いで考えると、むしろ3年間では短すぎるのではないでしょうか。