第6回:サプライチェーンリスクマネジメントの未来図
今回は「第6回:サプライチェーンリスクマネジメントの未来図」についてご紹介します。
関連ワード (CIO/経営、今こそ考えるサプライチェーンリスクマネジメント等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
前回まで、サプライチェーンリスクマネジメント(SCRM)の重要性が増していること、そしてどのようなリスクを想定し、どのような強靱(きょうじん)化のステップを踏むべきかについてご紹介してきました。本連載の最終回に当たる今回は、今後SCRMが発展していく方向性について解説したいと思います。
日本経済団体連合会は、新型コロナウイルス感染症によって日本の経済社会の脆弱(ぜいじゃく)性があらわになったことを受け、「非常事態に対してレジリエントな経済社会の構築に向けて」と題する提言を発表しました。この提言の中で、多元化・可視化・一体化の3つの取り組みによってサプライチェーンの強靱化を推進することを求めています。
事業の継続のため、材料調達や生産拠点の多元化を推進すべきという内容です。しかし、前回述べた通り、冗長化・複線化というのはサプライチェーンが長年にわたって追求してきた「効率化・コストダウン」と逆行する流れであるため、レジリエンスとコストを最適なバランスで成り立たせるという意識が必要になります。
可視化することは、リスクマネジメントだけではなく、サプライチェーンマネジメント全体の効率化とレジリエンス向上につながります。以下の3つの可視化が含まれるべきだと考えます。
サプライチェーンというものは自社のみで完結せず、常に数多くの企業や組織によって構成されています。その意味で、サプライチェーンを構成するプレイヤーが一元化して(=連携して)取り組むことが、サプライチェーンの強靭化に本質的に重要なことだと考えられます。いくら個社だけで厳重な対策を打ったとしても、川上・川下に大きなほころびがあれば、サプライチェーン全体が破綻します。例えば、石油販売の企業グループでは、製油所からガソリンスタンドまでの系列内各社で連携し、事業継続計画(BCP)を策定しているケースもあります。その他にも、荷主と物流業者の連携、同業他社同士で発災時に助け合う連携、行政機関や地域との連携も考えるべきでしょう。
この提言での指摘通り、「多元化・可視化・一元化」が今後SCRMを進化させていくべき方向性だと言えるでしょう。そして、それを後押しするようなテクノロジーの進化が起きています。
モノのインターネット(IoT)という言葉が出てくる前は、インターネットはコンピューター同士を接続するためのものでした。しかし現在では、スマートフォンやタブレットといった情報端末だけではなく、テレビや白物家電、デジタル情報家電などもインターネットにつながるのが当たり前のようになってきています。IoT機器が小さく、コストも安くなることで、今後さまざまな応用が社会にどんどん広がっていくでしょう。
例を挙げれば、信号機がインターネットにつながることで、信号機に設置したカメラやセンサーで自動車や人間の動きを感知し、信号の変わるタイミングを最適化・計算する、「スマート信号」の導入が構想されています。スマートポールの実証実験も多く行われていますし、従来の監視カメラも、AIを搭載することでスマートなものに進化しつつあります。また、1枚ずつしか読み取ることのできない従来のバーコードに変わり、1度に多くのタグをスキャンできるRFIDも実装が進みつつあり、セルフレジなどでお馴染みになっています。これが物流の現場に本格的に普及することになれば、在庫の場所・数量などはリアルタイムに確認できるようになるでしょう。