日本のIT産業は工程分担から領域分担に変わる–NTTデータの本間社長
今回は「日本のIT産業は工程分担から領域分担に変わる–NTTデータの本間社長」についてご紹介します。
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日本経済が「失われた30年」の間に発展成長できなかった大きな理由の1つに、IT/デジタル活用力の低さがあると言われている。ユーザー企業から言われた通りのシステムを作り続けてきた日本のITベンダーにも重い責任がある。
しかも、クラウドサービスやソフトウェアの自社開発を諦め、海外製品をベースにするシステムインテグレーション(SI)から収益を得るビジネスモデルになった。だが、海外ITベンダーがSaaSを強力に推進すれば、SI需要は間違いなく縮小していく。国内トップベンダーとして2025年度の連結売上高で4兆円超を目指す、NTTデータ 代表取締役社長の本間洋氏にITベンダーの進むべき道について聞いた。
–NTTデータはこれまでどんなことに取り組んできたのか。
本間氏(以下同):これまで受け身、受動的だったことは確かにあった。ITの目的が既存業務の合理化や効率化といった、いわば業務をITに置き換えるものだったからだ。何を作るのかがはっきりと決まっており、それをしっかり作り上げる。そうした基盤を構築し、アプリケーションを実装する「How」の部分は難しいことでもあった。
だが、今ではデジタルを活用した新しいサービスや仕組み、ビジネスモデルの創出に目的が変わった。企業と共に「What」を考えながら、デジタルを用いて事業の発展や社会課題の解決に貢献するにはどうすればいいかを具体化していくことが重要になっている。NTTデータでは、「Foresight」(未来像)を起点に経営と事業を変革するコンサルティングを打ち出しており、プロアクティブ(積極的)に提案できる組織へと変革してきた。日本のITベンダーも上流工程のコンサルティングやデザインを強化する動きになっている。
ITやデジタルの分野で日本はよく「周回遅れ」だと言われるが、欧米も上流工程でのデザインやコンサルティングの強化に取り組んでいる。当社はグローバルな強みを前面に出して戦うために、この1年かけてグローバルレベルの方法論やメソッドを構築し、資産として共有・活用しながら新しいビジネスを一緒に作り上げる体制を推進してきた。
–SAPやSalesforce、ServiceNowといった海外製ソフトウェア/サービスへの依存度が高まっているように見える。
海外ITベンダーに見習うことがある。彼らはリスクを取ってプロダクトを開発・展開し、世界市場を狙っている。そして、世界のシステムインテグレーター(SIer)と組んで、グローバル規模でビジネスを伸ばていく。OSやミドルウェアの領域でもそうだったように、日本のソフトウェア/サービス企業はそうしたことをやってこなかった。
だが、アプリケーションの世界はグローカル(グローバルとローカルという2つの言葉を組み合わせた造語)だ。国ごとに法規制や税制、商習慣などが違うからで、日本で使っているものを海外に持っていく、逆に海外のものを日本に持ち込むといったことが難しい。当社はグローバルのリソースを生かしてベストプラクティスを作っており、日本から欧米へ、欧米から日本へと双方向に共有できるようにする。北米で採用されている保険業界向けのデジタルプラットフォームはその1つで、横展開を図っていく。