CFOが全社変革の要に–アクセンチュア、CFOのトレンドを解説
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アクセンチュアは8月21日、日本を含む世界の最高財務責任者(CFO)を対象にした「グローバルCFOリサーチ」の調査結果を発表した。同調査は、2023年6月から8月にかけて、売り上げ10億ドル規模以上のグローバル企業を対象に、1420人の財務リーダーに対する調査や20人の個別インタビューを実施している。
アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部 Enterprise Valueマネジメント プラクティス 日本統括 マネジング・ディレクターの山路篤氏は、4年ぶりの調査結果について「グローバルでのCFOの役割は変化している。2つ以上のプロジェクトを主導するCFOは過去2年間の11%から(今後1年間で)34%に増加するとわれわれは見込んでいる」とCFOが全社変革の要であると強調した。
国際的な企業は、全社変革プログラムを1社当たり3.1テーマ、今後1年で2.1テーマの追加を予定しているが、国内企業136社も2.9テーマが取り組み、今後1年で2.4テーマの追加を予定しているという。ただし、CFOがリードしているか否かで判別すると、国際的な企業は2.6テーマ、国内企業は2.1テーマと後塵を拝する結果となった。CFOの活動がIT部門や事業現場部門、顧客対応部門など4部門以上に影響を与えているかという問いには、国際的な企業は57%、国内企業は26%だった。特に事業現場部門、顧客対応部門、マーケティング部門で大きな開きを確認できる。
CFOと事業責任者が価値を事前合意できている割合は42%(日本は23%)。全社変革で財務効果を価値として掲げている割合は40%(同26%)。高品質なデータ不足を障壁と認識している割合は30%(同16%)。山路氏は「日本企業は高品質なデータをCFOに集め、全社改革の価値を定量化して、事業部長など他のステークホルダーを巻き込んでプロジェクトを推進できていない」と考察を述べている。
一連の情報を踏まえてアクセンチュアは、全社パフォーマンス掌握型CFOから、全社変革プロジェクトのオーナー、そして同プロジェクト横断の価値創出マネジメントに取り組まなければならないと指摘する。同社は全社パフォーマンス掌握型CFOが、ファイナンシャルプランニング&アナリシス(FP&A)で事業業績を管理し、全事業の実績や予測分析、パフォーマンス改善に取り組むことを提唱した。
重要になるのは各部門のデータだが、山路氏は「事業部門から報告させなくても、データが手に入る状況を作らなければならない」という。全社変革プロジェクトのオーナーに進むと、他部門を巻き込むために価値の定量化や、財務の効果創出検証チームを立ち上げて、同プロジェクトの責任者をCFOが担う。最後の価値創出マネジメントは投資の優先度を判断しながらリターンの促進を通じ、将来の企業価値創出の確度を担保する。また、ビジネスの現場に関する知見を持った経理・財務人材の育成モデルも改革しなければならないという。
国内のとある製造業は、入力しないと日々の業務が前に進ませないことで現場の事業活動をデータ化しつつ、数字集計の自動化で課題対応や変革推進へのマンパワーを拠出しているという。「新商品開発が進んでいるのか、顧客との商談も進んでいるのかなどをデータ化して、ダッシュボードに表示。本社のCxOはいつでも(ダッシュボードを)見られる」仕組みを構築したと同氏は説明する。前述した効果創出検証チームについてもアクセンチュアは、KPIツリーの定義や取り組み仮説の構築、検証方法の定義を企業の優位性として保持することが必要だと提言している。
しかし実行に移すのは難しい。そのため、アクセンチュアは「武者修行型育成モデル」を提唱している。山路氏は、「多様な事業フロントに出られるキャリアパスと(事業内容に応じて)改革プロジェクトメンバーが変革を推進する経験を積むのが必要」だと述べる。
さらに、同氏は日本企業のCFOに対して「推進中の改革でアプローチする価値の定量化から始まり、中長期的には全社変革を推進できる武器としてデータを収集する仕組みを整えて、効果創出支援チームを立ち上げてマネジメントコントロールできる状態を作る。次世代的には(武者修行型育成モデルを踏まえた)人材育成も重要」になると主張した。
武者修行型育成モデルの概要