米国スタートアップとの関係構築を探る日本企業の動き

今回は「米国スタートアップとの関係構築を探る日本企業の動き」についてご紹介します。

関連ワード (経営等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 米国で次々に登場するテクノロジーのスタートアップの中から有望な相手を見つけ、先端技術をいち早く導入したい日本企業は少なくない。そのためには、現地の状況を把握したり、テクノロジーや事業計画を調査・分析したりする必要がある。

 かつては視察旅行などの形で日本から現地に赴くことができたが、コロナ禍で難しくなり、昨今ではデジタルトランスフォーメーション(DX)によるテクノロジーへの需要は高まる。米国スタートアップとの関係構築を模索する日本企業の現状について、米国シリコンバレーに駐在し調査などを行っている東京エレクトロンデバイス(TED) 北米現地法人(TED AMERICA)のプロダクトマーケティングディレクターの久保貫治郎氏とシニアテクニカルマーケティングスペシャリストの三好徹氏に聞いた。

 半導体・IT技術商社のTEDは、2013年にTED AMERICAを設立。しかし、それ以前からIT製品を取り扱うコンピューターネットワークビジネスユニット(CN BU)が長らくシリコンバレーで、日本市場に有望なテクノロジーやベンダーの調査・分析、ベンダーとの交渉・契約などを行ってきたという。TEDが日本市場に輸入する商材候補を探す主な目的だが、社外からも米国テクノロジースタートアップ調査の要望が増えたため、2022年8月にサービス化した。

 久保氏によると、このサービスでは、情報収集を目的とする顧客と調査内容や対象、予算、期間などの要件をまず定義し、同社が蓄積している情報、ベンチャーキャピタル(VC)や人脈といったネットワークを駆使して調査・分析を行い、顧客に報告(主にはレポート)する。個別対応のほか、久保氏と三好氏が日々収集している最新動向をポータルサイトでも発信している。

 「もちろん調査能力のある企業は自前で調べたり、同様のサービスを利用されたりしているが、現地に人を派遣する余裕が無い、候補先とやりとりする前にまずは状況を把握したい、といったさまざまな事情から、当社に調査を依頼される」(久保氏)

 調査内容は、TEDの事業領域に近いITインフラやサイバーセキュリティが中心だが、最近では人工知能(AI)関連や、物流など特定業界に関連するテクノロジーなども対象になってきているという。数年ほど前まで、サイバーセキュリティでは、高度な標的型攻撃を検知・防御する技術、AIでは、画像や映像データへのアノテーション技術などの問い合わせが目立ったといい、顧客はいま現在の課題に対するソリューションを求めるより、日本で数年先に主流となる先進技術をいち早く入手したいという要望が多いそうだ。

 世界のITの最先端を行くとされる北米市場のスタートアップ動向は変化が激しく、キャッチアップは容易ではない。先述したように、以前なら自前で調査する日本企業が一定程度あったものの、コロナ禍でほとんど渡米できなくなり、動向の把握はより難しくなった。久保氏は、「北米側もコロナ禍でリモートワークが拡大してキーパーソンと直接コンタクトするのが難しくなったり、経済情勢からスタートアップの資金調達が難しくなったりするなどの事情があるので、調査やその仲介を求める企業が増えている」と現状を明かす。

 また調査を行う上でさまざまな難しさもあるという。久保氏によれば、最も大変な作業は顧客の要件を具体的に定義する段階とのことだが、ビジネスに対する感覚や意識の違いが大きいという。

 「日本企業側が求める高いレベルの品質・サポートに、米国のスタートアップ側が対応できるのかという不安がある。日本企業側としては、まずは試験的に小規模ライセンスを購入して検証するといったことを希望する一方、米国のスタートアップ側はVCとの関係もありビジネス化を急ぐ必要に迫られる。米国側に、日本企業は検討に長い時間を費やす特徴があることを理解してもらう努力もしている」(久保氏)

 かつての日本企業は、米国シリコンバレーに複数社の視察で訪れ、スタートアップ各社と面談しても情報を聞き取るだけで、なかなかビジネスパートナーの関係に発展することがなく、日本企業側の姿勢を問題視する指摘が多かった。久保氏は、以前にそうした経験のあるスタートアップ関係者やVCの一部に、今も日本企業側の姿勢を懸念する向きがあると指摘する。

 他方で、三好氏は「現在の米国はコロナ禍の制限が緩和され、特にリアル開催のカンファレンスへの客足がだいぶ戻りつつある。現在はハイブリッドワーク主体で、リモートの限界が見えており、いざ必要ならリアルでコミュニケーションする。コロナ禍の停滞からリアルを含めたビジネスチャンスへの期待は高まってきている印象がある」と話す。

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