ビジョンを起点に業務を改革–日本IBMと中外製薬が進める、生産機能のDX
今回は「ビジョンを起点に業務を改革–日本IBMと中外製薬が進める、生産機能のDX」についてご紹介します。
関連ワード (経営等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
日本アイ・ビー・エム(日本IBM)と中外製薬は3月6日、医薬品の生産機能におけるDXの取り組みについて説明会を開催した。両社はデジタルプラントの実現に向け、生産オペレーションを支えるデジタル基盤を構築し、2022年10月から中外製薬のグループ会社である中外製薬工業の浮間工場(東京都北区)で稼働させている。2023年1月には同基盤の本格利用を開始し、現在宇都宮工場(宇都宮市)と藤枝工場(静岡県藤枝市)への展開も進めている。
中外製薬は「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」において、「デジタル技術によって中外製薬のビジネスを革新し、社会を変えるヘルスケアソリューションを提供するトップイノベーターになる」というビジョンのもと、「デジタル基盤の強化」「全てのバリューチェーン効率化」「デジタルを活用した革新的な新薬創出」を掲げている。今回の取り組みは「全てのバリューチェーン効率化」を実現する施策の一つだという。
同社では、増加傾向にある業務量を最適化し、安全性を担保する「生産性の向上」、活動や試験の結果を厳格に確認・保管する「コンプライアンスへの対応」、生産業務の一部をリモートでも可能にする「働き方改革」が課題となっていた。この実現には人や設備、プロセスの情報をデータ化して分析することが必要であり、今回は第一段階として業務の核となる「人」に焦点を当てたDXに取り組むことにしたという。
日本IBMは中外製薬の生産業務改革を共創するパートナーとして、デジタル技術と業務改革の両面を支援した。説明会に登壇した日本IBM コンサルティング事業本部 ヘルスケア&ライフサイエンス・サービス パートナーの中島理絵氏は「AR(拡張現実)技術や『IBM Watson』などを単にシステムとして導入するのではなく、『それらを使ってどのような新しい働き方ができるのか』ということを中外製薬さんと議論しながら技術を取り入れてきた」と説明した。
中外製薬は「作業計画立案の自動化・可視化」「製造ラインを横断した要員計画」「生産業務におけるリモートでの支援」という3つの改革を実施。その中で日本IBMは「生産データの統合・分析」「現場作業者へのリモート支援」に関するソリューションを提供した。
中外製薬では従来、熟練の責任者が設備情報などを考慮して製造ラインごとに作業計画を作成していた。中外製薬工業 生産技術研究部長の上野誠二氏によると「この業務には多くの経験や知識が求められ、もはや職人の世界だった」という。
そこでIBMのアプリケーション「スケジューラー」を活用し、属人化していた情報をマスターデータに変換することで、工場全体における3カ月分の配置を自動化した。同アプリケーションは、誰が、どの設備で、どの工程を実施するのかを1日単位で計画立案するとともに、計画が予定通りに進んでいるかを一覧で表示する。またスケジューラーとIBMの教育システムを連携させることで、各作業者がその業務を遂行できる教育を受けているのかも考慮しながら作業計画を作成する。
現場の作業者は、IBMのスマートフォンアプリケーション「ナビゲーター」を利用する。作業者は毎日アプリケーション上で業務内容を把握し、作業後に実績を入力することで、責任者はすぐに情報を収集できる。自分が担当する作業の前段階で遅延が発生した場合はアラートが鳴るため、作業者同士の確認作業が軽減されるという。