アクセンチュアが考えるレガシーシステム脱却の要諦

今回は「アクセンチュアが考えるレガシーシステム脱却の要諦」についてご紹介します。

関連ワード (ソフトウェア等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 ビジネス環境の変化に追随できずレガシー化した基幹システムは、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を阻む大きなハードルとなっている。アクセンチュア テクノロジー コンサルティング本部 インテリジェントソフトウェアエンジニアリングサービスグループ アソシエイト・ディレクターの中野恭秀氏に、その実情や課題を聞いた。

–まずは中野さんの担当領域と、レガシーシステムの課題感について教えてください。

 統合基幹業務システム(ERP)パッケージに置き換えることができず、残存してしまったシステムをどう改革すべきかを考えるのが現在の私の担当領域になります。極論ですが、ERPを導入し、業務やシステムをそれに合わせることができるならば、企業ごとにカスタム開発するよりはるかに安く・早く・良いものになります。これがERP導入の大きなきっかけになると考えています。

 その一方で、ERPの機能には標準的・汎用的なものが多く、特定の企業でしかやっていないような特殊性の求められる業務に適合させようとすると、多くのカスタマイズが発生してしまいます。そうすると、ERP本来のメリットが損なわれてしまいますから、やはり自分たち独自の業務やシステムが最適だという考え方になり、それを使い続けることになるわけです。

 われわれが特に対象とするのは、40~50年ほど前に設計・開発されたシステムになります。1970年代から利用されているものも多く、老朽化対策は必須になります。当時の基幹業務システムといえばメインフレームでしたから、より柔軟に変化に対応するためオープンなテクノロジーを活用したクラウドの世界に合わせていかなければなりません。また、業務やシステムを変えずにインフラの部分だけを刷新したいというニーズがクラウド移行の動機になりやすいところです。

 加えて、メインフレームベンダーをめぐって非常に大きな動きが出ています。これまでは新しいメインフレームに置き換えることで延命できたのが、それもできなくなります。例えば、富士通は2030年度にメインフレームの販売から撤退し、その5年後の2035年度に保守も終了します。10年ちょっと時間的な余裕はありますが、そこが本当の終わりということです。

–業務をシステムに合わせるFit To Standardのアプローチが注目を集めています。

 企業や業務、商品によって大きく異なりますが、時間的な問題が大きく立ちはだかると考えています。例えば、電子商取引(EC)で直接販売するからといって、40年にわたって日本・世界に構築してきた販売網を切り捨てるわけにはいかないですよね。いずれは全て直販に変わっていくかもしれませんが、店頭販売がすぐなくなるわけではありません。その移行に20年かかるとすれば、その間、現行のシステムと業務を維持しながら、徐々に終了させていくことになります。

 「標準に合わせる」という点については、誰と議論をしてもあまり反対する人はいません。その方が効率が良いし、多少の違いはあっても各社それほど特殊なことはやっていないよね、となります。しかし、「それを明日できますか」となると「10年後ですね」という反応が返ってきます。

 また、日本にはいわゆる「老舗」と呼ばれる企業が多くあります。その中には、全世界で数割のシェアを持つ企業もあります。そういう企業は、特殊であるが故に勝ち残ったという見方もできるので、それをいきなり標準に合わせましょうとはなりません。むしろ、その業界において全世界で数割のシェアを握っているその企業の方が最先端であり、標準的なのだと言えるかもしれません。それを考慮せず、業務の標準化やERPの導入を進めても、あまり良いシステムにはならないでしょう。

–一方で、ERPで標準化を進めるべき領域はどこでしょうか。

 とても分かりやすい例は間接業務です。例えば、人事給与システムもかつてはメインフレーム上で自社に合ったものを作っていたが、今でも残存させている企業はほとんどありません。ここは真っ先にERPに移されていった業務ですね。個々の業務アプリケーションにどんどん切り出していって、メインフレームには企業の中核となる業務(コア業務)だけが残りました。

 メインフレームが高価なのは事実ですが、そこから半分くらいの業務が抜けたからといって、そのまま運用してもコスト効率が悪いわけです。インフラは大きいのに業務がわずかしか載っていない状態で、例えるなら、非常に大きなエンジンを載せた大型車に1人で乗っているようなイメージです。そうしたシステムも、昔の言葉でいえばダウンサイジング、今で言うとクラウドシフトによって、コストを最適化しましょうとなります。こうした発想は今でも変わらないのです。

 加えて、前述の通り、かつてはメインフレームの更改時期により小型の製品に置き換えることができたのですが、後続製品がない現状では、その道も閉ざされています。そうすると、メインフレームを完全に捨てないといけない。ここが最も大変で難しい仕事になっています。

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