「開発の民主化」を掲げ、日本での展開を本格化–コヒーレントのブリスコCEO

今回は「「開発の民主化」を掲げ、日本での展開を本格化–コヒーレントのブリスコCEO」についてご紹介します。

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 SaaS企業のCoherent Capital Advisors(コヒーレント)は、日本市場への本格的な参入を始めた。最高経営責任者(CEO)兼 共同創業者のJohn Brisco氏に、同社の特徴や日本市場における展開について聞いた。

 ニューヨークに本社を構えるコヒーレントは、2018年の設立以来、フロリダ、ロンドン、日本、香港、シンガポール、フィリピンに拠点を展開する。中核製品の「Coherent Spark」は、「Excel」などのスプレッドシート上で組んだルールや計算式、モデルなどのロジックをノーコードで自動的にAPIに変換できる。決まったテンプレートやフォーマットがほとんど無いため、利便性や柔軟性、拡張性が高く、企業における広い開発ニーズに活用できるとしている。

 また、同製品を通してクラウド上に生成されたAPIは、エクセルを使ってコーディングをビジネス側で自由に編集、更新できる。そのため、ITリソースを気にせず、ビジネス側で新しい開発も可能だという。

 複数の金融機関に勤めていた経歴があるBrisco氏は、商品開発やレポート作成など、あらゆる業務で多くの従業員がスプレッドシートに依存している一方、例えばExcelとデータ連携していないアプリケーションやシステムでは、システム間の連携やデータ移行などの作業が度々発生し、企業にとって膨大なコストと時間が浪費されていることを課題に感じたという。

 そこで、「開発の民主化」を同社のミッションに掲げを同社のミッションに掲げ、Coherent Sparkを開発。同氏は、同製品の特徴として、「スプレッドシートを数秒でコード、あるいはAPIに変換できる」「バージョン管理や監査機能を搭載しているため、企業が全社的にスプレッドシートの仕様を統制し、コントロールしやすくなる」「スプレッドシートをさまざまなシステムと連携することにより、全社のデータが集まるスプレッドシートを活用でき、さらなる付加価値を生み出せる」――の3つを挙げた。

 これらの特徴を全て活用することで、スプレッドシートを開発ツールの1つとして扱うことができ、プログラミングの知識がない従業員でも技術開発に参加できるという。これにより、多くの企業が抱えているIT技術者の人材不足解消につながるとしている。

 実際に同製品を導入した保険会社では、新しい保険商品を開発するために3~6カ月を要していた。しかし、導入後はこの工程が数分になり、保険商品の迅速な開発により、いち早く市場機会を捉えることで、企業の成長につながったという。

 ほかにも、運用周りの導入事例として、運用に関するルールや手順書など、オペレーターが使う情報が全てスプレッドシートに入っており、スプレッドシートが唯一無二の情報源になっているという課題があった。さらに、ルールが変更された際もシステム上にすぐに反映されない、マニュアルが更新されないという問題も抱えていた。同製品を導入することでルールやマニュアルの更新が即座に実施され、情報の精度向上につながったという。

 同氏は、「Coherent Sparkは誰でも使いやすいことから、ビジネスユーザーとIT部門が共に協業し、連携しながら効率的に作業を進めることができる。また、クラウドベースで一元管理することで、セキュリティやバージョン管理を向上し、リスク管理を厳密に行える。そして、テクノロジーが常に改善し、更新されることで、顧客自身の事業も常に改善し続けられる」といった利点を挙げた。

 設立当初は、金融/保険業界を中心に提供していたが、スプレッドシートを使う全ての企業が同製品を利用できるという。既に、航空や製薬、メーカー、製造などが導入しており、日本では航空会社が同社と締結している。今後注目していきたい業界として同氏は、「フォーカスしているのは金融サービスだが、不動産やヘルスケア、製造、サプライチェーンや物流関連の企業にも注目していきたい」と話した。

 2022年にはシリーズBラウンドで7500万ドルの資金調達を行った。「私たちのビジネスは、グローバルで見ても迅速に成長を遂げている。最も大きい市場は米国で、現在は75以上の企業や組織と協業しており、次の1年で米国において500以上の組織/企業に規模を拡大する予定。アジア、特に日本では私たちの存在感を増したい」と、グローバル市場における展望を話した。

 同氏は、日本を「私たちにとって世界の中で主要な市場」と位置付け、SaaS市場として日本は第2位の位置にいると思っていると言及。まず金融業界から展開をしているものの、ほかの業界への展開もしていくと話す。

 また、「SaaSの事業を行う企業は、日本市場とどのように効率的に連携していくかを課題として認識している」と言い、続けて「私たちはこの2年間、日本に参入するに当たり、辛抱強く準備を行ってきた。そして、当社の製品を日本で展開する中で、日本の顧客がどのようにすれば成功するかを理解できるようになった。日本の技術者がテクノロジーの変革を十分に理解し、プラットフォームの使い方を熟知していることが非常に重要だ」と述べた。

 同社は今後、継続的にAIに対する投資を行うとしている。また、高レベルのアルゴリズムやモデル化の機能を顧客向けに開発。さらに、新しいコネクターの開発も行い、Coherent Sparkとスプレッドシート、そして企業のシステムを迅速に接続し、利用できるようにしていくという。

 今後のノーコード市場について同氏は以下のように述べた。

 「ノーコードはフロントエンドの層で普及したが、課題としては全てのフロントエンドのアプリを1つのプラットフォームで統制するのが難しいこと。Coherent Sparkでは、ロジックや演算をノーコードによってスプレッドシートで統制できるという強みがある。そのため、フロントエンドのアプリケーションを使う層だけで戦うのではなく、ノーコードを自動化してコード化していく点で戦っていきたいし、戦いの場は広いと感じている」(Brisco氏)

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