レッドハットが事業戦略を発表–OpenShiftやAnsibleに注力
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レッドハットは4月25日、2023年度の事業戦略を発表した。「Red Hat OpenShift」や「Red Hat Ansible」を「Red Hat Enterprise Linux」(RHEL)に並ぶ中核ビジネスに位置付け、中長期施策ではエッジコンピューティング領域におけるオムロンなどとの協業を推進する。
この日に都内で開催した事業戦略発表会で代表取締役社長の岡玄樹氏は、まず2022年度の事業を振り返り、グローバルでは全ての四半期が2桁成長(15~21%増)と報告した。RHELのサブスクリプション型での提供やOpenShift、Ansibleのビジネスが好調に推移し、特にOpenShiftとAnsibleはここ数年60~70%の急伸ぶりだという。
また、同年7月に最高経営責任者(CEO)がPaul Cormier氏からMatt Hicks氏に交代(Cormier氏は会長職)し、岡氏はCormier氏が掲げた「オープンハイブリッド」の方針に変わりがないものの、Hicks氏の体制ではマネージサービスなどのクラウドビジネスをさらに推進する方向性になると説明した。同氏によると、各種統計でオンプレミス環境からクラウドに移行した企業のIT資産は25%に満たず、ハイブリッドクラウド市場は年率25%で拡大するとのこと。このため今後の事業戦略では、マルチクラウドへの移行対応が大きな商機になると説明した。
2023年度の事業戦略は、上述の経緯からRHELにOpenShiftとAnsibleを加えた3本柱で中核ビジネスを展開する。RHELについては、2月にOracleとの協業で「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)におけるRHELの実行を可能にする「Red Hat Enterprise Linux on OCI」が新たに提供されるなど、引き続き稼働環境の選択肢の広さを訴求していく。
OpenShiftは、提供開始から7年強が経ち、2022年の経常収益(ARR)が10億ドルを突破した。岡氏は、各種Kubernetesディストリビューションの中で同社が最長となる24カ月のサポートが顧客の支持を獲得していること、また、Amazon Web Services(AWS)環境でレッドハットがOpenShiftをマネージドサービスで提供する「Red Hat OpenShift for AWS」(ROSA)が注目を集めていると説明した。
説明会では、ROSAを導入した三菱UFJインフォメーションテクノロジーの千野修平氏も登壇。同氏は、ROSAがメガバンクの求めるセキュリティレベルを満たすようになったことから、三菱UFJ銀行におけるコンテナーアプリケーションの開発や展開で重要な役割を果たしているとした。ROSAの活用によってシステム基盤の運用負荷が軽減され、アプリケーション開発を促進するための環境づくりに注力できるようになったと導入効果を紹介した。
AWSを含むOpenShiftのマネージドサービスの国内導入は直近に100社を突破したといい、岡氏は、三菱UFJインフォメーションテクノロジーでの導入効果のように、DX推進のためのOpenShiftの活用意義をオンプレミスとクラウドの両面で訴求していくとした。
また、Ansibleについても基盤運用の自動化ソリューションとしての評価を高めているとアピールする。Hewlett Packard Enterprise(HPE)の「GreenLake」をはじめ各種従量課金型サービス経由での提供が伸びているという。2023年後半にAnsibleの大規模アップデートが予定され、ここでは自然言語を使って運用を自動化する生成型AI機能や、データ収集とイベント駆動型の機能などが追加されるとのこと。岡氏は、大規模アップデートによるAnsibleのさらなる運用自動化の効果を訴求していくという。
この他には、日本独自の施策として今夏にアジャイル支援をコンセプトにした新たなユーザーコミュニティーを立ち上げる。岡氏によれば、国内企業ではアジャイルが開発手法としてだけでなく組織やビジネスにも取り入れることへ関心が高いという。同社では、コンサルティングサービスの「Red Hat Innovation Labs」や、富士通との協業、大企業向けアジャイルフレームワーク「Scaled Agile Framework」(SAFe)の普及などに取り組んできたが、2023年度も引き続きこれら施策を展開する。
中長期の重要市場と位置付けるエッジコンピューティングでは、オムロンとの協業を開始した。オムロンは2月に産業制御システム製品にOpenShiftを採用すると発表しており、今回の発表では、オムロンの産業用PC製品で「Red Hat Device Edge」などのソリューションを活用していく方針が明らかにされた。
説明会に登壇したオムロンの夏井敏樹氏は、製造企業のさらなる生産効率の向上ニーズに対応する上で、産業制御システムへのIT技術の導入が重要になるとし、コンテナーアプリケーションとKubernetesの適用について概念実証(PoC)を進めていると述べた。
既に2022年度までのPoCでこれらが機器制御に有効であることが確認されたとし、OpenShiftの採用を決めたという。2023年度は、より実装を意識した取り組みを推進するとし、コンテナーイメージの作成や管理などを行うGUIツールの検討や、工場の規模に応じた拡張性などの検証を進め、リアルタイム制御における活用や、セキュリティを担保する方法についても取り組みを広げていくという。