富士通、量子シミュレーターでRSA暗号の安全性を評価
今回は「富士通、量子シミュレーターでRSA暗号の安全性を評価」についてご紹介します。
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富士通は、自社開発の39量子ビットの量子シミュレーターを用いて、現在普及しているRSA暗号の安全性を定量的に評価する実験を行い、成功したと発表した。
実験では、スーパーコンピューターシステム「富岳」にも採用されているCPU「A64FX」の高速性と富士通の大規模並列計算技術を生かした、世界最速レベルの量子コンピューターシミュレータシステムを使用した。
RSA暗号は、インターネットの標準暗号の1つで、データの秘匿性や完全性を保証する技術としてオンラインショッピングにおけるクレジットカード情報の送受信や、SNSにおけるメッセージ交換の際など、世界中で広く利用されている。
一方で、理想的な量子コンピューターを用いれば、巨大な合成数であっても容易に素因数分解が可能なことが知られており、量子コンピューターによる既存の暗号が解読される懸念があった。長期的にはRSA暗号から耐量子計算機暗号などの代替技術への移行が必要とされている。
しかし、2048ビットの合成数を実際に素因数分解する量子コンピューターについては、実験事例が少ないなどの理由から、計算リソースの見積もりが難しく、代替技術への移行時期の明確化も困難だった。
今回の実験では、入力された合成数を素因数分解する量子回路を生成する汎用的なプログラムをショアのアルゴリズムを用いて実装し、量子シミュレーター上において素因数分解を行った。その結果、9ビットのRSA型合成数(2つの異なる奇素数)であるN=15からN=511までの96個の素因数分解に成功し、汎用的なプログラムが正しい量子回路を生成できることを確認できた。
ショアのアルゴリズムは、米国の理論計算機科学者、数学者のPeter Shor氏が1994年に考案した整数の素因数分解を高速に実行可能な量子アルゴリズムになる。
さらに、同じく汎用的なプログラムを用いて、10ビットから25ビットの幾つかの合成数を素因数分解する量子回路を実際に生成し、その計算リソースから2048ビット合成数の素因数分解に必要な量子回路の計算リソースを見積った。その結果、2048ビットの合成数を素因数分解するにはおよそ1万量子ビットに加え、ゲート数がおよそ2兆2300億、深さがおよそ1兆8000億の量子回路が必要なことが分かったという。
これは、試算すると約104日間に渡って量子ビットを誤りなく保持する必要があり、現時点では、これほど大規模かつ長時間にわたり安定稼働する量子コンピューターを短期的に実現することは困難なことから、同社はRSA暗号がショアのアルゴリズムに対して安全であると定量的に証明できたとしている。