DockerがWebGPUを用いてGPUを抽象化、AI処理などGPUを使ったコンテナ化アプリのポータビリティを実現する技術を開発中。DockerCon 23

今回は「DockerがWebGPUを用いてGPUを抽象化、AI処理などGPUを使ったコンテナ化アプリのポータビリティを実現する技術を開発中。DockerCon 23」についてご紹介します。

関連ワード (ライブラリ、修正、処理等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、Publickey様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


Docker社は米ロサンゼルスで10月3日と4日の2日間、年次イベントとして開催した「DockerCon 23」で、WebGPUを抽象化レイヤとすることで、コンテナ化されたGPUアプリケーションをポータブルにする技術を開発中であると明らかにしました。

この技術は2日目の基調講演の後半、Docker CTOであるJustin Cormack氏がOne more thingとして発表したものです。

fig

GPUを用いたアプリケーションのポータビリティが課題に

Dockerコンテナはポータビリティが大きな特長です。ノートPCからオンプレミスのサーバ、クラウド上の仮想マシンまで、簡単にDockerコンテナを移動し、そのまま実行できます。

Dockerコンテナのイメージには、x86やArmなど異なるアーキテクチャのプロセッサに対応した複数のイメージを組み込むこともできるようになっており、CPUの種類を越えたポータビリティも実現しています。

一方、現在急速に拡大しつつあるAIや機械学習(ML)などのGPUを活用するアプリケーションでは、例えばNVIDIA社製のGPUではNVIDIAが提供するSDKである「CUDA Toolkit」が用いられるなど、GPUのベンダやGPUの機種に依存した開発が一般的です。

そして特定のベンダや機種に依存したSDKが用いられたアプリケーションは別のベンダのGPUでは動かないため、ポータビリティが失われてしまうという課題がありました。

WebGLの後継となるWebGPUを用いてGPUを抽象化

そこで今回発表されたのが、最新のWeb標準である「WebGPU」を用いてGPUを抽象化することにより、GPUを活用したアプリケーションであってもポータビリティを実現しようという取り組みです。

WebGPUは、これまでWebブラウザ上でJavaScriptを用いた2次元や3次元の高速なグラフィックスの描画を行うWeb標準として広く使われてきた「WebGL」の後継となる、新しいWeb標準です。

オーバーヘッドが小さく低レイヤで操作できることで、高速なグラフィクスレンダリングや機械学習処理などを可能にします。

すでにChromeでは正式な機能として提供されており、FirefoxとSafariでもWebGPUの実装が進んでいます。

参考:Webブラウザ上でGPUプログラミングを可能にする「WebGPU」、Chrome 113で正式版に。3Dレンダリングや機械学習など高速処理

またBabylon.js、PlayCanvas、Three.jsといったグラフィックライブラリだけでなく、機械学習ライブラリのTensorFlow.jsもWebGPU対応を明らかにしています。

まだ開発初期の段階で、今後さらに開発を進めていくと

DockerCon 23の基調講演ではデモも行われました。下記はDockerコンテナ内でWebGPU経由でGPUを呼び出し、行列の掛け算を行うプログラムを実行したところです。画面左下の青いグラフのマーカーが伸びており、GPUが使われていることが示されました。

fig

下記はこのWebGPUによる抽象化を行うシステムの構成図です。右側がアプリケーションが組み込まれているコンテナで、ここでWebGPUクライアントライブラリが使われており、アプリケーションからGPUを利用するための抽象化されたエンドポイントとなっています。

WebGPUクライアントライブラリは仮想ソケットを通じてホストマシン上のWebGPUサーバ経由でGPUを利用することになります。

fig

このプロジェクトはまだ開発初期の段階にあると説明されていますが、Dockerコンテナのポータビリティを前進させるプロジェクトとしてさらに開発を進めていくとのことです。

DockerCon 23

  • Docker、ビルドを40倍速にする次世代のDocker Buildを開発中。DockerCon 23
  • Dockerがコードネーム「Docker Debug」発表、コンテナ内に任意のデバッグツール群を一括導入、効率的なデバッグを実現。DockerCon 23
  • 生成AIがDockerを使った開発の質問に答えてくれる「Docker AI」発表、Dockerfileのエラーなども修正。VSCode対応。DockerCon 23
  • DockerがWebGPUを用いてGPUを抽象化、AI処理などGPUを使ったコンテナ化アプリのポータビリティを実現する技術を開発中。DockerCon 23

COMMENTS


Recommended

TITLE
CATEGORY
DATE
東京電力エナジーパートナー、月間100万件に上る電話問い合わせをオムニチャネル化
IT関連
2021-02-20 20:45
マクニカと四日市市、次世代モビリティーを活用したまちづくりで連携
IT関連
2022-06-15 20:00
デジタルキューブ、地方企業の事業承継を支援するクラウドサービスを提供
IT関連
2023-10-21 08:48
凸版印刷、SaaS型自社サービスの認証基盤の構築に「Okta CIC」導入
IT関連
2023-01-19 20:26
マイクロソフト、Webアプリテストの自動化サービス「Microsoft Playwright Testing」プレビューを開始
CI/CD
2023-08-29 09:11
「富士通研究所」も富士通に吸収合併 4月1日付の組織再編で
企業・業界動向
2021-01-29 10:21
豚の個体数や体重・健康状態を把握できる養豚農家向けAIカメラシステム「PIGI」がベータ版公開
フードテック
2021-06-17 22:48
「State of JavaScript 2022」公開。利用率1位のフロントエンドライブラリはReact、レンダリングはNext.js、テストはJestなど、4万人のエンジニアが回答
JavaScript
2023-01-12 11:57
Googleの“第三のOS”「Fuchsia」、初代「Nest Hub」にいつの間にか降臨
製品動向
2021-08-20 10:46
「Copilot Pro」、無料で1カ月間の試用が可能に–モバイルアプリで
IT関連
2024-03-19 23:43
「Interop Tokyo 2022」のShowNet–多様化するネットワークの使い方
IT関連
2022-06-17 00:52
日本IBM、千葉銀行の法人向けデジタルサービスの開発支援
IT関連
2021-04-06 20:26
ビジネス支出管理で「パーパス×サステナブル経営」を加速–Coupa Japan Summit
IT関連
2023-08-18 17:37
初期YouTubeも支えたオンラインビデオプラットフォームの老舗JW Playerは今もビジネスの最前線にいる
ソフトウェア
2021-07-07 16:18