第3回:顧客が買うのは「モノ」ではなく「体験」
今回は「第3回:顧客が買うのは「モノ」ではなく「体験」」についてご紹介します。
関連ワード (ECから始めるDX、マーケティング等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
消費者に「ここで買いたい」という購買意欲をかき立てる重要な要素が顧客体験だ。では具体的に消費者はどのような顧客体験を求めているのか。良い顧客体験はどうすれば実現できるのか。第3回では「顧客体験」という視点から電子商取引(EC)刷新の勘所を見ていく。
私たちが「この店/ECサイトで商品を買いたい」と思うのはどういう時だろうか。欲しい商品がある、価格が安い、デザインが好きなど、さまざまな理由が考えられる。
今はモノがあふれている時代なので、ただ商品を並べているだけでは購入候補にも上らない。モノが売れるにはその商品自体の個性やニーズも大事だが、店舗/ECサイトではさらにそこで「選ばれるチャネルになるための“良い体験”」を設計する必要がある。
では「良い体験」とはどのようなものだろうか。2022年7月に発表したAdobe Commerce消費者調査結果によると、次の通りである。
「デジタルファーストの世界では、消費者は自分のニーズや興味に合わせてパーソナライズされた顧客体験を期待するだけでなく、要求さえしています。(略)買い物の全行程において、すべてのチャネルで、どこにいても、どのような買い方を選んでも、消費者はシームレスなショッピング体験が提供されることを望んでいます。」
店舗やECサイトなどを行き来して商品を選んだり比較検討をしたりなど、購入するまでの全てのプロセスにおいて、パーソナライズされた一貫性のある顧客体験にニーズがあることが分かる。
特に注目したいのが「パーソナライズ」だ。前述の調査によると、半数以上(67%)が「自分の消費習慣を反映してパーソナライズされたプロモーションやオファーを実店舗やオンラインで受けたいと答えている」とあり、多くの消費者(61%)は「こうしたプロモーションを受けることで、購入の可能性が高まる」と回答している。
さらに「パーソナライズされた商品レコメンデーションを受けたことがある」と回答した消費者の72%が「想定より多くの商品を購入することになった」とあり、パーソナライズが売り上げに直結していることが分かる。
10年以上前から使われているパーソナライズという用語は、近年特に注目されるようになった。それはパーソナライズを実現するテクノロジーが進化したことや、プライバシーデータの濫用規制などがあり、改めてその良し悪しが問われるようになったことが大きい。
パーソナライズはデータの分析・収集とも深く関係するので、EC担当者の中には「データ担当者に一任している」という方もいるだろう。しかしEC事業を伸ばしていく上で、パーソナライズやデータ活用は必須だ。どのようなデータをどう活用して、どんな情報を個別に提供するかをしっかり考える必要がある。
パーソナライズを実現する上で外せないのが自社で収集、蓄積する顧客のファーストパーティーデータだ。ファーストパーティーデータとは、顧客が自分の意思で企業に開示する情報のこと。氏名や性別、居住地などのデモグラフィック情報に加え、購買履歴や問い合わせ履歴、ECならばウェブサイトの閲覧履歴やメールマガジンへの反応なども挙げられる。
最近まで企業はファーストパーティーデータを収集せずとも、ウェブサイト訪問者に関する情報を取得できるサードパーティークッキーを利用してレコメンドやターゲット広告の配信を行ってきた。しかし消費者プライバシー保護により、主要ウェブブラウザーがサードパーティークッキーのサポートを順次廃止している。
既に会員登録していてファーストパーティーデータがそろっているユーザーであればいいが、中には会員登録をせずに「買い物だけしたい」という非会員ユーザーや、新規のユーザーもいる。こうした人々に対してどのような体験を提供すればいいのだろうか。
結論から言うと、EC事業者はこうしたアノニマス(匿名)の訪問者に対してもパーソナライズによる良い体験を提供していく必要がある。あらゆる訪問者にパーソナライズ体験を提供してこそ、会員登録というステップに進んだり、購買に踏み切ったりなど次のアクションを促すきっかけになるからだ。