防災DXに取り組む神戸市–新しい技術の活用で災害への対応力を向上

今回は「防災DXに取り組む神戸市–新しい技術の活用で災害への対応力を向上」についてご紹介します。

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本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 1995年1月に発生した阪神・淡路大震災からまもなく28年を数える。兵庫県・神戸市は災害対応や防災・減災の推進、国民保護を目的とする危機管理室を設置し、防災DXに取り組んできた。その一画をSpectee(スペクティ)のリアルタイム危機管理情報サービス「Spectee Pro」が支えている。

 近年、日本では激甚災害が頻発している。神戸市の危機管理室は市民の財産と安全を守るため、災害状況の可視化・情報提供を目的とする部局だが、同室で防災体制整備担当課長を務める吉見文浩氏は「ICT技術など取り巻く環境が大きく変化している。以前はFAXや防災無線で情報発信していたが、市民がスマートフォンやタブレットを普段使いしている状況では、災害情報を受け取るスピードも変化した。メールやアプリケーションを組み合わせた災害対応方法で、積極的に防災DXの取り組みを進めている」と主な役割を説明する。

 普段からデジタル変革(DX)に関わる方には、単なるデジタル化に見えるものの、吉見氏は「DX自体はバズワードだが、我々は新しい技術を活用して災害への対応力を向上させる。各部局で本部が立ち上がると、ホワイトボードへ時系列に情報を書き込むため、情報の集約や被害状況の把握が難しかった。防災情報を共有する『危機管理システム』は消防局や建設局とも連携し、(被害が発生した)現場の写真や動画を受信して、従来業務を効率化させた。その延長線上にDXがある」と現状を踏まえつつも将来を見据えた取り組みだという。

 特に災害発生時の判断・対応は一分一秒を争う。吉見氏も「時間との勝負。従来の手法かつ限られた人数で多様な業務を同時並行させながら、市民への情報伝達に時間を要していた。一刻も早く必要な情報を配信する意味でデジタルツールの役割は大きい」と利便性を強調した。

 一般的な行政は自然災害が発生すると状況把握に努めながら、防災指令を発令。その被害規模に応じて、災害警戒本部や災害対策本部を設置していくのだが、吉見氏は「関係部局だけで被害状況を把握するのは難しく、その場にいる市民が発信する情報や写真を活用することは欠かせない」と主張する。

 当然ながら定点観測カメラの監視も怠らないが、人的対応では何らかの見落としが起きかねない。そのため同市は産官学が連携して防災・減災力を高めるAI防災協議会と連携し、「LINE」およびチャットボットを活用した「災害情報共有システム」を運用してきた。災害発生時や予見される場合にメッセージを送信し、同システムに参加した市民はコメントや写真・動画で現状を伝える仕組みだ。

 「『この地域は大丈夫』『雨は小粒』など肌感覚の情報を得られるのは大きい。将来的には市民からの需要にも応えたい」と吉見氏は述べつつ、防災DXを加速させると取り組みを説明した。

 また、別角度から防災・減災に対応するのが、災害対応工程管理システム「BOSSシステム」である。業務継続計画と災害受援計画を統合した災害時業務継続・受援計画を策定(=フローチャート化)し、職員の災害業務を支援する仕組みだ。今後は防災科学技術研究所(NIDE)が主導する情報基盤にも参画し、多角的な情報共有と連携を目指している。

 このように防災DXに取り組む神戸市だが、その一翼を担うのがSpectee Proだ。SNSや気象データ、河川・道路カメラなど各種データを人工知能(AI)で解析し、浸水推定地図の作成や時間ごとの被害範囲シミュレーション、河川氾濫予測をリアルタイムで提供する。

 「AIが湯気を火事の煙と誤認するケースもあり、最終的には人が判断して正確な情報を提供している。とある自治体では線状降水帯による水害で妊婦が孤立し、現場対応が難しかったところ、自治体職員がSpectee Proで情報を取得して消防署に対応を求めたケースもあった」と同社で代表取締役 最高経営責任者(CEO)を務める村上建治郎氏は述べる。

 神戸市は2019年から試験運用を開始し、2020年から本格運用を開始。現在は兵庫県全体でSpecteeと契約している。2019年の台風到来時はSpectee Proが功(こう)を奏したことで評価を得たという。

 吉見氏は「大規模災害時に職員がすべての情報を把握するのは限界がある。AIの力で合理化できるSpectee Proに行き当たった」と評し、2022年度からはSpectee Proの情報を危機管理システムに直接取り込み、危機情報の一元管理に努めていると説明した。

 吉見氏は今後の取り組みとして、「市民の需要に合わせた効率化の視点が重要。普段使いするデバイスの有効活用性を追いかけたい」とし、村上氏も「リアルタイムなハザードマップに取り組みたい。降水量や地域の特性に応じた情報を瞬時に提供できるシステムを開発中だ。危険ではないのに避難を強いられる住民の負担を軽減したい」と意気込みを語る。

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