人的資本経営の取り組みがエンゲージメントに影響–NECのESG活動

今回は「人的資本経営の取り組みがエンゲージメントに影響–NECのESG活動」についてご紹介します。

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 NECは3月29日、ESG(環境、社会、企業統治)に関する活動の説明会を開催した。

 NECは「企業と社会のサステナブルな成長を支える非財務基盤」として、合計7つの項目を掲げている。環境分野の「脱炭素を核とした環境課題への対応」、社会分野の「ITの可能性を最大限に広げるセキュリティ」「人権尊重を最優先にしたAIの提供と活用」「多様な人材の育成とカルチャーの変革」、企業統治分野の「コーポレートガバナンス」「サプライチェーンサステナビリティー」「コンプライアンス」で構成されている(図1)。

 これらの実現により、中長期的な資本コストの削減を図るとともに、得られた知見を「2025中期経営計画」の成長事業「デジタルガバメント/デジタルファイナンス(DG/DF)」「グローバルDX」「コア事業」「ヘルスケア/ライフサイエンス、カーボンニュートラル関連事業」の成長につなげることを目指している。

 説明会に登壇した代表取締役 執行役員常務 兼 最高財務責任者(CFO)の藤川修氏は、2022年度のESGの取り組みを解説した。環境分野では、防災・メンテナンスによりカーボンニュートラルに貢献。災害が起きると自然やインフラ、建築物が破壊され、破壊とその再建で排出される二酸化炭素(CO2)量は世界全体の10%以上を占めるという。これに対して同社は自社の衛星やセンサー、AIを活用した防災ソリューションやインフラ保全サービスを提供している。

 社会の分野では、2021年度から非財務の取り組みが財務に与える影響を可視化する活動を行っており、分析結果を基に非財務の取り組みを改善・強化している。同年度にグループ会社のアビームコンサルティングと共同で、財務指標(PBR)と非財務指標の相関性を分析した結果、人的資本に関する指標が特にPBRへ影響を与えていると判明。AIによる因果分析ソリューション「Causal Analysis」を自ら活用し、組織における上司の振る舞いと部下の心理的安全性の因果関係などを見いだした。

 同社は2022年度もPBR分析と人的資本関連データの因果分析を実施。その結果、PBR分析は外部環境の影響が大きく、2021年度と同様の傾向は見られなかった。一方、人的資本関連データについては、2025中期経営計画の重要業績評価指数(KPI)の一つ「エンゲージメントスコア」を目的変数とし、人的資本関連の取り組みの有効性を確認したところ、効果のあるものを特定できたという。

 企業統治の分野では、2023年4月に全社組織図を刷新する。成長事業の一つDG/ DFに特化した「DGDFビジネスユニット」、行政のデジタル化を一括して支援する「パブリックビジネスユニット」、ナショナルセキュリティ(国家安全保障)領域として「エアロスペース・ナショナル セキュリティビジネスユニット」、NECグループ横断でDX事業に必要な製品やサービスを開発・提供する「デジタルプラットフォームビジネスユニット」の4組織を新設する。これらの組織に同社が持つ業種ごとの知見を掛け合わせることで、顧客の経営課題解決に貢献するとともにDX事業の拡大を図るとしている。

 取締役 執行役員常務 兼 最高リーガル&コンプライアンス責任者(CLCO) 兼 最高人事責任者(CHRO)の松倉肇氏は、コーポレートガバナンスと人的資本経営の具体的な取り組みについて解説した。

 NECはコーポレートガバナンスの推進により、経営判断の質・スピードの向上を目指している。同社は2022年6月の株主総会を経て、指名委員会等設置会社への移行を決定した。指名委員会等設置会社とは「指名委員会」「監査委員会」「報酬委員会」で経営全般を監督する「取締役」と、業務を執行する「執行役」を分離した組織形態。各委員会のメンバーは、社外取締役が過半数を占める必要がある。同社は、執行役が業務執行を担って適切かつ素早い意思決定を行い、取締役が中期経営計画や事業ポートフォリオの在り方を方向付ける組織を目指している。

 同社は2023年6月以降、社内取締役5人、社外取締役7人の体制にすることを計画している。社外取締役には、日立製作所の取締役会議長を務めた東京中小企業投資育成 代表取締役社長の望月晴文氏、三井物産のCFOや監査役を担った日本監査役協会 会長の岡田譲治氏、テクノロジーやマーケティング、ガバナンスにも知見を持つオムロン 代表取締役社長 最高経営責任者(CEO)の山田義仁氏らが加わる(図2)。

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