マイクロソフトが量子コンピューターで一歩前進–量子チップ「Majorana 1」の可能性と課題
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Microsoftの量子コンピューティング科学者たちは、長年の目標であった「トポロジカル量子ビット」の構築に成功したと発表した。これは、量子コンピューティングの進歩に大きく貢献する可能性を秘めており、通常のチップに搭載されているトランジスターに相当するものである。
この量子ビットは、「Majorana 1」と呼ばれる量子チップの核となる要素であり、過去20年間に発見された粒子と反粒子の両方の性質を持った「マヨラナ粒子」を利用している。
Microsoftの量子ハードウェア責任者であるChetan Nayak氏は、ブログ記事の中で「Majorana 1は、実用的な量子コンピューティングへの変革の飛躍を示すものだ」と述べる。
ただし、Microsoftの今回の成果については、注意深く見守る必要があるだろう。
実際、同社の主張には懐疑的な見方もある。Nature Magazineに掲載された同社研究者による技術レポートでさえ、その真偽について疑問を呈する内容が含まれている。
Majorana 1は、コンピューティングの分野においては、ベータ版はおろかアルファ版にすら満たないものである。「スケーリング」と呼ばれる技術を用いて量子ビット数を増やし、拡張できるようになるまでは、実用的な作業を行うことはできない。
トポロジカル量子ビットは、材料科学における特定のブレークスルーを利用するという点で、他の量子デバイスとは一線を画している。
マヨラナ粒子は、粒子と反粒子の両方の性質を持つ粒子であり、研究者によって2012年にその存在が確認されるまで、数十年間仮説として存在していた。Majorana 1という名称は、この粒子の重要性を示している。
Microsoftは、量子ビットの取り組みの根幹にフェルミ粒子を据えている点で、他の量子コンピューティング研究者とは異なるアプローチをとっている。同社は、トポロジカル量子ビットが他の量子マシンよりも「デジタル」であるため、最終的な量子デバイスとして非常に有望であると主張している。
これまでの量子コンピューターでは、量子ビットの出力を測定するために、水の流れのような連続的な変数を測定する必要があった。しかし、トポロジカル量子ビットは、本質的に2つの電気状態を交互に切り替えるため、測定が容易であるという。この測定の容易さについては、Microsoftのチームが「arXiv」プレプリントサーバーに投稿した別の技術論文で詳しく解説されている。
Microsoftが今回発表した要素は、現時点ではほぼ全てが理論的なものであり、実証されているわけではない。トポロジカル量子ビットの存在自体も、直接観測されたわけではなく、推測の域を出ないため、注意が必要である。
Microsoftの科学者たちは、Natureに掲載された技術論文で、Majorana 1内でトポロジカル量子ビットを間接的に測定したと主張しているが、同デバイスについて説明を受けた一部の科学者からは疑念の声が上がっている。
論文の筆頭著者であるMorteza Aghaee氏と数十人の共同研究者は、Majorana 1をインジウムヒ素とアルミニウムでできたコンピューターチップであると説明している。同チップは、量子ドットに反応を引き起こすナノワイヤーの集合体として作られ、トポロジカル量子ビットへとつながる。
トポロジカル量子ビットの存在は、光線の交点を用いて量子ドットの「パリティー」を測定する干渉計によって確認される。