富士通、ネットワークの近代化を量子着想技術で最適化–設備運用や技術者移動の費用を最大80%削減
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富士通は、カナダのトロント大学との共同研究で、量子技術に着想を得た(量子インスパイアード)演算高速化技術「Fujitsu Quantum-inspired Computing Digital Annealer」(デジタルアニーラ)を用いて、老朽化した広域ネットワーク設備を最新の光ネットワーク技術を用いた設備へと移行するネットワークのモダナイゼーション(近代化)を最適化する検証を2021年4月~2023年2月に実施し、有効性を確認した。
同社によると、昨今、老朽化したネットワーク設備の故障リスクの増加を背景に、最新の光ネットワーク技術を用いた設備へ移行するネットワークの近代化が米国を中心に活発化している。サービスを停止せずに各地に点在する旧設備を撤去するためには、旧設備を利用する全ての回線を新設備へ切り替える必要があり、回線切り替え順序によっては数カ月から数年に及ぶ移行期間の後半まで多くの旧設備を維持し続けることとなり、占有スペースや電気、空調、メンテナンス費用などの多大な運用コストが発生する。
また、回線を切り替えるには、回線が設置されている施設へ技術者を派遣する必要があり、切り替え順序によっては遠方施設へ何度も訪問が必要になるなど、旅費や人件費などの多大な移動コストが発生。このため、移行作業期間の初期段階でより多くの旧設備を撤去でき、かつ技術者の移動コストを最小化できる回線切り替え順序を見出すことが極めて重要という。
以前からこうしたネットワーク設備の更新は行われてきたが、その多くは企業などの施設や敷地に設置された小規模なネットワークを対象としていたため、移行計画の策定は手作業で行われてきた。しかし現在、移行が急務となっている国や地域に広がる広域ネットワークでは、膨大な回線と設備が複雑に絡み合うため、回線切り替え順序の組み合せは小規模な場合でも10の150乗以上になり、これらの組み合せから最適なものを実用的な時間内に手作業で導き出すのは不可能とのこと。
トロント大学 Shahrokh Valaee教授のチームとの共同研究においては、数十の設備と数百の回線が複雑に絡み合う複数の大規模ネットワークから組み合わせ最適化問題を導出し、デジタルアニーラを用いてコストを最小化する回線切り替えの順序を探索。富士通によると、デジタルアニーラには、探索の対象となる変数を0か1で行列に配置した際、それぞれの行と列に1を取る変数が1つであるというルール(2way-1hot制約)を持つ最適化問題に対して、探索しなければいけない変数の組み合わせの数を大幅に削減し、高速に解を探索できる特徴がある。そこで今回、データ表現形式を工夫することにより2way-1hot制約を持つ最適化問題を導出した。これにより、デジタルアニーラの特徴を生かした探索が可能となり、大幅な高速化を実現したとしている。
検証では、一般的な商用最適化ソフトウェアを用いた場合に比べ、移行期間中の旧設備の運用コストを最大30%削減し、技術者の移動コストを最大80%削減できることを確認した。