第62回:ひとり情シスのワンマン社長との付き合い方
今回は「第62回:ひとり情シスのワンマン社長との付き合い方」についてご紹介します。
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IT全般を主管する情シス責任者として中堅中小企業へ転職する傾向が強まっています。20年ほどITベンダーに所属して顧客と接してきたシステムエンジニア(SE)が、将来はユーザー企業に転職して思う存分ITを活用してビジネスに貢献したいという流れは、デジタル化を求める中堅中小企業にとって朗報です。
大企業から中堅中小企業への転職では、大企業風を吹かせ過ぎて嫌悪感を持たれたり、説明するだけで自分では何一つできないことが露呈したりするなどの失敗話が一般的によくあります。情シス部門も含めた全ての部門に当てはまることですが、多くの中堅中小企業でこのような失敗経験が必ずあると思われますので、採用面接では十分に吟味していることでしょう。そのため、転職におけるこのようなアンマッチは減少していると考えられます。しかし、これは簡単に解消できる問題ではありません。
中堅中小企業にワンマン社長が多いことはよく知られていますが、その付き合い方に予想外に手こずることがあります。採用面接の時はそれほど社長のワンマンさを感じなかったが、入社してみると全く異なる性格だったと分かり、数カ月で退職するケースもあるほどです。自社に合わないスタッフが早く辞めるのは双方にとっても良いことだと思いますが、アンマッチの結果は双方にとって無駄です。このような問題を防ぐには、入社前にできる限り面談することでアンマッチのリスクを減らすしかないでしょう。
とはいえ、社長の独裁的なやり方は潜在的な性根の問題であり、すぐには現れないこともあります。入社当初はとても気が合い、社長とひとり情シスのそれぞれを保有する能力やスキルを補完し合って高い信頼関係を持てることも少なくありません。また、ITベンダーで厳しい顧客に対応した経験を持つ方は打たれ強くなっているため、少々のことではへこたれないものです。社長の指示が日によって変わっても「前職の大企業でも同じような上司はいたな」と考えたり、感情的な発言やパワハラめいた言葉にも「そういう人もいるな」と受け流したりすることができます。そうして、今まで実現できなかったITプロジェクトを首尾良くまとめたりすると社長もとても喜び、社内も明るい雰囲気になります。
こうなると万事うまくいっているように感じるものです。ところが、ある瞬間から不協和音が鳴り出すことがあります。それは3年や5年たってからのこともあれば、20年を超えてからのこともあります。例えば、セキュリティ施策を説明している時です。情シスとしての誇りをかけた強い進言がワンマン社長のかんに障ることがあります。また、コストメリットを出すために今まで取引のあったITベンダーを情シスが1本化しようとしたことにワンマン社長が癒着を感じ、ベンダーの変更を突然指示することもあるようです。
ワンマン社長とうまく付き合う方法はあるのでしょうか。社内の全ての問題はコミュニケーションに起因するとも言われるので、社長とよく話をしていればいいのかもしれませんが、簡単にはできないものです。またうまくいっていても、いきなり袂を分かって刃を向ける武将は洋の東西を問わず存在します。例えば、明智光秀や源義経は有能な武将ですが、無残な最期を遂げました。現代でもワンマン社長によって同じようなことが繰り返されているかもしれません。
筆者の尊敬する人の中に、創業家出身の社長の片腕として最高情報責任者(CIO)を務めた方がいます。ある時、どうやって社長とうまく付き合ってきたのかを聞いてみると、「ステークホルダーマネジメント(利害関係者を管理すること)の一つだと思えばいい。顧客やパートナーも突然関係が悪化するし、思うようにはならない。常に良好な関係を築く必要がある。何で社長だけ自分の思う通りに動いてくれると思うのか。変化の兆候やリスクを察知することは企業幹部の最低条件だ」と教えてくれました。当たり前といえばそうかもしれませんが、これを上回るアドバイスをまだ知りません。