富士通、データ&セキュリティ領域の新研究拠点をイスラエルに開設
今回は「富士通、データ&セキュリティ領域の新研究拠点をイスラエルに開設」についてご紹介します。
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富士通は11月28日、データとセキュリティの各領域の研究開発や人材採用を強化するための新拠点をイスラエルに設立すると発表した。欧州の中核研究拠点である「Fujitsu Research of Europe Ltd.」の分室に位置付けられる。2021年にはイスラエルのベングリオン大学内に人工知能(AI)を活用したセキュリティ領域(AIセキュリティ)の研究拠点として「Fujitsu Cybersecurity Center of Excellence in Israel」を設立しており、新拠点はこれに続くものとなる。
フェロー SVP 富士通研究所(データ&セキュリティ担当)研究本部 データ&セキュリティ研究所の津田宏氏は、同社のパーパス(存在意義)として「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」と紹介。さらに、サステナブル(持続可能)な社会の実現に向けた富士通の未来ビジョン「Fujitsu Technology and Service Vision 2022」の中で、「全てにトラストを」として人、データ、システムなどを安心安全につなぐ分散型トラストテクノロジーを掲げていることも、同社がデータ&セキュリティ領域の研究開発に注力する背景となっているとした。
津田氏は従来のセキュリティの考え方が、「『システム』を『守る』」という発想だったとし、昨今の個社単位でのゼロトラストが「『システム』を『安全につなげる』」という考え方になっていることを踏まえ、同社の研究戦略として「『データ(価値)/アイデンティティー(人・AI)』を『安全につなげる』」という「ボーダーレスワールドのゼロトラスト」の実現を目指すとした。
今回発表のイスラエルの新研究拠点では、同国がサイバーセキュリティ分野では世界をリードする存在であることを踏まえ、特にAIセキュリティやネットワークトラストに関する研究開発を推進するための取り組みだと位置付けた。
津田氏はまた、具体的な研究成果の一例として、ベングリオン大学と共同で開発した「AIアルゴリズムに対する攻撃への対策」を紹介した。これは、小売店などで採用が進むスマートショッピングカートに対する攻撃に対する対策となるもの。スマートショッピングカートでは、「来店者が棚の商品を手に取ってカートに入れる様子をカメラで監視し、カートに入れられた商品が何であるかをリアルタイムに判定して支払金額を計算する」という処理を行うが、「パッチ攻撃」として「特殊なシールを商品の一部に貼付し、別商品と誤認させる」という攻撃手法が想定されている。
これは、AIの判定アルゴリズムが必ずしも商品の全体像を踏まえて判断しているわけではなく、特定領域の一部の特徴に基づいて判断を下してしまうことがあるのを逆手に取った攻撃で、シールを貼るだけでそのシールの特徴に基づいて別の(安価な)商品だと判断させてしまうことで高額な別商品を盗み出してしまうというものだ。同社がベングリオン大学と共同で開発した対策は、AIのアカウンタビリティー(説明責任)に関する研究成果を踏まえたものだといい、AIがその商品が何であるかを判定した際に「何を根拠にそう判断したのか」をチェックし、その判断が映像のごく狭い領域の情報だけに基づいて下されていると判明した場合にはアラートを出すという形で実現されているという。
同氏は、こうした研究成果について「2023年度には実用化していきたい」としており、提供形態については詳細は未定であるものの、例えば同社がリテール業界向けに提供するソリューションパッケージの中に含めて提供するなどの形態が考えられるとした。