廃棄物だった「焼酎かす」を電力へ–霧島酒造が進める循環型社会
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宮崎県都城市に本社を置く霧島酒造は1月19日、持続可能な焼酎づくりに向けたアクションプラン「霧島環境アクション 2030」を発表した。同社はリサイクルを行うプラントを紹介するとともに、アクションプランの内容を説明した。
本社工場にある「焼酎粕リサイクルプラント」では、焼酎の蒸留工程で生じる「焼酎かす」や芋の選別で生じる「芋くず」をリサイクルしている。両物質の1日当たりの生成量は、焼酎かすが約850トン、芋くずが約15トンに及ぶ。プラントでは焼酎かすと芋くずを粉砕し、微生物によってメタン発酵させることで、バイオガスを生み出している。
霧島酒造では、バイオガスを焼酎の製造で使う蒸気ボイラーの熱源として活用したり、「サツマイモ発電」として電力に変換したりしている。1日当たりで生成される電力は約2400世帯分に相当し、九州電力へ売電している。加えて、サツマイモ発電の電力を主電源とした電気自動車「e-imo(イーモ)」を社用車として4台導入しており、2030年度までに全社用車の電動化を目指しているという。
焼酎かすの活用は、バイオガスの生成にとどまらない。霧島酒造は、バイオガス生成後の焼酎かすを脱水して堆肥に加工し、焼酎の原料となるさつまいもの栽培に用いている。また、さつまいも畑は二酸化炭素(CO2)を吸収するため、工場でバイオガスを燃やしても、発生したCO2は畑で吸収される仕組みとなっている。こうした取り組みの結果、霧島酒造は2021年度、CO2の排出量を2013年度から33%削減したという。
近年脱炭素などに取り組む企業は多く見られるが、霧島酒造は2002年に焼酎かす活用の検討を開始した。アクションプランについて説明した代表取締役専務の江夏拓三氏は「焼酎かすはもともと廃棄物として捉えられていたが、入社と同時に『これは宝じゃないか』と思った」と話し、「さつまいもは、人類を飢餓から救ってきた植物。自然の恵みで得られたものをむげに捨てることはできない。しっかりとした形で自然に還元しなければいけない」と自社の取り組みに込められた思いを語った。
同社が発表したプランは「気候変動対策」と「自然環境保全活動」で構成され、気候変動対策の一つには「2030年度までに工場と事務所からのCO2排出量を実質ゼロにする」ということがある。それに向けて霧島酒造は既に、都城市の焼酎メーカー2社から焼酎かすを受け入れたり、物流企業のニチレイロジグループと共に芋くずのリサイクルを一層進めたりしている。
ニチレイロジグループは南九州地区を中心に、霧島酒造が製造する焼酎の原料であるさつまいもの保管や流通加工業務を受託している。流通加工業務でも芋くずは発生するが、これまでは委託先の廃棄物収集運搬事業者を通して処分していたという。今回の協業により、ニチレイロジグループは流通加工業務で生じた芋くずを霧島酒造の工場に搬入し、バイオガスの生成につなげることができる。新たにリサイクルが可能となった芋くずは、月間約30トンだという。