マルチクラウド戦略を重視する企業は42%–日本シーゲイト、データ活用が企業の成長に

今回は「マルチクラウド戦略を重視する企業は42%–日本シーゲイト、データ活用が企業の成長に」についてご紹介します。

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 日本シーゲイトは1月19日、「国内外のマルチクラウド戦略の最新動向および日本シーゲイトの2023年に向けた事業戦略」と題して記者説明会を行った。説明会には、代表取締役社長の新妻太氏と営業本部 本部長の安河内智氏が登壇し、同社が実施した「マルチクラウド成熟度レポート」の結果や同社の2023年の取り組みを説明した。

 市場におけるデータの動向について同社は、急速に増加するデータは企業にとって大きなチャンスをもたらす一方で、現状では生成されたデータと保存されたデータの格差が拡大しており、企業はデータからより良いインサイト(洞察)を得てビジネスイノベーションを促進する機会を損失しているという。新妻氏は「生成データと保存されたデータの格差を埋めることで、将来的なイノベーションや拡販のチャンスになると感じている」と述べた。

 IoTデータなどを処理するエッジコンピューティングにより企業はデータセンターやクラウドなど、さまざまな場所にデータを蓄積しているが、「現状はマルチクラウドというより複数のクラウドがある状態になっており、さまざまな場所にあるデータをどのように一元管理するかが大きな課題になっている」と、同氏は指摘。続けて、データ管理に悩む企業にとって重要なソリューションは、データ利用者とデータ生成者を結びつけてコラボレーションを可能にし、イノベーションを加速させる「DataOps」を確立することだと説明した。

 「共有されたデータがインサイトとして利用されることで、ビジネスのイノベーションを生む。情報の活用により、企業の成長は左右される。ビジネスのゴールを達成するためには、テクノロジーの活用は不可欠だ」(同氏)。

 次に安河内氏が、2022年に同社とEnterprise Strategy Group(ESG)が実施した「マルチクラウド成熟度レポート」の日本における結果を発表した。同レポートの基になった調査では、国内100社の経営者やIT部門のシニアリーダーにマルチクラウドに関する質問を行った。

 同社によると、マルチクラウド成熟度は「企業がデータコストを最小限に抑える活動をできているか」「データドリブンイノベーション(データ駆動での意思決定)の機会を最大化できているか」という2項目からスコア付けしているという。このモデルの目的は、2項目の意識と実行がビジネスの成果にどれほど関連しているかを数値化することにある。国内のデジタル変革(DX)を推進する企業の経営者やIT部門で参考にしてほしいとしている。

 同レポートの結果を見ると、「クラウドコスト管理について、成熟度が低い」と認識している日本企業は47%だったのに対し、グローバルでは32%だった。また、「マルチクラウドについて、イノベーションの推進があまり進んでいない」と認識している日本企業は43%、グローバルでは29%であることから、日本の企業は自社のマルチクラウド成熟度が低いと認識していることが明らかになった(図1)。安河内氏はこの結果の背景には日本の文化としてこれまで使ってきたテクノロジーを継続して使い続ける傾向が高いと推測している。

 しかし同氏は、日本企業はビジネス成果(収益性)とデータ活用の相関性についてのとらえ方を海外と比較する薄い傾向にある一方、日本でマルチクラウド成熟度レポートが広まることで、ビジネス価値創造とデータ活用に相関性があることが認知され、日本企業のポテンシャルを高めることができるのではないかと期待しているという。

 成熟度という視点でコストやデータドリブンによる意思決定に関する数値は低いものの(図2)、マルチクラウド戦略を重視する企業はグローバルで27%に対し、日本では42%という結果を示した。現時点で4つ以上のパブリックおよびプライベートクラウドを利用している日本企業は13%だが、2年後には33%に増加すると予想している(図3)。

 さらに、日本企業は海外の企業と比べてデジタル製品やサービスへの投資意欲が高い結果になった(図4)。これは、日本でのデータ量増加トレンドが海外よりも高いことを意味しており、データコストの管理やイノベーションが一層重要になることを示唆しているという。

 次に、マルチクラウド成熟度が高い企業とそうでない企業を比較したレポートの結果を説明した(図5)。クラウドストレージのコスト管理が成熟している企業は、成熟していない企業に比べて「自社のコスト管理が有効でかつ来年度のクラウド利用予算の見通しが正確である」と回答している傾向が高い。また、イノベーションの意思決定が成熟している企業は、「収益の年間成長率」が成熟度の低い企業に比べて2倍あるという。

 さらに、コスト管理とイノベーション両方が成熟している企業は、「収益性・競合性・付加価値」の観点で優れた結果を出している。つまり、マルチクラウドにおけるコスト管理やデータドリブンの意思決定がダイレクトに収益性や競合性に関わっていることが分かったという。

 マルチクラウド化の事例として、同社のマルチクラウドへの取り組みを紹介した。同社では、データ量の増加により、従来のデータセンターアーキテクチャーに基づく環境からパパブリッククラウド環境にデータを移行したがストレージコストの増加に伴い独自のプライベートクラウドを構築し、大幅なコスト削減につなげたという。この社内DXの一環として構築したオブジェクトストレージソリューション「Lyve Cloud」を現在、同様の課題を持つ企業に提供している。

 Lyve Cloudのアナリティクス機能を用いて製造工程の品質を分析・予見し、不要な工程を取り除くスマートサンプリングを行うことで、3年後の設備投資を総額4300万ドル(約55億円)削減できることを見込んでいる。また、測定作業を40%削減、社員の生産性を6%向上したという結果になった。

 このような背景を踏まえ、同社では2023年における事業戦略として、「データのけん引役を追う」「生成/保存されるデータのギャップを減らす」「データの障壁やサイロを破る」――の3つを同社のアプローチとして掲げた。具体的には、データ生成量が大きい自律走行車(AV)、スマートマニュファクチャリング、メディア&エンターテイメント分野に注力。そして、同社の製品を活用することで生成データと保存データのギャップを減らしたいとしている。

 新妻氏は、今後の企業のデータに関する取り扱いについて以下のように予想した。

 「従来はデータを可能な限り保存していた状態から、必要なデータだけを保存するようになり、オープンで拡張性を持ち、ハイブリッドで管理されるアーキテクチャー体制になる。また、自動化によるデータ分析が行われ、将来的な予測も含めた傾向値を見るようになるだろう。そして、DataOps中心になることで、DataOpsや人工知能(AI)を用いた予測インサイトにより意思決定を行う方向へシフトし、チームで1つのデータを共有しながら意思決定をする状況になっていく」

 このような状況から同社はデバイスやシステム、サービスの提供を通して独自の地位を確立していく狙いだ。デバイスでは、企業向けに対して「HAMR」(熱補助型磁気記録)技術を用いて1つのHDDで30TB以上のストレージを持つデバイスを使ってシステム単位で販売。システム単位で販売することで、より容量単価を安くし、迅速に市場に投入できる体制を構築するという。

 また、サービスではLyve Cloudをストレージのサブスクリプションとして提供。しかし、データの出入が多い場合には定額制での提供も考えているという。同製品はマルチクラウド戦略を補完するものとし、シームレスな相互接続性と運用性を実現するとしている。

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